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霜の国《ニヴルへイム》①

最近、ここ刹螺市(せつらし)では夏だというのに-二十度を超える寒さが続き、ニュースで大騒ぎとなっていた。


都会とも田舎とも云い難いこの中途半端な街には、相も変わらず、そんな異常現象ばかり起こる。


この前では十五時間ほど雷が刹螺市にて落ち続け、家電製品のショート及びブレイカーの欠陥、殆どの家庭が金を払い、

電気製品店が儲かったという他人の不幸で飯が美味いと邪悪的思考回路が働く事が起きた。


余談だが、暴力団が買い取ったビルの三階に事務所として間借りしていた俺は、また何かの事件に巻き込まれたのか、


と強面のお兄さんにその日の内に押しよられ、別次元でモテた為、大変に困ったものだ、いや本当にいろんな意味で。


兎にも角にも、その様な事が起きるので、果たしてこの寒い事件にも、何らかの人為的処置が施されているのだと思う。


出来るのならばこれは自然現象でありますように、いや本当に、切に願う、切実に願う。



そんな事を思いながら、最近思い切った買った新型のエアコンの暖房を二十六度に上げ、凍えるような景色を、熱いコーヒーで暖めていると、

不意に事務所の外から靴音が聞こえ、それが小さい少女の足音だと知った瞬間、俺は末期だと悟った。



「七刻先生、事件です、巷でマイナス二十度を超えました」



それはまさに一息の安楽の最中に光臨した悪魔、いや天使、いや間を取った魔王が現れたために、不思議ながら自らの思考回路が暴走し、正直な感想を脳内で思った。



「あぁ、どうやら人為的な事件ですねって云えるか阿呆」



どうやら俺の思考回路は俺が思っている以上に複雑だった。


考えていた事が加工、及びモザイクをいれずに提供された生声ラジオに、那岐白炉(10歳小学四年生)がリスナーとして視聴していたらしい。


あまりにも横暴なラジオキャストに腹を立てたのか頬を膨らまして擬音語で『プンプン』と怒っているのが聞こえる、心なしか本当に怒っているみたいだ。



「あら先生、そんな事云われると、私は泣いちゃうわ?下の階のお兄さん達になんとかしてもらいましょうか」



怒ってますねすいません。


さて、ここで紹介するのが那岐(なぎ)白炉(はくろ)小学四年生10歳、ロリータキャラとして思われがちだが、

ロリコンである人間は那岐を性的対象として見れない、とは云うのも、ロリコンが性的興奮を覚えるのはどうやら12歳から15歳までであり、那岐の様な幼児体系を愛せる人間の事をアリスコンプレックス、

略してアリコン、もしくはペドフィリアとも呼べる。


アリスコンプレックス、長いのでアリコンと呼ばしてい頂くが、

アリコンが性的対象となるのは12歳から7歳まで、つまる所那岐を見て股間が熱くなる大人のお友達はアリコンです、

良かったですねロリコンでは無いですよ。



「あぁ、それは困るな那岐さん、あのお兄さんたちはどうも苦手でな、許してくれないだろうか?」



そう口に出しつつ机の上に置いてあるポッドに湯を入れる、無論、先程インスタントココアの元を入れておいたので自然とコップから浮きでる湯気の匂いは甘味となる。


それを那岐に渡し、駆けつけ一杯と最近見たテレビの言葉を借りて云ってみた、くすりと笑う白炉も、どうやらそのテレビを見ていたようだ。


「はい、許します、私、七刻さんの腰の低さ、愛していますよ?」



そこは大好き、基嫌いじゃないですよ、と云うべき所でないのだろうか?


もし三階下の階にてそんな言葉が聞こえたのならば、廊下越しでさえ怖いお兄さんが殺到するだろう。


さて、話を戻して幼児体系黒髪端麗美少女(自称(十人のアリコンが十人全て振り返るほど))那岐白炉ちゃんではあるが、大人のお友達以外に怖いお友達も居る事で有名である。


彼女、那岐白炉は所謂暴力団の娘で顔は母親似、性格は父親から引き継がれた最新代のハイブリッド系言葉の暴力お嬢様で、

キライな人間は徹底的に地に堕とす所か地獄までの特急便に乗車させ阿鼻叫喚を実現させる少女だったりする、逆に好きな人間には徹底的に一途で、

好かれるまで好きまくると言う圧倒的求愛を押し付ける、もし那岐が美少女でなければこんな横暴は許されてはいないだろう。


そんな那岐さまが我が事務所に訪れる理由は唯一つ、先程言っていた俺に対しての、"先生"という言葉だ。


俺こと七刻誠一、七回刻め誠の一を、と決め台詞に使えそうな奴だと認識してくれ。


さてさて、"先生"でお馴染みの七刻誠一さんではありますが、何故那岐にそういわれているのか。


それはどうしようも無いほどの長い話、それ故にいくらか略称させて頂こう。


三十文字以内、三行で言わせて貰うと


()()()()()()()()()()


(十一)(十二)(十三)(十四)(十五)(十六)(十七)(十八)(十九)(二十)


(二十一)(二十二)(二十三)(二十四)(二十五)(二十六)(二十七)(二十八)(二十九)(三十)


となっている。


詳しい話は対して面白くなさそうなので省略させてもらうが、早い話、命を救われた、と言えばいい。


その時初めて出会った那岐は、俺の職業柄で"教える立場"にある為に、敢えて那岐は"先生"と呼ぶのだ。


ああ見えて、リアリストでありながら夢見る乙女、その為に俺という不思議成分が堪らなく好きなのだとか。


まあ、俺の職業と言うのも自称であり、今ではそれを自傷としてしかならない黒歴史だ。


俺の職業は"神理学者"、一応は造語として扱われ、基心理学者を捩った名前。


それは男としての一種の浪漫であり中二病患者の延長戦でもあった。


"神理学"とは"神の理を学ぶ"と言うもので、神様の考えていること、この世の奇怪な現象を解明する仕事である。


実際神様関係無しに妖怪や怪異現象、怪物魔術錬金術と精通しているのだが、それらを総合的に呼ぶ言葉が"神理学"である。


そんなインチキ臭いかつ異様な名目である自称"神理学者"が世界に不必要化と言われれば、その答えは否である。



「那岐さん、そう云えばその薄着でこの事務所にやって来たのかい?」



刹螺市を包み込むこの壮大な寒さ、那岐の様な夏真っ盛りの黒を主張したワンピースでは外に出た瞬間冬眠に陥るであろう、

春になれば実に可愛らしい寝顔であの世に行っているのかと思うと、心が痛くてそんな事を考えていた自分を火あぶりの刑にしてやりたいと思う。


那岐は実に小悪魔的な笑みを浮かべ、スカートの端を指で摘みヒラヒラと舞わせる。



「はい、先生の家に行くとお父様に言った所、車を手配してくれました、ついでにお父様から一言『娘を霜焼けにしてみろ、火あぶりの刑にしてやる』との事です」



やったね、火あぶりが実現するよ!!


と若干青褪め、エアコンの設定が二十六度のせいか冷や汗が滴ってくる。


夏なのに暖房とはこれいかに、しかしまあ前の雷光事件のお陰で新しく買い換えたエアコンの性能は百点満点中の二百点満点であった。


買い換える際に、那岐から二万円ほどの借金をしてしまったが、一日中遊園地のデートで手を打たせて貰い、何だかんだで良き思い出である。



「っと、そう云えば、何の用で事務所に来たんですかね、那岐さん?」



「さん付け、はやめて下さい、私は七刻先生を先生と呼び、敬語を使います、なので先生は年相応に、私を呼び捨てにしてください」



とは云ったものの、一応は貸しのある人間、それを呼び捨てにするのは忍びない。


とかそういう感情など無く、ただ単純に暴力団の娘とか恐ろしくて呼び捨てなど出来はしないのだ。



「じゃあ百歩譲ろう、「さん」付けはしない、ので、これからは那岐くん、と呼ばせてもらおう」



「千歩譲ってください、「くん」じゃ嫌です、呼び捨てで呼んでください」



まったくもって我がままお嬢様である。


しかも父親の性格は父親譲り、頑などころか金剛よりも硬い決意で呼び捨てをしろと言ってきている。


こうなってしまえば、卵の殻の如く脆い俺の意志は金剛に粉微塵にされてしまうだろう。


ならば、と明晰明快な俺の脳は新たな可能性を導き出す。


決意固い金剛ならば、決意割り切る混合にしてしまえばいいのだ。



「ならこうしよう、俺はお前の事を白炉さんと呼ばせてもらおう、どうだ?距離が短くなった気がしないか?」



結歌は少しばかり考え事をするかの様に眉を潜め、口元に手を添える。


唾を飲む間よりも早く、結歌はふふと笑って、自分の指を唇に当てる。



「いいですよ、先生、最終目標は白炉って呼んで欲しいのですが、泣く泣く我慢致します」



そうは云いながら、何やら頬を赤く染めて笑顔の白炉、それを見て俺もつられて口元を緩める。



「あ、そういえば」



と、白炉は持ってきたトランクから、ノートパソコンを取り出すと、去年買ったばかりのガラス張りのテーブルの上に置いた。



「ついでにお父様から一つ、『仕事』を依頼する、だそうです」



と、動画ファイルをクリックして、映像が流れ出す。



「お仕事の内容は、今から写る人物を、那岐商業ビルにまで連れてこさせる事、だそうです」



これから進む未来は、-20度の極寒を人為的現象として作り上げた犯人を見つける話である。




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