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ウラディンという女

 一瞬辞退も考えたが、まぁなんやかんやあって今はロロベルトと一緒にオルデンナイト王国へと向かっている。

 せっかくのヒロインコースを、感情任せで断るのは後々後悔するからだ。

 

 長髭村長とその娘によると、オルデンナイト王国の城門にいる門番に名前とペングラム村から来た事を伝えれば通してくれるとのことだ。

 姫とロロベルトの情報は、既に村長が王族の人へと共有してくれたらしい。


 ではそもそも何故王国は優秀なハンターの派遣を命令したのかというと、この世界の武力至上主義が関係しているのだそうだ。モンスターと戦える強力なハンターの存在は、他国への牽制にもなる為、王国は1人でも多くの優秀なハンターを集めているらしい。

 だから、武力のない小さな村にリソースを割くのは無駄だと判断した王国は、あのような脅迫めいた文を送ったのだと。

 とは言っても、武力だけならロロベルトはなんの役にも立たない。

 バレたらどうするのやら、、

 

 

 

 今、姫達は馬車に乗っている。

 ペングラム村からオルデンナイト王国までは、歩きだと数日かかるほどの距離だそうだ。

 初めて乗る馬車は意外と悪くない!


 ロロベルトは、辺りの草原を見渡して感動している。

 そういえばこいつも異世界に転生してきた自分をすんなり受け入れてたな。

 姫と一緒のタイプか?

 

 「ところでロロベルトよ、お前の前世の名前はなんだったんだ?」

 これから旅を共にするパートナーとして、やはりロロベルトの事を知っておく方がいいだろう。

 

 「橘玲矢〈たちばなれいや〉っていう名前だったんだ。

 親がアニメオタクでね、、昔流行ったアニメの主人公の名前からとったんだってさ、」

 玲矢?昔流行ったアニメといえば、、、

 「もしかして、〈狩の極意〉か?」

 「え、、そうそう、やっぱり知ってんだ!」

 「もちろんだ!あれをこえる名作はまだ出会ったことがないな。」

 姫が〈狩の極意〉でガチ恋をしていたキャラは武藤玲矢だ。

 よりによってこいつが継承者か。


 「実は俺も大好きでさ、、」


 思いの外、話は盛り上がった。

 今までの友達に、姫ほどのアニメマニアはいなかった。だから、毎回姫ばっかりが話す一方的な会話になる。

 だが今は、初めてちゃんと会話をしているって感じがする。

 今日初めて話したのに、まるで幼馴染と話しているかのような感覚にもなった。

 意外と良いぞこの男!


 

 御者は馬の休憩もさせながら、姫達をのんびりと王国へ連れていく。

 気づけば辺りも薄暗くなってきた。

 ロロベルトは、、熟睡しているようだ。

 しかも笑いながら涎を垂らしている。

 姫が関わっている夢でない事を願いながらも、王国へ行った自分を想像してみる。

 まず、オルデンナイト王国がどのようなところなのだろうとか。

 なんか人間離れした肉体の大男とか、人間じゃ無い違う種族がいるのだろうか?とか。

 

 Sランクのモンスターを討伐したとはいえ、それが王国だとどれくらいのレベルなのか?

 まさか、Sランク討伐が入国への最低条件とかじゃないよな?


 でもゆーてSだからな、、最高ランクだぞ。

 そんな強いのがバンバン来られても困るし、、

 

 一応自分の能力をおさらいしておくか、、

 えっと、、結構習得してんなーー。

 1つしかクエストいってないのにな。

 あ、そうそうこれこれ、

 〈ability適応神経〉

 これだよな、、意味わかんねーの。

 適応神経か、、うーーーん?

 

 分かんねっ、、

 なんかゲームのヘルプみたいに分からないところがあれば教えてくれるみたいな機能ないのか?この世界には。

 前世では、AIも発達して、音声認識機能とかもあったぞ。

 「異世界さんよーー、教えてくれーー!」

 ポォん

 うん?なんかきたぞ。

 〈適応神経とは、敵と認識した相手のスピードに対応できる程、自身の反射神経能力が上昇するというものです。〉


 音声認識機能あるんかい、、

 はよ聞けばよかったわ。

 

 ふむふむ、だからあのブラックオークの攻撃を躱せれたのか。

 まーまー強いんじゃね。

 それじゃあもう姫のテンパった時に変な事言う癖がなくなるな。

 「skillとability、封器skillはどう違うんだ?あー、あとgod crownについても教えてくれ。」


 〈skillとは、ラナプリン様の身に常時備わっているのではなく、一時的に使える能力の事を指します。

 封器skillとは、武器が元から備えている能力の事を指します。そして私がラナプリン様の置かれた状況において最適なskill、封器skillを迅速に提案させていただきます。〉


 〈abilityとは、ラナプリン様の身に常時備わっている能力の事を指します。〉

 

 なるほどね、、

 だから、abilityは耐熱とか耐毒、反動耐性など体質や感覚に関係する能力なのか。



 〈god crownとはその人間の素質を表します。

 例えばラナプリン様は、天才肌によって他のハンターよりも一段と早くskillやabilityを習得できます。〉

 

 ほぉー、前世の勉強とか運動能力とほぼ一緒だな。

 

 うーんでも少し引っかかるのが、skillについての説明だな。

 skill系は、姫の意思というよりも、どっちかというとAIの意思が強めな消極的な能力だ!って言っているようなものだな。

 ふむ、それだと姫たるもの情けない。

 

 「skillと封器skillのほとんどは姫の意思で使うから、お前は新しいskillをゲットした時とか、〈合成〉みたいな小難しいやつを提案してくれ!」

 〈承知しました。出しゃばった真似をして申し訳ありませんでした。〉

 

 めっちゃ謝るやん、別に怒ってないんだけどな。

 

 

 

 馬車の心地よい揺れによって睡魔に襲われる。

 zzz...


「ラナプリン様、ロロベルト様、オルデンナイト王国へ到着しました!」

 御者は、熟睡している姫達を起こす。

  

 「ふふぁーー、、」

 「ふふぁーー、、」

 ロロベルトと欠伸が揃う。

 

 さてさてオルデンナイトとはどんな所なのか、、って


 「デカァーーーー!!」

 

 オルデンナイトの入り口である、純白に染められた城門は、高層マンションほどの高さがある。

 ペングラム村がめっちゃチンケに思えてきた。

 城門を超えた国内がやばいぐらい豪華である事はすぐに察せる。

 

 「では、お2人のご活躍を願っています。」

 御者は深々と頭を下げ、社交辞令を述べてから馬を引き返す。

 

 そびえ立つ城門を見上げた後視線を落とすと、門番の2人がこちらを訝しげに見ている。

 

 何か面倒な事になると嫌なんで、姿勢を正し堂々として門番の方へと向かう。

 

 「ペングラム村から来たライム・ラナプリンだ。」

 「同じく、サーベル・ロロベルトです。」

 

 門番の2人は、なにやら手に持っている書類に目を通し、、

 「どうぞ中へお入りください。」

 と迎え入れてくれた。


 門番に誘われ、城門をくぐるとそこはやはりとてつもなく壮大な王都だった。

 アニメで見ていた異世界のTHE 王国って感じの豪華さ。

 案内役が来るらしいので、姫達は城門の付近で待つことになったが、なにやら王都の巨大な建物の向こう側が騒がしい。

 誰かがこちらにきてる模様。


 案内役か?だとしたら豪快すぎないか?

 案内役ってのは執事みたいなお淑やかなイメージがあるのだが、、


 すると、姫達の目の前にある巨大な建物の屋上から、「わっはっはっはっ〜」という笑い声を発しながら、誰かが飛び降りてきた。

 

 「やっぱりウラの直感通りだ!お前達だな、ちっこい村から来た手練れというのは。」

 そう声を荒げながら、サングラスを外す。

 姫達の目の前にドスンという鈍い音をたてながら無事着地したのは、黒髪ロングに、整った顔立ち。

 一瞬は、ただの綺麗なお姉さん。

 だが、豹柄のモフモフとしたジャケットに、短めのスカート、あちこちに着けている牙のようなアクセサリー、それに豪快なこの登場、、

 顔の純白さとは裏腹にどこか野生味を感じる騒がしい女だった。

 

 「そうですけど、そんなことよりあんな高い所から降りてきて、足大丈夫なんですか?」

 ロロベルトが心配そうに問いかける。

 「ウラはハンターだからな!このぐらいどうってことないわ!わっはっはっ〜」

 

 なんだこの女は、、醸し出す雰囲気が野生動物すぎないか、、

 豹の擬人化と話している気分だ。

 

 「おいお前、案内役ってのはもっと上品なものだろ。ちゃんと異世界ルールを守れ!」

 自分でも何故そこにキレてるのか分からない。


 「ウラは案内役では無いぞ。お前達をスカウトしに来た!案内役なんか待ってないで、ウラと一緒に宮殿へ行くぞ!」

 

 「ウラ、と言う者よ。断る!なんかお前は危なっかしい、」

 こういう豪快なやつは大体生き残るが、その部下達はすんなり死んでしまうという固定観念がある。

 

 すると、ウラという女は急に姫に近寄ってきて体をスリスリとなすりつけてきた。

 「ねーねーごめんって。お願〜い、一緒に来てよぉ〜ねぇねぇ〜」

 

 急に甘え出した。さっきの豪快さはどこいった?

 雄豹から雌豹へと早変わり。


 「まぁまぁ良いじゃん、スカウトだよ?絶対待遇良いって、、」

 甘えに屈したのか?それとも本意か?

 ロロベルトは、ウラという女の案に賛成をしている。

 「ほらほらー、ボーイフレンド君もそう言ってるんだし、ねぇお願いっ。」

 「ボーイフレンドでは無い、、」

 とりあえず早く否定する。

 ロロベルトは、少し微笑んでいる。

 

 その間もウラという女のスリスリは止まらない。摩擦で少し体が熱い。

 まぁ、確かにスカウトってのは悪くないな。

 それに、なんか断れば一生このスリスリが続く気がする。


 「まぁ良い、」

 まだ言い切ってないが、ウラは目を輝かせながら、舌を出して「ハァッハァ」と息を漏らしている。

 こんなに感情が分かりやすい奴がいるか?

 もう豹の擬人化どころか、豹そのものに見えてきたわ。

 

 「お前の案に乗ってやる。」

 

 「本当か!?」

 やっとスリスリが止まった。

 

 「本当だ!」

 

 「ヒャッホウー、ヤッタゼェーー」

 ウラは姫達の周りを跳ね飛びながら喜んでいる。

 「よっしゃー!そうと決まればついて来い!

 あとウラのフルネームはウラディンだ。

 気軽にウラディンちゃんって呼んでくれ!!」

 

 この先は、大分騒がしくなりそうだ。


 

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