第1章
彼方に残雪をのこすヒンズークシ山脈が厳かに連なり、アフガニスタンの太陽の光を浴びた鮮やかな黄色の菜の花畑で、10歳ほどのひとりの少女が微笑んだ。
この地方は、温暖化のための干ばつにより緑や畑が失われ、荒涼とした大地に姿をかえてしまっていた。少女は、生まれてはじめて見る菜の花の鮮やかさに驚いた。
こんなにきれいな色の花もあるんだわ、少女は花びらのひとつひとつが太陽の光にまばゆく微笑む様子をじっと見つめた。
──太陽の光を浴びて、花たちは幸せそうに笑っている……
すると少女を呼ぶ声が聞こえた。妹が姉のあとを追いかけて来たのだ。ふたりは、菜の花畑を追いかけっこするように走り回り、菜の花畑は、少女たちの清純な笑い声に包まれた。
──おや?
菜の花畑に、大きな黒い鳥のような影がさーと流れた。見上げると、激しい轟音とともに黒い機体が薄青い空を飛んでいる。アメリカの軍事用アパッチヘリコプターだ。この菜の花畑の上空は、アメリカ軍のヘリコプターの飛行経路であった。
少女たちは黙ったまま、黒光りする機体を見送る。なんのためにどこへ行くのかも知らずに……




