ブラックオークの再来
ウラディンは目を瞑った。
どうやらなにかに集中しているようだ。
「よし、ウラの勘通り、全滅はしてないようだ!
ラナプー!ロロっち!ほいっ、」
ウラディンは姫達の方に手を差し伸べた。
何がしたいのか分からないが、馬車でも1日程かかる距離にある村へ素早く辿り着く術を持っていると見た。
姫達は、ウラディンの手に触れる。
「手離すなよ!朱血対転〈しゅけつたいてん〉!!」
〈封器skill朱血対転を実行します。〉
気がつくと、懐かしいようなそうでもないような、覚えのある空気の匂いがした。
どうやら一瞬で帰ってきたようだ。
姫達がいたのは、、って、えーーー!
昨日までいて脳内に焼きついていたペングラム村の景色が、今となっては全然違うのだが、、
建物はほとんど崩れ落ちていて、ただの屑と化している。
長閑な場所から村全体が炎炎と揺らいでいる焼け野原へと変わっていた。
「朱血対転は、赤い血の通った生き物と自分達の位置を入れ替えることが出来るんだ。
だから行きたい場所に生き物がどれだけいるのかが分かるのだが、、王国で感知できたのはたった5人だけだった。あとは多分、喰われている。」
「もしかしてブラックオークに?」
「そうだ、やっぱり生きていたんだ。」
「しぶといですね、、」
すると、ドンドンドンドンと重みのある足音が遠くから聞こえてきて、その音は次第に大きくなっていく。
なんか前より重そうじゃないか?
それに足も速い気がする。
ドンドンドンドン、、
姫達は、どこからくるか分からない敵に対して、背中を合わせて警戒をする。
そして、燃え盛る炎の中から勢いよく姿を現したのは、、、ブラックオー、、ク、、
いやデカくね、、こんなんじゃなかったやん前まで、、
人を喰って一段と強くなったな。
ブラックオークの放つ圧によって、戦闘モードから死受け入れモードへと移行しつつあったが、
「ラナプー、ロロっち、集中!」
姫とロロベルトはウラディンの鬼気迫る声によって正気に帰ってこれた。
「2人とも、あいつの攻撃躱せれる?」
「あぁ、なんとかな、」
「俺は無理です、、ラナプリンさん、、」
「分かってるわ、担いでやるから、出来るだけ身を軽くしとけ!」
「流石、イケメン!」
女だから、イケメンって言われても胸に響かねー。
ブラックオークは、紫と赤の、なんだっけ?〈合成〉した時に名前が出てた筈、、そうそう紫竜剣だ。それを思いっきり振りかぶりやがった。
とてつもないアジリティ、その黒い巨体からは想像できないほどの身体能力。
だが、
〈ability 適応神経〉
対応できなくもない。
身を軽くする為だろうか、、そんな一瞬で脂肪が燃焼するわけ無いのに必死にその場で足踏みしているロロベルトを担ぎ、ブラックオークから距離をとる。
ゴォォォォーン
鋒が地面に打ち付けられる音が焼け野原と化した村に響く。
あいつは炎だけでなく毒も出していたから、その経験を生かし、今回は結構大袈裟に距離をとった。
だが、それで良かった。
ブラックオークの半径10メートルほどが炎の渦に呑み込まれた。
攻撃範囲も上がっている。
あれ、でもそうか、姫は耐熱があるから別に喰らっても大丈夫なのか?
うーん、でもあの火力は多分無理そうだな。
それに問題はロロベルト、こいつだ。
この村にワープしてからロロベルトは、異常なほどの汗をかいていた。
多分こいつは、あの炎に近づいただけでも灰になる予感。
庇いながら戦うのか、、くそっ
この関係絶対男女逆だろ。
とりあえず手に力を込め、ガトリングを取り出す。
そういえば、ウラディンの奴どこいった?
辺りを見渡してもいない。
まさか、、
あの炎の渦の中で戦っているのか?
キィーンキィーン
聞こえる。
炎の中で、金属と金属が交わる音。
確かにあの中にウラディンはいる。
すると次は、ドォンという打撃音が聞こえた。
途端、炎の渦から弾かれるように出てきたのは、ウラディンだった。
「大丈夫か?」
「大丈夫ですか?」
ウラディンは両手で、ちょうど自分の身長程ある大きさをした、艶のある濃紫に染められた重厚な両刃鎌を1つ構えていた。
なんだこの鎌は。まるでこの鎌自体に魂が宿っているみたいだ。
「うん、大丈夫!
結構強いなあいつ、、へっへ、、」
ウラディンは妙な笑顔を見せた。
姫は察した。
こいつ、絶対本気じゃない。
戦いを楽しんでいるのか?
倒せるなら倒してくれよ、、
「ロロっちは、ただ攻撃を喰らわない事だけを意識して!って武器はどこ?」
「武器なんか持っていませんよ。」
「そうか、仕方ない、、その代わり、素材の採取はしっかり頼んだぞ!
そして、ラナプーは援護をお願い。
とりあえず撃ちまくって、、
その隙をついてウラがトドメを刺す!」
ウラディンが指示をする。
意外と頼り甲斐のある奴だ。
それなのに、過去の仲間は全員死んだのか、、
ブラックオークは炎の渦から再度姿を現す。
「それじゃあ開始!」
ウラディンは、ブラックオークに特攻する。
凄まじいスピードで、あの巨体と互角のスピードで渡り合っている。
あんな鈍重な武器なのに、、見た目はいたって普通の女なのに、、パワーも負けてない。
ウラディンは何かskillを使っているのか?
まぁいい、そんなことより、姫は援護に集中!
何個か弾丸の種類があるが、
「異世界よ、赤・剛圧弾〈あかのごうあつだん〉と黒・剛圧弾〈くろのごうあつだん〉は何が違うんだ?」
ポォん
〈黒・剛圧弾は、赤・剛圧弾に比べて弾威、貫通力、スピードが大幅に上回っています。〉
それならもちろん
「黒・剛圧弾で、自動装填〈オートセット〉!」
〈封器skill 黒・剛圧弾の自動装填を実行します。〉
よし、、うーん?もうちょっと距離詰めるか、、
そっちの方がなにかしら都合が良い気がするぞ。
〈ability有利射程を習得しました。〉
おっ、有利射程、、やっぱりか。
「いけぇーーー!!」
ウラディンと交戦中で動き回っているブラックオークだが、狙えないこともない。頭部へ狙いを定め、トリガーを押す。
〈ability反動耐性〉
〈ability狙い名人〉
ドドドドドォォォォ
あれれ?確かにすべての弾が命中したんだけどな、、
効いてねぇーー
だが、衝撃は感じているようだ。
少しふらついている。
姫の攻撃はウラディンにとって好都合だったみたいで、
「ラナプー、ナイス!!」
とお褒めの一言。
ウラディンは、弾丸に意識がいったブラックオークに対して、一気に距離を詰める。
「飛躍!」
〈skill飛躍を実行します。〉
ブラックオークの巨体を見下ろせるくらいまで高く飛び上がる。
するとウラディンは、筋骨隆々なブラックオークの肉体を手のガードの上からぶっ裂く。
〈封器skill永続吸血を実行します。〉
しかし、思ったよりブラックオークの肉体は頑丈で、ガードした手にちっちゃな切り傷をつけることしか出来なかった。
ウラディンの笑顔は、余裕からくるものじゃなかったのか?
洞窟でぶっ飛ばしてやった頭部も今となっては復活している。
恐らくブラックオークは再生能力を持っている。 直に傷も塞ぐだろう。
それなのに、ウラディンはこちらへとテクテク呑気に向かってくる。
「畳みかけろ!直に再生するぞ!」
「案ずるな、ラナプーよ!
直にするのは再生じゃない、、衰えだ!」
「衰え?」
「そう、永続吸血。
相手につけた切り傷からそいつが干からびるまで血を吸いきるというスキルだ。」
すると、ブラックオークの切り傷からはどんどんと黒い血が溢れ出し、ウラディンの大鎌へと吸収されていく。
まるで鎌自体が大女の口になっているみたいだ。
だが、ブラックオークは片方の手で持っていた剣で、切り傷のついた手を肩から斬り落とした。
やはり知能が高い、、ウラディンのスキルを喰らっただけで仕組みを理解したようだ。
でも、ウラディンは特に焦っている様子もない。
呑気気分は変わっていない。
「やるね、流石ブラックオーク。
だけど、もう遅いよ。充分に血は貰った。」
ウラディンは、大鎌をブラックオークに向けて振りかぶる。
何をしてるんだ?
こんな距離から、そんな接近戦専用みたいな武器が届くわけがないのに、、
「麗血狩り〈うるちがり〉!」
〈封器skill麗血狩りを実行します。〉
すると、ウラディンの大鎌に吸収されたブラックオークの血がどんどんと溢れ出してきて、巨大な黒い鎌状の斬撃へと変化した。
ウラディンの振り下ろしと同時に巨大な斬撃はブラックオークの方へと向かい、頑丈な肉体を裂き刻んでいった。
3個ある心臓に見事命中し、正真正銘ブラックオークの討伐を完了させた。
「よっしゃー、初の討伐。
2人の連携があって、、、間違えた。
3人の連携があって成し遂げた事だ。
これで今日からウラ達は本当のチーム、、仲間だな!わっはっはっはっー!!」
ウラディンは、尖った犬歯を思いっきり見せて満面の笑みを作っている。
多分一瞬、ロロベルトの事忘れてたな、、
恐らく最初からウラディン1人で倒そうと思えば倒せたのだ。
だが、姫達に指示し連携して倒す事で、仲間意識を芽生えさせ、真のチームであることを自覚させたかったのだろう。
なかなか粋なことをする奴だ。
「そうだな、これからもよろしくな!」
「よろしく!
じゃあロロっち、後は頼んだぞ!」
「勿論です、任せて下さい!」
意外と悪くないな、このメンツ。
〜ウラディン〜
〈crown〉鎌使い
〈god crown〉野生
〈封器〉吸血の王カーリーの両刃鎌
〈属性〉血
〈skill〉超速
飛躍
???
???
〈ability〉耐熱
耐炎
耐毒
白兵戦
超筋力
適応神経
???
???
〈封器skill〉朱血対転
永続吸血
麗血狩り
???
???




