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幕間:それでも誘惑を続けるようです

 帰宅したあたし――内木望愛は、クッションを抱いてベッドに寝転んでいた。


「むぅ……」


 あたしはプクッと頬を膨らませている。不機嫌の原因はノリくんにあった。


「もう~~っ! なんで、なびいてくれないの!?」


 ノリくんの家で雨宿りをしているあいだ、風邪を引かないようにシャワーを借りさせてもらったり、濡れた制服を乾かしてもらったりしていた。その際に何度か誘惑してみたけど、ノリくんが屈することはなかった。むしろ、ガードが堅くなったように感じる。


 宣言通り、ノリくんはあたしを更生させるつもりみたいだ。


「そんなことしなくていいのに! 頑張って誘惑してるのに! ノリくんになら、なにをされても構わないのに!」


 腹立たしさのあまり、足をバタバタさせる。


 そうやってひとしきり(いきどお)りを発散させてから、ふぅ、と息をつき、呟いた。


「でも、あたしのこと、ちゃんと想ってくれてるのは嬉しいな」


 まぶたを伏せて、ノリくんの言葉を思い出す。


 ――もう我慢の限界だ! お前がふしだらな真似をするなんて耐えられん! 俺が更生させてみせる!

 ――望愛のことが大切だからだよ!


 それだけで、多幸感と愛おしさがこみ上げてきた。


「えへ、えへへへ……」


 頬がだらしなく緩むのがわかる。きっとあたしは、ワンタンの皮みたいにふにゃんふにゃんな笑みを浮かべていることだろう。


 やっぱり、好きだなぁ、ノリくんのこと。離ればなれになる前も、会えないあいだも、再会してからも、ずっとずっと。


「だったら、くじけてる場合じゃないよね」


 好きだから、カノジョになりたいから、ふてくされているわけにはいかない。あたしを想ってのことだとしても、ノリくんの言うとおりにはできない。


 これからも、ガンガングイグイ誘惑する。ノリくんの理性が陥落するまで。


 ギュッとクッションを抱きしめて、あたしは不敵に笑った。


「覚悟してね、ノリくん? 絶対に落としてみせるから」

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