第2話 獣人
主人公は今回出てきません。
森に強い光が射す中、森の外では重々しい足音が聞こえた。
その中の一人軽快な足取りをした獣人が口を開く。
「ま~た隣国の王様はここら辺を狙ってるんかねぇ」
ゆさゆさと尻尾を動かしながらにぱにぱとしている。顔は普通の人間とは変わらないが、目立つ立派な耳と尻尾は彼が獣人という証だ。全く困っちゃうなぁと口では言っているが、随分明るい調子に隣にいる獣人はそいつの頭を叩いた。
「ビネスお前は全くいい性格をしてるなと、毎回俺は思うよ…」
その様子を見ながらポツリと情けない顔をした。ビネスと呼ばれた少年は破顔し、胸を張りながらまぁねといい調子だ。
「隣国の王様は考えなしだからね、この神聖な場所を自分の懐に入れてちっぽけな自分の体内に力を吸収しようと頑張ってるんじゃないの?」
ビネスの頭を叩いた獣人はその言葉を聞いて眉を寄せた。
「お前の言ってることたまに当たるんだからそんな物騒なこと言うなよ。でも、まぁそんな奴が考えたことって稀に脅威だからな。考えたくねぇ…。」
「ははっ、そんなめったに当たんないからー考えすぎだよ。そんなんだから毛玉が増えるんじゃない?」
獣人たちの軽い冗談の言い争いは、しばらく歩いてからでも続いた。
* * *
森に少し入ったところに少し違和感を感じた。ビネスは周りを見渡してみるが、ほかの獣人はまだ、感じていないみたいだ。
気のせいかと思ったが、何故かそう思えなかったビネスは立ち入り禁止区域に近いギリギリまで仲間と共に歩みを進めた。
「ビネス、まだ感じる?」
「う~ん、気にしすぎかなぁ…なんかざわざわしてる気がするんだけどさっ!」
「まぁ、確認して損はないからな。様子を見よう」
しばらく経ってビネスはふと地面の植物が上に頭をあげているのに気が付いた。
「ねぇ、このソニンソウ花の部分って下を向いてるよね?」
「え? うわぁソニンソウだ!!これ村に持って帰ったらお婆ちゃん喜ぶよ!」
「ちょ、質問してるんだけど…」
ソニンソウは、ご老人たちにありがたられる草花だ。腰の痛みや肩のコリを軽減させ、重宝されている。見た目は花の部分が地面を見ていて、まるで腰を押さえているようなユーモア溢れる形をしている。
違う意味で興奮しているお婆ちゃん子の友を横目にビネスは確信した。
やっぱり、森の中で何かが起こってるんだ。
「ビネス、何だかあのあたり騒がしいんじゃないか?」
ハッと顔をあげると今まで沈黙していた友が目線を促した。
そのあたりをじっと見ていると、騒音がしていたのが静かになり辺りが静寂に包まれる。
「いくぞ…」
「「うし…」」
ゴクリと喉を鳴らして忍び足の準備をする。
「わっ…!!!」
ビネスが一歩を踏み出そうとした瞬間、強い光がビネスたちを襲い彼らは強く目を瞑るしかなかった。
観覧ありがとうございました。