番外編 籠鳥は握り潰してこそ可憐 ~side Faust~ 【4】
上級使用人には食事時間とは別に外出可能な自由時間がある。
昼は正午から一時まで、そして夜は二十一時から二十三時までがそれに当たる。
ファウストの主たる少年は昼前には習い事へ通いに出掛けてしまうので、朝食の給仕の終わる十時からアフタヌーンティーの給仕をする十七時までは暇を持て余すことになる。だが不良少年の彼が時間通りに帰ってくるはずもなく、夕食の給仕をする二十時までが自由時間のようなものだった。
十時間に及ぶ時間を主のいない屋敷内で潰すのは難しく、従者生活を送る七年間の内に政府の機関で医者のような仕事をするようになっていた。
政府寄りのヴァレンタイン侯爵は、教会寄りのレイヴンズクロフトに生まれたファウストが政府に組することに驚きこそしたが、特に咎められるようなことはなかった。
「只今紅茶をお淹れ致しました。本日はオレンジ風味の紅茶のカプチーノです」
今日のナイトティーは濃い目に淹れた紅茶にスチームドミルクと、擦り下ろしたオレンジの皮を掛けたものだ。
流石に蜂蜜やミルクがたっぷりの甘い紅茶とは言わなくなったが、七年が経っても就寝前の時間に紅茶を飲む習慣は残っていた。
猫舌でも飲めるよう適温に淹れられた紅茶。ルイスは湯気と共に立ち上る香りを楽しみ一口飲むと、ソーサーにカップを戻す。それから改めてカップに目を向けた。
「【ロセッティーナ】のロイヤルブルーですね」
波立つソーサーに渦巻くハンドル。流れるようなフォルムの繊細な白磁に描かれた繊細な花が美しい茶器。
高級食器収集に並々ならぬ熱のある弟に薦められて揃えた食器を、ルイスは珍しく気に入った様子だ。
「お気に召しましたか?」
「この前の派手なのよりは良いです」
「スイートストロベリーですか。あれは最近の一番人気なんですよ」
「そうなんだ」
「流行りものが分からないなんていけませんねえ。しっかり勉強なさって下さい」
「芸術とかいうのは人の主観で感じ方も違うし、苦手なんですけど……」
「優れた紳士に求めれるのは知性と優雅さです。芸術感覚はさておき、知識として学ぶに越したことはありません。大体、貴方は社交性が皆無なのだから、せめてそちらで補わなくては!」
「具体的にいうと、どんな感じに振る舞えば良いんですか?」
「賢く、華麗に、女性に優しくです。どんな時も余裕を持って行動するのです」
「はあ……、そうですか」
従者の癖に嫌味なほどに空気を読まないファウストにきっぱりと言い切られ、ルイスは生返事をする。
側仕えの礼儀正しさは大事だ。その良し悪しが主の裁量を映す鏡となる。故に使用人たるファウストは、主人であるルイスに対して必要以上の口を利いてはならない。
だが護身術の教師を務めたこともあり、ルイスはファウストを使用人ではなく、貴族出身の家庭教師として見ている。
七年間毎日のように関わってきたのだから、こうした軽口を交えた会話をすることも珍しくはなかった。
「ジルベール先生はローゼンハインという人を知っていますか?」
説教が終わったところでカップを置いたルイスは、ファウストに訊ねた。
「ローゼンハイン? 貴族名鑑にはない名前ですね」
「そうですか……」
何故その名前が出てくるのだろう。ヴィンセントが妙なちょっかいを掛けたのだろうか。
ファウストはレヴェリーの様子を見に、月に一度【クレベル】にあるエルフェの店に行っているのだが、そこでヴィンセントと鉢合わせることは少ない。
互いに嫌っているのだから、互いに避けている。結果、ファウストが訪ねる第二土曜日はヴィンセントは家を空けるようになった。実に良いことだ。
そうして接触を避けている存在の名が主の口から出たのだ。不快に――いや、不安に思わない訳がない。
ルイスにとってヴィンセントは尊厳を汚した相手だ。
既に過去とはいえ、ルイスは自らの手で殺めた子爵夫人のことを引き摺っている。そんな彼をヴィンセントと関わらせる訳にはいかなかった。
ファウストは不自然にならないように話を変える。
「それはそうと、社交場の雰囲気には慣れましたか?」
「まあ、それなりには」
「本当ですか? 私はルイス殿が壁の花と囁かれていないか心配でなりません」
ルイスが社交界に出るようになって二度目の社交シーズンが訪れたが、ファウストは心配でならない。ヴィンセントのように過去についてを掘り返してくる輩がいないとは限らないからだ。
「壁際ではなくバルコニーにいるから大丈夫です。それに花というのは女性に使われる形容です」
「いやいや、そういう問題じゃないでしょう。貴方は何をしに夜会に出ているんです? 社交してます?」
返されたのは言葉ではなく、恵まれた容貌を存分に駆使した愛想笑い。
まだ肩幅も背も紳士に至らない彼が浮かべる笑みは、話をはぐらかす時のアデルバートにそっくりだった。
(血は繋がっていない癖に変なところばかり似るのですね……)
実のところ、ルイスとアデルバートがどのような親子だったのかをファウストは知らない。一度しか会ったことがなかったのだから当然だ。
だが、こうして言動に友の面影を見付けると、間違いなく彼等の子供だと感じる。
封じていたはずの罪悪感がじわりと込み上げてくる。エレンに釘を刺された時のように震えそうになる。
この胸の内にある【矛盾】を彼等は見透かしていた。
彼等に良く似た子供はいずれそれに気付くだろうか。この自分が【破綻者】なのだと。
(……いけない、ですね)
貴族にしろ使用人にしろ司祭にしろ、本心を隠すのが美徳だ。
ファウストは本心を包み隠したまま続ける。
「今度の夜会の衣装は派手なお召し物になさいませんか? ああ、そうです、折角紫の君というお名前があるんですから、頭から爪先まで紫で揃えましょう。アクセントに金の耳飾りでも着ければ高貴さも出るかもしれません」
「オレとこの家に恥をかかせたいんですか、先生」
「伝統と格式を尊ぶドレヴェスのドレスはデザインが面白味に欠けています。シューリスらしく斬新にいってみましょう」
「目立つのは良くないですよ」
「古臭く堅苦しいのが好きなのですか?」
「そうではなく……、オレはこの家の為にも目立ってはいけないんです」
ルイスはまるで血でも吐き出すように言い、震える息を吐いた。
クラインシュミットの遺児であるルイスは、二十歳を迎えたら遺産を相続することになる。あんなことのあった邸宅を取り壊さずに残してあるのも、邸宅自体が財産だからだ。
相続するその額は俗な言い方をすれば一生遊んで暮らせるだけの金だ。
故にヴァレンタインがルイスを引き取ったのはクラインシュミットの財産目当てだと言う者がいる。
ヴァレンタインには跡継ぎになる男子がいないが、娘に婿を取らせれば良いだけだ。外の血を入れてまでもクラインシュミットの子供を引き取ったのは、いずれ彼が相続する遺産が目的だからだと邪推されている。
社交界での噂話の多くは羨望ではなく、失笑だ。【ロートレック】の新区画を統べるヴァレンタイン侯爵家は、それ故に敵も多かった。
「ご気分が優れないようでしたら、テーシェルに赴かれてはどうですか? 夏の湖畔は涼やかです。湖から吹き上げる風に檸檬の花が戦ぎ、町中が爽やかな空気に包まれる。考えるだけで心地良さそうですね」
心ない噂話に疲れてしまったのなら休んではどうだろう。
ファウストは休息を取ることを促す。しかし、ルイスは首を横に振った。
「逃げたって何も変わりませんよ。大体この時期に下がるなんて非常識です」
「嫁探しをする気がないなら、地方に行って休んで頂いた方が良いんですけどねえ……」
「先生まで義母のようなことを言わないで下さい」
はあ、とルイスは溜め息をつく。
同じように息を吐きたくなるのを堪えつつ、ファウストは言葉を待った。
「……先生は今年で幾つですか?」
「三十です」
「結婚は? 婚約者は?」
実際の年齢を言えるはずもなく、偽りの身分としての年齢を答える。
すると間髪入れずに次の質問が投げ掛けられる。だが、恐らくルイスが知りたがっているのは素性ではない。そう察したファウストは彼の望む答えを告げる。
「していませんし、おりません……と言いますか、使用人は基本的に結婚してはいけないのですよ」
「そうなんですか?」
「伴侶ができたら尽くす相手が二人になってしまいますし、私たちは住み込みの仕事ですしね」
「済みません……。オレの所為で先生は行き遅れに……」
「行き遅れってねえ……」
本当に申し訳なさそう言っているところが余計に心を抉る。
自分自身のことを含め、人や物に頓着しないルイスだ。このままでは暇を出されかねないとファウストは危ぶみ、釘を刺すことにした。
「私は貴方様にお仕えする下僕として一生を捧げる所存です」
ファウストは背筋を伸ばして膝を着き、ルイスの前に頭を垂れた。
冬の空のように澱みない紫の瞳が向けられる。視線を合わさずともその鋭さを感じる。
臆面も遠慮もない冷たい眼差しは、かつてアデルバートから向けられたものと良く似ている。世の中の何も信用していない凍て付いた目だ。
「オレなんかに仕えても何の得にもならないと思う。貴方は自分の人生を生きた方が良い」
「そのようにご自身に無頓着な貴方だからこそ、この私が身命を賭してお仕えせねばという気持ちが沸き起こってくるのです、ご主人様」
「……ああ、そう」
「貴方に去れと命じられることのない限り、我が身命の全てを捧げます」
心の底からどうでも良いというように聞き流したルイスは視線を外し、窓の外の景色を眺めた。
こうなるともう何を言っても無駄だ。
そう理解するほどの年月を重ねてきた。だが、ルイスはファウストを信用していない。かつてエレンが望んだようにルイスは逃げない。己を含めて何も信用せず、価値も持っていない。
レヴェリーは守る人がいればこそ強くなれる人間だが、ルイスは一人だからこそ強く在れる人間だ。
なるべくそれを尊重しながら、七年掛けて傷を縫い合わせる努力をしてきた。レヴェリーは孤児であることを窺わせない素直な子供に育ったし、ルイスも利口な子供に育った。
傷の縫合は上手くいったと思っていた。
それが全くの検討違いだと知ったのは、それからすぐのことだった。
「神が人を裁かず人が人を裁くというなら、オレにも権利はあるんですよね……」
表面上は穏やかだった。内面は毒に染まるように激しく壊れていった。
十代半ばという多感な時期に過去の傷を掻き回されて、可笑しくならないはずもなかった。
「人の殺し方を教えて下さい」
人を殺す為の力が欲しいのだと乞われた時、ファウストは嘆く一方で安堵した。
これは、待ちわびた【復讐】の時だと。
刃物に銃器、毒に拷問、自分の知る限りの人殺しの術を与えた。
外では彼の心の傷を抉るような言葉を掛けて追い詰め、家ではどっぷりと労りの言葉を掛ける。
自分も大概悪趣味だなとうんざりしながらもファウストは教官としては鬼の姿勢を貫き、従者としては理解者の姿勢を貫いた。
次第にルイスは酷い顔をするようになった。
心を完全に凍り付かせ、人形としての自身を完成させていたのなら彼は苦悩なく生きられただろう。だが、彼は中途半端に甘かった。
アデルバートとエレンに愛情深く育てられたからだろうか。他人の痛みに敏感だったのだ。
その【甘さ】が奇妙な縁を呼んでしまう。
よりにもよってだ。よりによって、どうしてディアナの娘と友人なのだろう。
人間と外法の混血。延命処置の負荷で決して長くは生きられない憐れな少女。彼女は彼にとって敵だ。
(よりにもよって……。友人は選べと言われているのを忘れたのですかね)
自分が売られた金で救われた相手を前にどのような顔をするのだろう。
赤の他人としてなら見てみたかったが、知人としてはできることなら見たくはなかった。しかし、悪趣味さにかけて他の追随を許さないヴィンセントは、ファウストの興味を見事に叶えた。
クロエを救おうと連れ出したルイスに――本人は人質だと言うが――ヴィンセントは真相を打ち明けた。
それは嘘と真実が入り交じった【真相】だ。
自分が虐待を受けたのはクロエと、何よりヴィンセントを生かす為だったこと。両親の敵がもういないのだという明らかな嘘を吐かれ、けれどレヴェリーがいる手前その嘘に従わなければならないこと。その【真相】に、心よりも先に身体が悲鳴を上げた。
「無理すると発作が起きると言っているでしょう。風邪を引いている時が一番危ないと何度言わせれば分かって頂けるのでしょうね」
「……済みません……」
気管支喘息の発作は心身のストレスによって起きる場合がある。身体に負担を掛けないよう穏やかに過ごせ、と言い聞かせているのはその為だ。
自分より遥かに年若の子供を追い詰める為にあそこまでしたヴィンセントは非道だが、ルイスが無茶をしなければこのようなことにはならなかった。
ヴィンセントだけを責める気にはなれず、ファウストはルイスに小言を言ってしまう。
「そもそも、貴方の銃とあの男の暗器は相性が悪い。サシでやるなら間合いも考えろと前に言ったはずです」
「ファウスト師」
「はい…………、は?」
「それは師匠が言っていたことです。何故、貴方の口からその言葉が出るんですか」
自分はどんな時でも割り切ることができる機械のような人間だと思っていた。
人間の理不尽な生き死にも仕方のないことだと諦めが付く。失って立ち行かなくなることはない。聖職者として相応しい穏やかな人格を作っているだけで、自分の本質は冷えきっている。
だが、親愛なる友の子供たちは例外ということか。
らしくもない失態を演じ、結果的にファウストは自分の身分を明かす羽目になった。
「二年間、オレを騙していた訳ですか。何も知らない様はさぞや滑稽だったでしょうね。ジルベール・ブラットレー――いや、ファウスト・レイヴンズクロフト師」
事件の翌日。双子の兄を伴って屋敷に帰ってきたルイスと、ファウストは向き合っていた。
怒りを露にする主の前に膝を着いたファウストは変装を解いた本来の姿を晒している。
「騙すつもりはありませんでした。曲がりなりにもレイヴンズクロフトの人間の私がヴァレンタイン家にいる為には、身分を隠さねばならなかったのです」
「では、何故レイヴンズクロフトの人間がそこまでしてここにいる必要があったんです? まさか、オレを利用してオーギュスト様に取り入るつもりだったとでも……? それともこちらを揺さ振って楽しんでいるんですか」
「違います。母君に――エレン様に貴方たちのことを頼まれたのです」
「貴方はオーギュスト様の命を受けていないと思ったのに……、よりによってエレン様ですか……」
自分が何も持たず、他人から与えられるものだけで生きてきたと思っているルイスにとって、この事実は屈辱的なはずだ。しかし、ファウストは彼を傷付けようとして真実を打ち明けた訳ではない。
「確かに初めは遺言に従いました。ですが、貴方様だからこそお仕えしたいと以前申し上げたはずです。私が貴方の従僕でいるのは、エレン様の命ではなく個人的なことです」
「何故ですか……。どうしてオレを主だと言うんですか。何の得にもならないのに、どうして」
「貴方が私を照らす太陽になって下さったからです」
「……理解できません。意味が分からない」
「下の者の理由など貴方が知る必要はありません。貴方の存在が私の【救い】である、それだけなのです」
【死神】の任を解かれたファウストに最早生きる意味などなかった。
実家に帰るほど家族に思い入れはなく、青春時代を神の身元で過ごした為に未来への展望も欲も持たない。ただ聖職者として正しく在るべきだという信仰と自戒しかなかった。
それでも自壊に至らなかったのは、友が宝物を遺してくれたからだ。
「私のことは好きにお使い下さい。貴方からの命ならば全てお受けします、我が愛しの主」
「ですが先生――」
「それに、私がいなくなったら誰が貴方好みの茶を淹れられるというのですか?」
語調を変えて――師匠から先生へ――投げ掛けられる問いに、ルイスは一瞬面食らった顔をした。
ぬるければ茶葉が開かず味が出ない。だからといって熱くすれば猫舌のルイスは飲めずに、スプーンでひたすら掻き混ぜて冷ますという無惨な結果になる。そんな不様な姿を晒さない為にも、この従僕の存在は必要なはずだ。
「別に……他のカップに移して冷ませば良いだけです」
「その飲み方は優雅さに欠けます。まだスプーンで掻き混ぜている方が許せますよ」
「……ああ、はい……もう良いです。先生と話すと疲れるのでもうどうでも良いです。どうぞご自由に」
相手を揶揄しつつ探りを入れることと同様に、相手を疲れさせて手玉に取るのはファウストの得意技だ。
そんな厄介な存在を十年も傍に置いているルイスはある程度の耐性ができている。これ以上話しても無駄だと理解しているから、本当に疲弊する前に折れる。
ルイスは嘆息した後、頭を垂れていたファウストに顔を上げるように言った。
項垂れていた顔を上げると、紫眼の一瞥が寄越される。
星も月もない夜空のような澄み切った色の瞳は、人をぞくりとさせるものを含んでいる。心を暴くような視線に応えながらファウストは主人の言葉を待つ。
「一つ確認して良いですか」
「はい、何なりと」
「では訊きます。貴方は侯爵家の人間です。養子のオレよりも身分が高いのに、そんな子供に良いように使われて屈辱的ではなかったんですか?」
「ああそんなことですか。……いやあ、これがまた楽しいんですよ、意外なことに」
「楽しい?」
「糞生意気な子供に扱き使われているという被虐的な状況にまずぞくぞくしますし、そういうガキを何としても立派な紳士に仕立ててやろうという加虐的な心も擽られて、いや中々どうして面白い。つまり何が言いたいかと言いますと、貴方は私の欲求を満たしてくれる」
今までの真摯な宣誓をぶち壊すような発言に、ルイスは身を引く。
「…………今去れと言っても良いですか。オレは変人を傍に置きたくない」
ああ、どん引きされている。ほぼ口から出任せだったが、緊張を解す材料にはなったようで、ルイスはいつものように疲れた顔をして冷たい目を向けてきた。
「類は友を呼ぶというやつですよ。貴方が風変わりだから周りも変わっているのです」
疲弊の末に諦め、許容したルイスを慰めるようなからかうような言葉を掛けながら、ファウストはこれで良かったのだと内心安堵の息をつく。
身分を隠しておくのは限界があった。だから、この結果は上々だ。
(……いや……だがやはり悪趣味か)
今後ルイスがどのように振る舞うかはまだ分からないが、恐らく復讐心を捨てることはないはずだ。
ファウストはそれを窘めつつも人を殺す術と、その技術を磨く機会を与える。
友が幸福を願った子供たちには救われて欲しい。
いっそ敵も討ってやりたいくらいだが、こればかりは代わりにする訳にはいかない。
彼等が遺した宝物を決して壊さぬよう磨き上げ、目的を遂げさせる。その輝きを永遠のものにする。それがアデルバートとエレンへの誓いの遵守であり、自らの願望にも繋がっている。