表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/178

EX)新婚さん、懐かしい顔に喜ぶ

 アナクレリオさんに先導されて、わたしたちはエドアルド陛下より下賜されたお家へ向かいます。


「こちらです」


 お家の前に到着したわたしは、あまりの様子に言葉を失いました。

 だって! だってですよ! お家が……大きすぎます! そしてあの人数はなんですか!

 門から入口へと続く道にずらりと並ぶ人影に、くらりと眩暈がします。皆さん同じデザインの制服を着ていらっしゃるということは……このお家、もといお屋敷で働く方、なんでしょうか。


「せっ、セレス……これって、わたし、夢見てますよね?」

「うん……気持ちはわかるけど、ルチア、現実だから」


 傍らのセレスさんに縋りつくと、宥めるように頭を撫でられました。

 でも、正直落ち着けません! たしかに領地ブランカを任されたので、案内されるのは普通のお家だとは思っていませんでした。執事さんアナクレリオさんもいらっしゃるくらいですし、それなりのお家なのかと。

 ですが、ここまで大きいとか、想像もしてませんでした! お掃除行き届けるでしょうか!


 パニックになっていたわたしでしたが、セレスさんに連れられて歩き始めます。わたしたちが近づくと、制服姿の皆さんがすっと同じ角度で頭を下げて行きます。どういうこと! そんなに偉くないですよ、わたし! 頭を上げてください!


 頭の中がぐるぐるしたまま歩いていると、小さく「おかえり」という声が聞こえました。耳に馴染んだその声に、わたしは弾かれるように近くを探します。だって、だってその声は──


「キッカさん! なんで!?」


 驚きの声を上げるわたしに、見慣れた砂色の頭がゆっくりと上がります。

 そこにいたのは、笑顔のキッカさんでした。


「エドアルド陛下に頼まれたから、かねぇ」


 キッカさんは、驚くわたしを見て、いつもの明るい笑顔を深くします。わたしが嬉しくなって抱き着くと、ぎゅっと抱き返されました。


「バドエル夫妻と私は、陛下のご指示でこちらに参ったのですよ」

「先に言っておかなくてごめんね、ルチア。陛下から、自分のわがままで見知らぬ土地で苦労をさせてしまうから、側で力になってやってほしいと頼まれたんだ。だから、アナクレリオさんや、うちの人と一緒にブランカにやってきたんだよ」


 キッカさんとアナクレリオさんはいたずらっぽい視線を交わすと、彼らがここにやってきた理由を教えてくれました。エドアルド陛下が、慣れない地でのわたしたちを思いやって、見知った人たちを遣わしてくれたのだと知ったわたしは、胸がいっぱいになってしまって言葉が出てきません。


「だって……キッカさん、お仕事は?」

「ロッセラに引き継いできたよ。うちは子どももいないし、旦那もお城で働いてるしで、こっちにくるには都合がよかったんだよ。あたしはね、ルチア。あんたが幸せになるのが見たいのさ。劇の中でなく、現実のあんたがね」


 ぽんぽん、と頭を優しく撫でられます。それを合図とするように、キッカさんはわたしをセレスさんの方へ戻すと、いつもの快活な声でこう言いました。


「さあ、この屋敷の人は皆あんたたち二人を待ってるんだ。中へ入って、改めて自己紹介と行こうじゃないか!」

次は多分マリア編です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ