表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

痴女(偽)が誘惑をしかけてきた! ――6

 結局、間に合わなかった。


 あと少しで俺の家というところで、ついに雨が降りだし、あっという間に土砂降りになってしまったのだ。


 家に着く頃には、俺も望愛もずぶ濡れになっていた。


「大変な目に遭ったな……」

「うう……服が貼り付いて気持ち悪い」


 乱れた息を整えながら、俺と望愛は玄関先で愚痴る。


「うわぁ、ブレザーのなかまでビチョビチョだよ」

「大丈夫か、望愛?」


 望愛を気遣おうと振り向いた直後、俺は言葉を失った。


 原因は、ブレザーを脱いだ望愛の胸元。シャツが濡れてしまったせいで、ブラが透けていたからだ。


 しかも、そのブラはやたらと大人っぽいデザインで、色も黒と大胆なもの。


 暴力的なまでに扇情的な光景に、俺の思考も肉体も完全に停止してしまう。


「ノリくん? どうしたの?」


 ショートしたロボットみたいに硬直する俺の様子に、望愛が小首を傾げる。


 それでも身動きを取れないでいると、望愛が俺の視線を追って――ブラが透けていることに気づき、顔を真っ赤にした。


「ひゃあっ!?」

「わ、悪い!」


 慌てて胸元を隠す望愛。その悲鳴でようやく我に返った俺は、急いで顔を背ける。


 き、気まずい! このままここにいるのは、あまりにも気まずい!


「ぬ、濡れたままじゃ、風邪引いちゃうよな! タオルとってくる!」


 いたたまれなくなった俺は、理由を付けて玄関を離れようとする。


 が、それは叶わなかった。俺が着ているブレザーを、望愛がつまんできたからだ。


「の、望愛?」


 恐る恐る振り返ると、俺を見上げる琥珀色の瞳と目が合った。


 どこか切なげな表情をした望愛は、小刻みに体を震わせながら、迷うように視線を下ろし、しかし、意を決したようにもう一度こちらを見つめて――胸元を隠していた腕をどけた。


「――――っ!?」


 予想外の行動と、再び覗いたブラ。そしてなにより、物欲しげな望愛の眼差しに、心臓をわしづかみにされたような錯覚に(おちい)る。まるで釘付けにされてしまったかのように、望愛から視線を外せない。


 恥じらってはいるが、望愛は胸元を隠そうとしなかった。むしろ、背筋を伸ばして胸を張ってくる。さながら、こちらに差し出すように。


 限界だった。


 ここまで我慢してきた。なんとかなだめすかしてきた。だが、俺にはもはや、()()()()を抑えられそうにない。


「望愛」

「っ!」


 望愛の両肩をつかむ。


 ビクリと肩を跳ねさせながらも、望愛は逃げも拒みもせず、静かにまぶたを伏せた。


 ひとつ息を吸い、俺は告げる。



「いい加減、はしたないことはやめなさい!!」

「ふぇっ!?」



 伏せていたまぶたを上げて、望愛が目を白黒させた。


 ここまで我慢してきた。なんとかなだめすかしてきた。


 露出の多い格好も、思わせぶりな言動も、過激なスキンシップも、望愛が自分で選んだことだと。望愛の自由は尊重すべきだと。


 だが、やはり無理だ。


「もう我慢の限界だ! お前がふしだらな真似をするなんて耐えられん! 俺が更生させてみせる!」

「な、な、な……っ?」


 俺の宣言に口をパクパクさせていたが、望愛はすぐに立ち直り、不服とばかりに頬を膨らませて抗議してくる。


「なんでそんなこと言うの!?」

「望愛のことが大切だからだよ!」

「ほわぁっ!?」


 しかし、その勢いは一瞬でくじかれた。


 俺が力強く言い放つと、赤かった顔をさらに赤くさせて、望愛が黙り込む。もはや文句も言えないようで、硬直したまま立ち尽くしていた。


 望愛は可愛いし、体つきも肉感的だ。そのうえ無防備にスキンシップをとってくるのだから、勘違いする男が現れる可能性は高い。


 このまま男を誘惑し続けたら、いつか望愛はひどい目に遭う! その前に、なんとしてでもまっとうな道に戻さなければ!


 使命感に燃え、拳を固める。


 俺が決意する一方、望愛は赤面したままで目を回していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ