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林檎の木の下で  作者: 瑠樺
八章
203/208

番外編 言葉よりもなによりも ~side Reverie~

青い鳥は鳥籠の中に【10】後の話になります。

 朝食を作っていたレヴェリーに、ブランジェリーから戻ってきたルイスはフライパンを眺めて言う。


「スクランブルエッグ?」

「オムレット」

「酷すぎる」

「文句言うならお前が作れよ」

「オレはパンを買ってきたから。明日は交代しても良いよ」


 クロエは足を怪我しているので暫く家事は男たちですることになった。

 エルフェは早朝から店の準備がある為、朝食は自然とレヴェリーが担当することになる。

 挽き肉と卵のオムレツは生クリームも入れた本格的なものだ。そう、気持ちの上では気合いを入れて作った。これは思いに技術が追い付かなかったというだけのことだ。


「……クロエ、大丈夫そう?」

「まさか」


 今回のことに関してレヴェリーは復讐者たちに同情はしない。

 クロエは抵抗の力を持たない一般人だ。襲ったのもルイスと別れた後だという。銃を持っている男が消えて、女二人になったところを連れ去った最低の奴らだ。

 女を殴るなど論外だし、そもそも無関係の人間まで巻き込んでいる時点で誰が擁護するのだろう。

 レヴェリーはクロエの母親にも思うものがあったが、復讐者たちのことが許せない。

 ルイスはバゲットをナイフで分けていく。レヴェリーはオムレツの皿をテーブルに運ぶ。


「綺麗にできたオムレツはクロエさんに」

「エルフェさんじゃねぇの?」

「あの人は、いつも上手くできたものをオレたちの皿によそっているよ」


 思い返せばパンケーキもハンバーグもいつも大きくて綺麗な形をしていた。

 施設にいた頃の癖だろうがクロエは火が通っているか確認する為に半分に切ったりして不格好になったものを食べていた。

 早起きして焼きたてのパンを買いに行くのもそうだ。前日に買ったものを出して良いところを、クロエが善意でやってくれていることだ。

 気がつかないと感謝もできない。

 ただレヴェリーはルイスの言わんとすることは理解しても別のところが気になったりする。


「こういう時に特別扱いっぽいのも気にするタイプじゃね? クロエを腫れ物扱いすんなっていつもルイが言ってることじゃん」

「じゃあ全員オムレツのスクランブルエッグ添えで」

「頭悪そうなメニュー」

「レヴィが三人分失敗するのが悪いんだろ」

「明日どんなメシが出てくるか楽しみだわ」


 失敗したらからかってやろうと決める。

 朝食はオムレツのスクランブル添えにバゲットとフルーツボール。飲み物はミルク、オレンジジュース、インスタントコーヒーからお好みで。


「卵料理二つも作ったの? レヴィくん凄い」

「まあなー」


 クロエは素直に喜んでいるから失敗しただけとはレヴェリーとルイスは言わない。エルフェも触れない。


「ルイスくんも並ぶの大変だったでしょ?」

「一番目に行った。問題ないよ」


 朝が苦手なのにパンを買いに行って凄いなどとクロエは年上目線で褒める。ルイスは何とも言えない顔をしている。

 同じ家で暮らしているせいで弱い部分まで知られてしまっているルイスを気の毒に思うが、そもそもクロエに弟扱いしかされていないレヴェリーには庇う筋合いもない。


「明日オレとルイの当番交代なんだ」

「そうなの? 私、クロワッサン食べたいな」

「オレはショコラティーヌだなぁ。ルイ、クロワッサンに合うメシ作れよ」

「チーズとジャムで良いと思うけど……」

「代わるって言ったのお前だからな」


 クロエが空元気で立っているというのは分かる。嵐の中から拾い上げられてその恐怖をすぐに忘れられるはずもない。雨も雷も去った訳ではないのだ。

 レヴェリーは気の利いた言葉なんて掛けられない。せめて自分は家族として普段通りに振る舞おうと考える。

 因みに次の日の朝食はまともなものが出てきた。シューリスらしい甘い朝ご飯にクロエは感激していた。

 またしても弟の引き立て役かとレヴェリーは歯噛みするが、これもいつものことだ。

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