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第4話 神官会議②

「ジャカジャカジャカジャカ…」

 マラカスを振るような動作をしながらセルフで効果音を出すルベリア。

 ルベリアが既にそれを始めてから30秒が経過しようとしていた。

 「っ…」

 「ジャカジャン!本日の議題は、最近ヴィクティアで暴れているテロ集団『七罪セプテム・ペッカータ』をどうしようか問題でーーーす!」

 あまりの長さに痺れを切らして勢いよく立ち上がり、ツッコもうとする李晨を、待ってましたと言わんばかりにルベリアが遮る。

 まんまと罠に嵌められた屈辱と驚きと恥ずかしさに頬を赤らめてプルプルと震えながら李晨は座る。

 「ヴィクティア…。どうせ自国の民だろう。だから俺は戦争などどちらかの国が滅びるまで放置しとけと言ったのだ。」

 ハルバードは環の方を見ながら言う。

 「…あれはあの時の僕なりの善意だよ。別に今でも間違ったことをしたとは思ってないけどね。」

 「無責任も甚だしいな。世界から英雄と褒め称えられ、悦に浸るだけ浸って、残された者たちのことは何も考えてない訳か。」

 「…その後の国の復興にも手を貸したさ。その時の僕は、無関係の人でも助けなくちゃと思ってたからね。」

 「そういうことを言っているのではない。魔力を持つ者が危険な目に合えば、生存本能から保有する魔力量が上昇することは、よもや貴様が知らん訳が無かろう。」

 環とハルバードの言い合いにルベリアが割り込む。

 「まあまあ、一旦落ち着いてくださいよ。環さんがヴィクティア国民を救ったことは、世界的にも評価されていることなので自信を持っていいと思いますよ。しかし、今回の『七罪セプテム・ペッカータ』の首謀者はハルバードさんの言った通り、ヴィクティアの青年です。名前は「フラン・ポノトシア」。まぁ十中八九ヴィクティア戦争の関係者でしょうね。」

 ルベリアが自分の後ろにあるモニターを指さし棒であちらこちらと指し示す。

 こんなものを用意するなんて、余程みんなが集まるのを楽しみにしてたのだろう。

 「構成員は全部で7名。数は少ないものの、全員大魔道士(クラス)の実力を持ち、それに加え厄介な能力アビリティを保有しているらしいです。既に周辺国に()()()しており、周辺国の大魔道士が連合を組んで突入しましたが返り討ちにあっています。それで我々にお鉢が回ってきたという訳ですね。そこで、誰が『七罪セプテム・ペッカータ』を退治するかという問題ですね。」

 ルベリアは淡々と説明を続ける。

 「はいはぁい、先に言っておくけどぉ、私はスケジュールがこの先埋まっちゃってるんでぇ、ごめんけど無理ぃ。」

 コラプスが手を挙げて言う。

 「すみませんが俺も無理ですね。」

 エルドラドも後に続いて言う。

 「おお!り合うのか!だったら俺がその件、受けよう!」

 戦闘の雰囲気を感じたギルヴェルが目を輝かせて言う。

 「じゃあ決まりということで。ということで、もう帰ってもいいかな?」

 環がそう言って席を立とうとする。

 「いえ、申し訳ありませんが今回の件は環さんが受け持って欲しいと考えています。」

 帰ろうとする環はその言葉に止まる。

 「相手側から因縁を吹っかけられてるんですよ。どうやら、フランさんは死神めぐるさんに会いたがっているようなんですよ。」

 ルベリアは両手を顔くらいの高さまで上げ、やれやれといったようなジェスチャーをとる。

 「自分で蒔いた種だ。当然のことだろう?」

 ハルバードが環をなじる。

 「…わかったよ。ただし、条件がある。僕に因縁を吹っ掛けて来ているのは、そのフランとやらだけなんだろう?だったら僕はフランを殺して帰る。だから、他の『七罪セプテム・ペッカータ』は別の人がやってくれないかな?」

 環は突拍子も無い提案をする。

 「…おい、いい加減にしろ。貴様一人で難なくこなせる問題だろう。面倒臭がるな。さらに、全員が大魔道士(クラス)だと言うではないか。別の者にしても、そいつらに勝てる者は限られるのだぞ?ましてや他に神官を連れていくなど、一国を滅ぼすにしても過剰戦力だが?」

 環の返答にハルバードが静かに激昂する。

 「俺は環に賛成だぞ!いつ行くのだ?全員とらせてくれるのか?」

 おそらく話をほとんど聞いていないギルヴェルが空気も読まず割り込んでくる。

 「俺も着いてこーかな、なんかコイツ(めぐる)色々と危なっかしーし。まあ俺も()るとしたら1人だけだけどな。」

 「そうだなぁ、おれも行くとするかな。ただし環殿、俺の息子が会いたがってるのでな。近々会ってやってくれないか?」

 「おー!皆さん行くんですか?みんなでお出かけみたいなのしてみたかったんですよね!私!ということで行きます!」

 ギルヴェルに続いて、李晨、華月、ルベリアが賛同する。

 それを見てハルバードはなにか物言いたげな顔をして、口を噤む。

 「じゃあ決まりだね。余った2人は、僕の使い魔にでもやらせるよ。とは言ったものの、今週末は僕も予定あるから、決行日は来週の土日がいいな。」

 環はハルバードを横目に話を進める。

 「今んところ予定はねーけど、入りそうっちゃ入りそうだな。」

 「俺は別に何時いつでもいいですな。」

 「俺は何時いつでもいいぞ!早ければ早いほどいいな!」

 話がどんどん進み、それを見たハルバードはため息をつく。

 もう既に止めるのを諦めたようだ。

 「ふっふっふっ。私、実はやってみたかったことがあるんですよね。」

 ルベリアが妙案でもあるかのように口角が上がる。

 「なんだ?もったいぶらねーでさっさと言えよ。」

 それを聞いたルベリアはマラカスを振るような動作を構えようとしたので李晨は慌ててとめる。

 「ジャジャン!これを機に、神官のBOINE(ボイン)グループを作りたいと思いまーす!」

 ルベリアの提案に場が静まり返る。

 別にあればあるで便利なのだろうが、本当に今じゃなくていい。

 「えー!もしかして皆さん知らないんですか…!?BOINE(ボイン)!めちゃくちゃ便利なのに…」

 あまりにも静かな空気に耐えきれず、ルベリアが悲しそうな顔で言う。

 「ちっげーよ!俺たちがジェネレーションギャップで知らねーみたいにすんなよ!むしろ年下だからな?俺!ラフすぎんだよ!この場のこの空気で言うことじゃねーだろ!」

 一同の意見を代弁して李晨がルベリアにツッコむ。

 「まぁ、案自体は悪くないんじゃなぁい?こんな感じで集まるにもぉ、遠かったら大変だしぃ。」

 コラプスがそんなことを言いながら、BOINE(ボイン)の友達登録用のQRコードを表示させた自分のスマホをルベリアに見せる。

 「僕も賛成。頭でっかちのハルバードはBOINE(ボイン)やってるの?」

 おそらく無意識に、環は煽りを含むようにハルバードに言う。

 「…舐めるな。やっておるわ、そのぐらい。」

 こうしてその場にいた全員がBOINE(ボイン)のグループメンバーとなる。

 「じゃあ細かいことは、あとでこのBOINE(ボイン)で話し合いましょう!」

 ルベリアがそう言って会議もお開きとなった。

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