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ルチア、今後の予定を立てる

 皆さんが陛下にお会いしている間探してもらったのですが、やはりわたしに合うサイズの服は見当たらないとのことでした。王宮侍女の服も採寸が必要で、特に採寸なくあるものでやりくりしているのは下働きのものだけ。それなら愛着のあるこの制服でお願いしたいと申し入れると、殿下は本当に申し訳ないと頭を下げられました。そんな、謝らなくてもいいのに。


「ねぇ、これからのスケジュールってどうなるの? すぐにアカデミアに戻っていいわけ?」


 順番待ちをしていると、エリクくんが殿下にこれからのことについて尋ねました。今後のスケジュールは皆さん気になることだったので、現在謁見中のレナートさんを除いた全員が真剣に殿下に向き直ります。


「凱旋パーティは一週間後だそうだ」

「ちょっと待ってよ。ルチアの服はどうなるよ!? 一週間で出来上がるの!?」

「王宮お抱えの仕立て屋に突貫で作らせる。マリアのものはすでに出来上がっていて、あとはサイズ合わせと微調整だそうだ」

「あたしはたくさん作ってもらったからいいわよ。それをルチアに流用……でき、るかぁ~?」


 殿下に言い募ろうとしたマリアさんは、語尾を困ったように上げて自分とわたしとを見比べました。マリアさんの細さで作ったドレスでは、どんなに締め上げてもわたしのウエストは入りませんよ、絶対に。これは自信を持って言えます。骨格からして無理です。


「それは聖女様に似合うように仕立てたものだし、ルチアさんはルチアさんに似合うように仕立てた方がいいと思う。ルチアさん、好みの色やデザインはあるのかい? 先程王宮の仕立て屋を手配したから、陛下にお会いした後、採寸とデザインの話を詰めればいい」

「フェルナンドの言う通りだ。ああ、ついでに花嫁衣装も作らせよう。というか、セレスティーノ、君まだルチアにちゃんとした腕輪を贈ってないのか?」


 団長様の言葉に、いいことを思いついたと言わんばかりに殿下がポンと手を打ちました。


「いいいいえ! 滅相もないです! そんな、花嫁衣裳って……!」

「なんでよ? せっかくだし作ってもらえばいいじゃない」

「そうだよ、なんの問題があるんだい?」


 首を振るわたしに、マリアさんと殿下が同時に不思議そうな顔をしました。息ぴったりですね、お二人とも……。


「あたし、ルチアの結婚式が終わるまで帰らないわよ? さぁ、さっさとウェディングドレス作っちゃいなさいよ! とびきり可愛いやつ!」

「あの、マリアさん?」

「マリアの言う通り作ればいい。代金は僕が持つ。結婚祝いとでも思ってくれていい」

「失礼ですが、殿下。花嫁衣装は俺が……」

「セレスティーノは腕輪に集中すればいいだろう。僕にも楽しませろ」

「殿下、本音がダダ漏れです」

「団長ドノは完全に王太子ドノのオカンだな! よっ、苦労人!」

「クマはもっと苦労すればいいと思う」


 勢い込むマリアさんに殿下が乗っかり、困ったセレスさんをあしらう殿下に団長様が頭を抱え、そんな団長様へ野次を送るガイウスさんにエリクくんが冷たいまなざしを向けます。

 本来ならお目通りすることもかなわなかっただろう人たちの楽しげな様子を目にして、わたしは嬉しくなりました。平凡非凡とライン引きをするのが馬鹿らしくなります。わたしたちは同じ人間で、旅の仲間だと、そう信じられます。たとえばわたしが少しくらいワガママを言ったとしても、この人たちなら笑って受け入れてくれる。手放しでそう信じられる相手がたくさんできるというのは、本当に幸せなことでした。

 この旅の終わりに、わたしはシロと“シャボン”の能力を失いました。けれど、残されたものもちゃんとあるんです。今後、今までの日常が帰ってきて、たとえ会うことがかなわなくなったとしても、ちゃんとこの手に残る想いがある。

 わたしは楽しげに笑う仲間を見て、ただただ幸福を噛みしめていました。


「ルチア」

「はい、なんでしょう?」

「謁見が終わったら、街に腕輪を見に行こう。前に言ったように俺、次いつ自由時間がもらえるかわからないし、できれば今日中に下見したい」


 皆さんの姿を見ながら幸せに浸っていると、セレスさんが真剣な面持ちでそんなことを言い出しました。殿下に影響されたんでしょうか。


「アンタが女連れで街に行ったら大騒ぎだろ」

「そうだよ。隊長さんは自分のことを知らなさすぎ!」

「それなら細工屋を呼べばいい。フェルナンド」

「わかりました」


 今後の予定を話し始めたわたしたちに、皆さんが口々に突っ込みました。ええ、ガイウスさんの言う通り、セレスさんとわたしが連れ立って行ったら大騒ぎですよ……。

 多少揉めましたが、殿下の申し出を有り難く受けることにしたわたしたちは、セレスさんの自由が利く間に色々なことを決めてしまうことにしました。

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