表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

痴女(偽)が誘惑をしかけてきた! ――5

「ねえねえ、ノリくん」

「ん? どうした?」


 放課後、帰り支度を整えていると、てててー、と望愛がやってきた。


「ノリくんが住んでるのって、むかしと同じとこ?」

「ああ。引っ越しとかしてないしな」

「じゃあ、一緒に帰ろうよ? いまあたしが住んでるとこ、ノリくんのお(うち)と同じ方向にあるんだ」


 離れている時間が長かったからこそ、望愛とはできるだけ一緒に過ごしたい。望愛の誘いは願ったり叶ったりだ。


「もちろん、構わないぞ」

「やった♪」


 快く頷くと、望愛は飛び跳ねんばかりに喜んだ。




 学校をあとにして、帰路につく。


 隣を歩く望愛は、楽しそうに鼻歌を奏でていた。


「なんだかご機嫌だな」

「そりゃあ、そうだよー!」

「うおっ!?」


 指摘する俺に、望愛が飛びつくように抱きついてくる。熱烈なスキンシップには慣れられそうにない。顔がかぁっと熱くなり、心臓がバクバク暴れていた。


「だ、抱きつくなっつぅの! 何度も言ってるだろ!?」

「しかたないじゃん。ノリくんと一緒にいられて嬉しいんだもん♪」


 ピッタリくっついたまま、望愛が俺の胸に頬ずりしてきた。


 いまの発言は、先ほどの質問への答えでもあるのだろう。俺が隣にいるから、望愛はご機嫌なのだ。


 まったく。そんなふうに喜ばれたら、注意できなくなっちゃうだろ。


 苦笑を漏らし、望愛の頭をぽんぽんと撫でる。


「俺も嬉しいよ。二度と会えないと思っていた望愛と、こうやってまた一緒に過ごせているんだから」

「そっか……ノリくんも同じ気持ちなんだ」


 呟いて、望愛がスマホを取り出した。


「じゃあさ? LIME、交換しようよ」

「LIMEを?」


 聞き返すと、望愛がコクコクと頷く。


「LIMEなら、いつでもどこでもお話できるでしょ? ノリくんと話せなくなるのは、もう嫌だよ」


 切なげに言った望愛が、期待と不安が入り交じった目で俺を見つめてきた。


「ダメ、かな?」

「そんなわけないだろ。俺だって、望愛と話せなくなるのは嫌だしな」


 同じくスマホを取り出して、ニッ、と笑ってみせる。


「交換しよう、LIME」

「うん!」


 ヒマワリみたいに明るい笑顔を、望愛が咲かせた。


 QRコードを表示させて、望愛とLIMEを交換する。


 交換を終えた望愛は、宝物を扱うように、両手でスマホを包み込む。その顔には、『感極まった』という表現が似つかわしい笑みが湛えられていた。


 まさかここまで喜んでくれるとはなぁ、可愛いやつめ。


 望愛の喜び様を微笑ましく感じると同時に、はしゃぎっぷりを(いじ)りたい衝動に駆られる。


 イタズラ心に(あらが)えず、ニヤニヤ笑いでからかった。


「なんだ、望愛? 俺とLIMEを交換できたこと、そんなに嬉しいのか?」

「はわっ!」


 指摘された望愛が、ワタワタと慌てだす。はしゃぎすぎた自覚があるようだ。


 恥ずかしそうに頬を赤らめて、右へ左へと視線を泳がせる望愛。


 笑いを堪えながら可愛らしい反応を眺めていると、反撃とばかりに望愛が口を開く。


「そ、そりゃあ、嬉しいよ! これからは、ノリくんにエッチな自撮りを送れるし!」

「それはマジでやめろよ!?」


 今度はこっちが慌てる番だった。


 十中八九照れ隠しだろうけど、痴女化している望愛ならば万一があり()る。本当にエロ自撮りを送ってこないよう、必死で釘を刺す。


 ゴロ……


 騒々しいやり取りを繰り広げるなか、不意に上空から鈍い音が聞こえた。


 見上げると、青かった空はいつの間にか分厚い雲に覆われ、鈍色(にびいろ)になっている。


「うわぁ……」と、望愛が眉根を寄せた。


「多分、これ、激しく降るやつだよね?」

「ああ。急いで雨宿りしないとマズいな。もうちょっとで俺の家なんだが、走れるか?」

「うん!」


 望愛が頷き、俺たちは走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ