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トレイラー異世界を行く  〜ゲート事故でライトコーンの外側に飛ばされた件〜  作者: 山ノ内右京
序章 ゲート

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1/10

始まりの始まり

初めまして。


この物語は、ゲート事故によって“ライトコーンの外側”へ放り出された一人の男が、

鳥居の向こうに広がる異世界で“漂着者たちの末裔”と出会うところから始まります。


異世界転移ものではありますが、できる限りSFとして、

そして「真理は論理を超える」という問いを芯に据えて描いていきます。


どうぞお楽しみください。

挿絵(By みてみん)


「ネットワークとの接続が切れました。アクセス・ポイントが見つかりません」


フレキシブルpadが騒ぐ。

「スタンドアローンモードでの再起動を推奨します」

続いて、腕のインテリジェンスwatch。


「通信不能。位置情報取得失敗」


最後にVRヘッドギアまで、律儀に同じことを告げた。

私は目を開けた。


……森だ。


湿った土の匂い。

夜明け前の冷気。

遠くで鳥が鳴いている。


あり得ない。


転送は2/15秒以内に完了する。

誤差はない。

少なくとも、私が生きてきた社会では。


「スタンドアローンモードで再起動」


私は腕を上げる。

……そうだ。

本来なら今頃、私は第七森林区にいるはずだった。



転送社会では旅は“移動”ではない。

ゲートをくぐれば、山も海も一瞬で手に入る。


けれど私は、わざわざキャンプに行く。


火を起こす。

湯を沸かす。

星を眺める。


効率から外れた行為。


世界がLOGOSに管理されるほど、

人は“無駄”を欲しがる。

私もその一人だ。

出発前夜、私はいつもの番組を流していた。



古いマルチメディア・コンテンツ――

『ユニバーサル・トレイル』。


太陽系から出られない時代に、

人類が恒星系間を旅する夢を見ていた物語。

TVドラマシリーズに始まり、映画、演劇、

ゲーム、体験型ゲーム、サバゲー、VRMMO、

イベント…etc.

とマルチに展開しているオバケコンテンツだ。


世界中に熱狂的なファンがいる。

トレイラー、と呼ばれる人々。

私もその末席だった。

だからこそ、キャンプの行き先は決まっていた。


第七森林区ゲート。


森と静寂が“予約できる”場所。

視界に地球のホログラムが浮かび、

目的地が淡く点滅する。


私が了承を思うだけで、ゲートは応答する。

CTI(光時間軸パラメータ)は固定。編集不能。

誰もがそう信じている。


……信じていた。

私は息を吐き、現実に戻った。


VRヘッドギアは娯楽じゃない。

この時代の人間にとっては、眼鏡と同じ生活器官だ。

「スキャン・アプリ起動。周辺状況の報告を求む」

フレキシブルpad上の《トレイルスキャナ》が

低い電子音を返す。


《ネットワーク接続:不能》

《座標参照:失敗》

《因果タグ:不明》

《大気組成、正常》

《重力、ほぼ地球標準》

《通信網、ゼロ》


ゼロ?


私は立ち上がった。


森は静かすぎた。

風の音はある。

鳥の声もある。


なのに――人間の世界の気配が、まるでない。


私は数十メートル歩く。


落ち葉の下に、古い踏み固められた道があった。

誰かが通った跡。


……いや。

ずっと昔に通った跡だ。

視界の先に、何かが立っている。

最初はただの木の影に見えた。


けれど近づくにつれて、

それが“形”を持っていることに気づく。


鳥居だった。


古い木材。

苔むした柱。

社のような小さな建物。


こんな場所、予約地図には存在しない。

私は近づく。


鳥居はただの鳥居に見える。

どこから見ても、そこに立っているだけだ。


けれど……。


鳥居をくぐった瞬間、森が変わった。


同じ緑のはずなのに、空気が違う。

音が違う。

匂いが違う。


インテリジェンスwatchが震えた。


《ネットワーク接続:不能》

《座標参照:失敗》

《因果タグ:不明》


「……冗談だろ」


私はフレキシブルpadを握り直した。

「トレイルスキャナー、起動。周辺状況を確認する」

画面に走る解析線。


《酸素濃度:地球標準》

《磁場:地球標準》

《位置情報:取得不能》


地球なのに、地球じゃない。


そのときだった。


背後で、枯葉を踏む音がした。

誰かが――近づいてくる。

私は息を止めて振り向いた。


(つづく)


ここまでお読みいただきありがとうございます。


今回は導入編として、世界とゲート事故の始まりを描きました。

次話からいよいよ鳥居の向こう側――エルフ居留地で物語が動き出します。


ご感想やご意見をいただけると励みになります。


真理は論理を超えたところにあります。

それではまた。


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