誘惑したい彼女 vs. 更生させたい彼――3
望愛の希望により、俺たちが選択したのは図書委員会。ほかに立候補者がいなかったので、問題なく入ることができた。
時間が経ち、昼休み。
委員会の仕事の説明を受けに、俺と望愛は図書室を訪れた。
ほかのクラスの生徒も続々と集まるなか、俺たちは隣り合って座る。
各クラスの生徒が集まったところで、顧問である女性教師がホワイトボードの前に立った。
「じゃあ、説明をはじめようか。図書委員会の仕事は複数あるんだけど――」
先生の説明に耳を傾ける。
ピト
「っ!?」
そんななか、望愛が席を寄せて密着してきた。
腕と腕が、太ももと太ももが、触れ合っている。女性特有の柔らかさ、触れた場所から伝わってくる体温、漂ってくる桃みたいな匂いに、ドキリとせずにいられない。
照れくささに耐えられず、望愛から離れるように席をずらす。
が、望愛は逃がしてくれなかった。またしても席を寄せ、ピッタリとくっついてくる。
「お、おい、くっつくなよ」
「いいじゃん。減るものじゃないんだし」
「どっちかというと、それは女性のほうのセリフじゃないか!?」
注意しても望愛は離れようとしない。俺の鼓動は加速するばかりだ。
こ、このままじゃ、望愛のペースにのまれる! なんとかして説得しないと!
動揺が表に出ないよう気をつけながら、改めて釘を刺す。
「悪ふざけしてないで、ちゃんと説明を聞けよ。一緒に仕事をしたいんだろ? だったら、仕事内容を把握しないとダメだろ」
「なに、ノリくん? もしかして、照れてるの?」
平静を装ったつもりだが、誤魔化しきれなかったらしい。図星を突かれ、思わずギクッとしてしまう。
そんな俺の反応を受けて、望愛が口元を猫みたいにした。
「ふ、ふーん? ドキドキしちゃったんだ? あたしを更生させるって言ってたけど、やっぱり本心では嬉しいんだ?」
「て、照れてるんじゃない。いきなりくっつかれて、ビックリしただけだ」
「そういう割りに、顔が赤くなってるけど?」
「み、見間違いだろ」
「本当に照れてないの? ドキドキしてないの?」
「ああ。断じてない」
苦し紛れだとわかっているが、認めるわけにはいかない。頑として否定する。
「ふーん? じゃあ、こういうことしても大丈夫だよね?」
「ちょっ!?」
抵抗する俺を陥落させようと、望愛が次の一手を打った。俺の脚に自分の脚を絡ませてきたのだ。
思いも寄らない事態に、俺は目を丸くする。
「な、なにしてるんだよ、望愛!?」
「ドキドキしてないんでしょ? だったら、ベタベタしても平気だよね?」
「うぐ……っ」
口ごもらずにはいられなかった。
ここで拒否したら、望愛にくっつかれてドキドキしていたことの証明になってしまう。望愛を調子づかせては更生の妨げになってしまうので、それは避けたい。
しかし、拒否しなければ、望愛はベタベタし続けるだろう。究極の二択とは、まさにこのことだ。
「ほらほらー? 認めちゃいなよー? ドキドキしてたんでしょー?」
葛藤する俺を追い詰めるように、望愛のスキンシップが過激になっていく。
絡ませた脚をスリスリと擦りつけ、たわわな胸をむにむにと押し当ててくる望愛。その頬は、発情したように赤らんでいた。
ドキドキしていたことを認めるのは不本意だ。だが、ここで止めなければ、望愛のスキンシップはますます過激になっていくだろう。
悔しいけど、ここは認めるほかにない……!
苦渋の決断をして、口を開く。
「あー……そこのふたり?」
「「へ?」」
顧問の先生が声をかけてきたのは、俺が降参する直前だった。
和やかな笑みを浮かべているが、先生の目はちっとも笑っていない。
「水を差しちゃうようで申し訳ないんだけどさ? イチャつくのは説明が終わってからにしてくれる?」
「「す、すみませんでした」」
注意された俺と望愛は、揃って頭を下げる。
容易く想像できると思うが、俺たちの顔は恥ずかしさのあまり真っ赤になっていた。




