仲間想い
〈skill地廻竜の英爪〉
〈ability地廻竜の嗅覚〉
ロロベルトはブラックオークの死骸から、ピンポイントで素材となる場所を割り当て、刹那にして採取する。
その姿はまるで長年の修行を積んだ、洗練された職人のようである。
ロロベルトは両手に、またもや何か気持ち悪い物質を持っている。
「また何か色々採れたのですが、どうしましょう?」
「だから、毎回こっちに見せるな、汚いぞ。」
姫は顔を背ける。
でないと、本当に吐くからだ。
〈skill加工を習得しました。〉
〈skill加工を実行しますか?〉
まぁなんか知らんけど一応しとくか、、
「頼んだ」
すると、ロロベルトの手元にあったブラックオークの残骸は、姫の弾丸が入っているゲートへと吸い込まれていった。
〈ブラックオークの部位から黒・剛圧弾を加工しました。〉
ありがとよ、で、何が変わったのか聞かせて貰おうか。
〈skill加工とは、同じモンスター由来の弾丸で、同色のステータスが高い方の素材を採取した場合に、そちらの性能で上書き出来るskillの事です。〉
つまり、前洞窟で倒したブラックオークよりも今回の方が強いから、黒・剛圧弾の性能をアップデート出来たってことか。
同じモンスターでも個体差があるんだな、、
ちょっと待てよ、だとしたら性能が劣る赤・剛圧弾の存在価値が無くなるな。
持ってても無駄だし、黒・剛圧弾に上乗せできたら良いんだけどなぁ、、
〈skill糧化を習得しました。〉
「なんだそれ?」
加工はともかく、糧化?、、今回は咄嗟になんだそれと言葉が出た。
〈skill糧化とは、同じモンスター由来の弾丸で色が異なる場合に、性能が低い色の弾丸を贄として捧げる事で、その力を性能の高い色の弾丸へ上乗せできるskillのことです。
例えばラナプリン様の場合だと、赤・剛圧弾を贄に捧げる事で、黒・剛圧弾の性能をその分強化できます。〉
流石姫の天才肌。
いいskillが来るじゃん。
同じ色のモンスターだと上乗せは出来ないが、違う色だと上乗せが出来る。
じゃあ雑魚色モンスター狩りし続けたら、どんどん強くなるんじゃね?
「いけ、糧化!」
〈skill糧化を実行します。〉
にしても、前のブラックオークは赤・剛圧弾で倒せたけど、今回は黒・剛圧弾でもほとんど効いてなかったな、
もしかしてⅤ王冠〈ファイブクラウン〉ぐらいあったりして、、
ウラディンの方へ視線をやると、何やらウキウキ気分で踊っている。
勝利の舞とでも言おうか、ヘンテコなダンスだ。
とても上手いとは言えない。
「おーいウラディン、、あーもうクソっ、、ウラディンちゃーん、」
ちゃん付けをする度に姫のプライドが怒ってくる。
「ロロベルトの採取はもう終わったぞー!」
すると、陽気に踊っていたウラディンの顔が一瞬にして険しくなった。
そして、猛ダッシュでこちらに向かってくる。
「はーーーーやーーーー!!
もう出来たのか?」
「はい、まだ踊り足りませんでした?」
「踊りは足りてる。
そんなことより、今の一瞬で採取したのか?」
「はい、ちゃちゃっと、」
「凄いな、普通はこれほどの巨体となると、素材を採取するのに数時間はかかるのだがな、、
ロロっちの〈収集家〉がこれほどとは、」
ロロベルトは満更でもなさそうだ。
「で、素材はどこにあるんだ?」
「えーと、それはラナプリンさんが、」
ロロベルトとウラディンは同時にこちらを向く。
「あぁ、全部姫の弾丸作りに使わせてもらったぞ。」
ウラディンは目をかっ開く。
そして、
「えぇーーーーん、なんでぇ〜〜
売ったら高いお金になるのにぃー
なんでそんなことするのぉ〜」
と急に泣き出し、姫の肩を揺さぶる。
「お金なんていいじゃないか、ほら貴重なギルドメンバーである姫が強くなったのだぞ!」
「それはそうだけどさぁ、ウラ仲間がいなかったからクエスト行けなくてね、全然お金ないんだよぉ、
別にこれクエストじゃないから多分報酬金なんて無いし。
ここ数日間まともなもの食べてないから、これでやっと肉とか肉とか肉とか食べれると思ったのに、、
これ以上採取はできないの?ロロっち。」
「そうですね、限界みたいです。」
「えぇーーーーん」
大号泣だ。
なんか悪い気がする。
それなら早く言ってくれよと思ったけど。
それになんだこの泣きっぷり、園児やん、
「そうだったのか、なんか悪いな、、
、、そうだ!」
姫はすかさずウィンドを開き、所持金を確認する。
初陣の報酬が振り込まれている。
「ウラディンちゃんよ、姫は50000プリンプリン持ってるぞ、これで何か奢ってやろう。」
「え、俺は25000プリンプリンしか貰ってないんですけど、」
ロロベルトが、ため息混じりに嘆く。
だが、実は姫も25000プリンプリンしかない。
ロロベルトと2人で50000と言うことだ。
つまり、ロロベルト、お前も道連れだ!
「本当か!?やったぁ〜〜、じゃあ食べたいのがあるの、、」
どうせ、肉だろ
「肉とか、あ、そうそう、肉も食べたいな、
あとはー、うーん、あっ肉とかもいいな。」
嬉しさのあまりか、ずっと同じ物を言っている事に気付いてないようだ。
〈skill硬質化を習得しました。〉
ん?なんだ急に、なんで今?
〈skill硬質化を実行しますか?〉
なんかよく分からんけどこの異世界さんは前に、姫の置かれた状況に最適なskillを提案すると言っていたなぁ、、
硬質化が今最適なのか?
とりあえず、
「頼んだ」
ボォワンと体が頑丈になった気がした。
重厚な甲冑を着ている気分。
すると、焼け野原の塵影からパァンパァンパァンと劈くような銃声。
銃口が向いていたのは姫達の方向だった。
ウラディン、ロロベルト、姫へと1発ずつ弾丸が放たれる。
姫はskill硬質化で弾丸を弾くことが出来た。
ウラディンも同様弾丸を弾く音がした。
恐らく硬質化を持っているのだろう。
しかし、ロロベルトは地面にうずくまった。
なんとか致命傷は避けたみたいだが、肩からの流血に悶えている。
「ロロベルト、大丈夫か?」
「うん、ごめん避けれなかった。」
まともに喋れている。とりあえずは大丈夫そうだな。
「ちょっと待ってて、ロロっち。」
ウラディンは、またも表情を一変させた。
ちょっと怖いぞ、なんだこの殺気。
鳥肌がたってきた。
「おいおい、確かに直撃したよな、あの2人にも。」
「そりゃなんかのskillだろ、あのデカブツを倒すぐらいだからな、」
「心配いらないさ、こちとら5人だ。
1人は戦闘不能、女2人に負けるわけがない。」
姫達を狙撃したのは、5人のガラの悪いチンピラみたいな奴ら。
だが、見た目からしてただのチンピラってわけではないようだ。
ハンターか?
「おい姉ちゃん達、ごめんだけどそのデカブツ、俺たちが倒した事にしてくれないかなぁ?」
チンピラのリーダー的存在の奴が、前に出て交渉を持ちかける。
「うるせーよ、素材集めるしか能のねえ弱っちい奴だが、こいつは姫の数少ないオタク仲間だ。
仲間撃っといて、そんな無理な交渉を承認するとでも思ったか?」
断った後、こいつらがどんな行動をするかは分かっていたが、、どうだろう、勝てるか?
「だよな、じゃあ仕方ねぇ、死んでもらう。」
だろうな、、
力を込めガトリングを取り出し、迎撃態勢をとる。
すると、
「テメェら、、ウラは人間を殺す癖はないがな、、
人を平気で撃つ奴は人間ではない、ただのモンスターだ。
だから、テメェらをぶち殺す!」
途端、ウラディンの殺気は頂点に達した。
思わず姫はその場で座り込んでしまった。
立っているだけで、自分の身が危ない気がしたからだ。
なんだこいつは、さっきのブラックオークの圧が子犬の威嚇に思えてきた。
ウラディンはブラックオークを倒した大鎌を取り出す。
そして、向かってくる5人のチンピラに向けて、大鎌を構える。
「超速」
〈skill超速を実行します。〉
その瞬間、ウラディンは姫の目では追えないほどのスピードで5人の間合いに入っていき、大鎌を振り切る。
ウラディンの振り切りと同時に5人の首は一気に狩り落とされた。
首の断面からは血飛沫が舞い、とても下品な噴水みたいになっている。
「赤血転換〈せっけつてんかん〉」
〈封器skill赤血転換を実行します。〉
すると、5人から噴き出た血飛沫は、どんどんとロロベルトの方へと吸収されていった。
「あれ、痛くない、傷も塞いでる!?」
ロロベルトは肩を回し始める。
「治ったか!!」
ウラディンの能力だろう。
5人の血をなんらかの回復薬に変えて、ロロベルトに食わしたのだ。
ウラディンNICE!
よし、次の問題と行こう。
この世界において罪人がどのように処理されるのかは知らないが、流石に殺してはまずいだろう。
「ウラディンちゃんよ、あの、なんというか、そのー、殺しても良かったのか?」
すると、先ほどの殺気はすっかり消え、スッキリして気持ちよさそうにしているウラディンは、
「あぁ大丈夫だ。こいつらは多分盗賊の類いだろう。
王国にもこんな奴らはたくさんいる。
この世界では人間に危害を加えたハンターは国外追放か、罪の重さによってはすぐさま処刑だ。」
「そうか、なら良かった。」
「それに、奴らの中に1人だけ、体はついてきてなかったが、ウラのスピードに目で追ってきた奴がいた。
先に仕掛けてなければ、ロロっちは今頃あの世だ。」
これも野生の勘というやつだろうか、
「まぁウラは王族だ、例え善良な市民でも1人ぐらい殺したって、多分許される。」
えぇーー、そんなこと言うーー?
目がマジじゃん。
「嘘嘘、ハァッハァ、ラナプービビりすぎだって、、
それにさっき言っただろ、人を殺す癖はない。
安心せぇい!!」
果たしてこれは信じていいのだろうか?
頼り甲斐はあるが、怒らせると怖い人の代表だ。
まさしく諸刃の剣。
「ウラディンちゃん、ありがとうございます!」
「よいよい。仲間として当たり前の事をしたまでだ。ハァッハァーー!」




