4/8
第3章
深夜、隣のキッチンから得体の知れない物音が聞こえて、少女はビクッと目を覚ました。隣の妹はぐっすりと深い眠りに沈み、灯りのないぼんやりとした暗闇が広がっていた。
──泥棒?
少女は気配を消すように静かに起きあがり、手探りのままおそるおそる隣のキッチンの暗闇を覗いた。
動く人影がある。どうやら晩ご飯の残りを、スプーンが皿に触れる音も気にもせず、夢中で食べている。四角い小さな窓からの仄かな月明かりに、一瞬、うっすらと見覚えのある精悍な顔が浮かんだ。
──お兄ちゃん!
少女は驚いて、小さな声で呼んだ。すると暗闇の人影は、獣のようにいっさいの動きを停止させ、じっと少女を睨んだ。
次の瞬間、人影は狙われた小動物のように壊れかけた扉から逃げるように飛び出して行った。
彼方に白い頂きの山脈がつらなる乾燥した大地に、昏い土埃が舞いあがった。




