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ルチア、聖女様御一行を追う

 ガイウスさんはその後「野菜も食べろ」と言って、根菜がたくさん入ったスープを別の屋台で注文してくださり、また「子どもは甘いものが好きだろ」とリンゴのパイまで買ってくださったので、現在わたしの胃ははち切れんばかりです。ガイウスさん、世話焼きさんなんですね。

 何杯目かもわからない黒エールを片手にご満悦なガイウスさんは、宿に帰る気はあまりなさそうです。さすが騎士様、わたしとは身体の鍛え方が違うのですね。


「へえ、ここにも聖女様立ち寄ったのか!」

「そうさあ! 王太子殿下とお並びになると、ホント美男美女って感じでお似合いだったぞ!」

「殿下と一緒に宿にこもられて屋台ここには来なかったがな、オレんとこの揚げ団子を食べてもらえなかったのが残念だ」

「お前んとこはお上品な王子様たちの口に合わねえだろ」

「んだと! おめえんとこのフライだって、声かかんなかっただろうがよ!」


 眠気を覚えているわたしをよそに、ガイウスさんは屋台のおじさまたちと楽しげにお話しています。聖女様たち、ここに寄られたんですね……。


「いつくらいに来たんだ?」

「1週間前くらいだよ」

「そうさ、光栄にもこのテージョは、“聖女様の訪れた街”なんだぜ!」


 あ、もしかしなくても情報収集ですか!? さらりと自然にしていたので、そうとは気づきませんでした。


 1週間というと、セレスさんがアールタッドから1番近い天晶樹が馬で1週間って言ってましたよね。そうなると、今頃最初の天晶樹に到着している頃でしょうか。


「なあアンタ、これ娘さんにどうだい? 見たところ、聖女様と同じくらいだろ? なあお嬢ちゃん、この揚げ団子、どんなもんかい?」

「おう! ルチア、これ食え」


 揚げ団子を売っていたおじさんが、ガイウスさんに揚げ団子が入った包みを渡します。食べろって……結構無理なくらい満腹なんですけど。


「クマには似ない娘さんだな! 奥さんが美人だったんだろ!」

「過去形にすんのやめい。オレの嫁さんは元気に留守宅を守ってるさ。今回は娘とふたり旅ってだけだ」


 屋台のおじさんに話を合わせただけとわかっていましたが、娘扱いされるとちょっと照れますね!

 よし、ここは頑張りどころです! “娘として”頑張ってみせますよ!

 わたしは満杯だと訴えるお腹をなだめながら、手渡された揚げ団子を大きく頬張りました。あ、フライまではいりませんから! お気になさらず!


 ※ ※ ※ ※ ※


 結局、宿に戻ったのは遅くなってからでした。

 朝になって、わたしたちは再び馬上の人となります。


「なんだ? 眠いのか嬢ちゃん」


 早起きには慣れていたわたしですが、慣れない乗馬に夜更かしが加わった末の早起きは、ちょっとつらいものがあります。

 こっそりあくびをしているところを見つかってしまいました。


「よし、抱えててやるから寝てろ!」

「無理です!」


 こんなに揺れる馬の上でなんて寝れませんよ。

 わたしはガイウスさんのムチャぶりを交わして、背中を伸ばしました。


「聖女様たち、1週間前にテージョの街に来たってことは、今頃天晶樹までたどり着いてるでしょうか?」

「いや……どうだろな。実はテージョ付近で護衛隊と侍女連中が返されてるんだ」

「え? だって旅立ってまだ1日ですよ?」

「街道を来ればここまでは4日かかる。オレらが1日で来れたのは裏道を来たからだな」


 なるほど。たしかに途中道なき道を走ったりしましたもんね。草原を横切ったりとか。


「天晶樹まで裏道を飛ばして1週間だが、表の道を休み休み行く本隊は、3週間くらいはかかるんじゃねえか?」

「そんなにゆっくりで平気なんですか?」


 外は魔物も出るっていうのに。わたしは首をかしげました。


「なに考えてんだかなあ? まあ、魔物を避けるために街ごとに泊まってたらしいけどな」


 ガシガシと伸びた髪の毛を掻き回したガイウスさんは、首をぐるりと回しました。


「ま、先方がのんびり進むなら早々に合流できそうだな。ほれ、ちゃんとつかまって口閉じてろ。寝ないなら飛ばすぞ!」


 待ってと声を上げる間もなく、馬はスピードを上げました。

 早く聖女様たちと会いたいです! じゃないと身が持ちませんよ!!

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