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誘惑したい彼女 vs. 更生させたい彼――5

 図書委員会の仕事は、大きく分けて五つある。


 本の貸出・返却の受付。本棚の整理と、返却された本の再配置。小冊子やポスターの作成、ホームページの更新。読書会や映写会の企画・運営。ブッカーの貼り付けだ。


 これら五つの仕事は、カウンター班、書架整理班、広報班、イベント班、ブッカー班に分かれて行われており、図書委員はどれかの班に所属することになる。


 俺と望愛が選んだのは書架整理班だ。


 放課後、書架整理班の生徒たちは図書室に集まっていた。本来は当番制だが、仕事のやり方を教わるため、最初は全員で行うことになったのだ。


「じゃあ、ふたりにはこの本棚の整理をお願いしようかな」

「「わかりました」」


 経験者である先輩から仕事のやり方を教わった俺と望愛は、任された本棚の整理に取りかかった。


 返却された本を運んできて、本棚に戻す。本の順番が違っていたら、正しくなるように並べ替える。ふたりで手分けしているが、それでも結構大変だ。


 けど、望愛とふたりでひとつのことを成し遂げようとしているのは、充足感があるな。文化祭の準備とかで同じ作業をした生徒が仲良くなるのって、こういうメカニズムなのかもしれない。


 そんな気づきを得た俺は、クスリと笑みを漏らす。


「ねえ、ノリくん? 踏み台を支えてもらってもいい? 倒れたら危ないから」

「ああ、任せろ」


 口元を緩めていると、本棚の上側を整理している望愛が頼んできた。快諾した俺は、膝をついて踏み台を支える。


 しばらくそうしていると、トラブルでも起きたのか、望愛が小さな悲鳴を上げた。


「……ひゃっ!?」

「どうした!?」


 反射的に顔を上げて――俺は硬直する。


 うかつだった。


 俺はいま、望愛が乗っている踏み台を、しゃがんで支えている。その状態で上を向くと、角度的に見えてしまうのだ。望愛のスカートの内側が。


 そのことに気づけなかった俺は、レースがあしらわれた紫のショーツを、ばっちり目撃してしまう。


「っ!?」


 慌てて顔を伏せるが、衝撃的かつ刺激的すぎたため、俺の網膜には望愛のショーツがしっかりと焼き付いてしまっていた。


「本を落としかけて声が出ちゃった。驚かせてごめんね、ノリくん?」

「い、いや、気にするな」


 頭上から降ってくる望愛の声に、うつむいたまま応じる。収まりきらない動揺で、声が裏返りそうになりながら。


 一刻も早くこのポジションを離れたい。しかし、台を支えていないと望愛が危険だ。葛藤に(さいな)まれながら、望愛が整理を終わらせるのをひたすら待つ。


「よし、完了!」


 ややあって、一仕事終えた望愛が満足げに手を叩いた。実際には五分も経っていないだろうけど、体感では一〇倍以上に感じる。


「支えてくれてありがとう」

「ど、どういたしまして」


 踏み台を下りて、望愛がお礼を口にする。気まずさと後ろめたさで、まともに望愛の顔が見られない。


 目を逸らしたまま頬を掻いていると、望愛がまじまじと俺の顔を見つめてきた。


「ノリくん? なんだか顔が赤いよ?」

「うっ」


 指摘された俺は、『ギクリ』の擬音が似合うような、ステレオタイプなリアクションをしてしまった。


 頬に冷や汗を伝わせて、思い悩む。


 ど、どうする? 適当な理由をでっち上げて誤魔化すか? けど、パンツを見たことを黙っているなんて、失礼にもほどがあるよな……正直に打ち明けるべきか。


 保身よりも罪悪感が勝り、ためらいそうになりながらも、白状するべく息を吸う。


「も、もしかして、あたしのパンツ見て、興奮しちゃった?」

「へっ!?」


 直後、望愛に図星を突かれ、俺は目を剥いた。


 動揺のあまり言葉を失うなか、頬を赤らめた望愛は、プルプルと震えながら口元に笑みを描いている。


 その態度で俺は悟った。踏み台を支えるよう望愛が頼んできたのは、俺にパンツを見せるためだったと。わかったうえでやっていたことだったと。


 ふ、普通、そこまでするか!? 痴女であることにプライドでも持ってるのか、望愛は!?


 驚愕せずにいられない。唖然とした俺は、酸素を求める金魚みたいに口をパクパクさせる。


 一方の望愛は、攻め時とばかりにさらなる誘惑をしかけてきた。


「見たいなら見てもいいんだよ? なんだったら……さ、触らせてあげようか?」

「は、はあ!?」

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