まさかの事実
居合切りの余韻が残っている黒オークは、振り返るのに少々時間を要している。
よし、やっと振り向いたか、ノロマめ!
黒オークの頭部に目掛けて、トリガーを押す。
ドドドドドドドドドドォォォォ
物凄い重低音。
姫は、反動でどんどん後退していく。
連射するとなったら、目標に狙いを定め続けるのは至難の業だ。
最後の方はほとんど宙を撃っていた。
だが、最初の数撃は当たったようだ。
黒オークの頭部は、破壊され、何とか形を保っているゴッツイ体は、膝から崩れ落ちた。
よっしゃー倒したぜー。
案外余裕だったな。
帰宅用のゲートが現れる。
にしても、この剛圧弾っていうのはヤバいな。
オークの頭部を貫くどころか、背景の岩壁までも貫き、その貫通痕からは姫達が最初にいた入り口が見えるほどだ。
〈ability反動耐性を習得しました。〉
〈ability狙い名人を習得しました。〉
きたー、またなんか習得しちゃった、、
チッ、相変わらず抽象的だが、今回も何となく理解はできる。
「ゴホォゴホォ」
ロロベルトは、未だに咳き込んでいる。
「おい、いつまで寝てんだ、、素材集めはお前の仕事だろ、、、おい、ロロベルト?」
返事はない、なんか様子おかしくね、
用心深く近づくと、
「おい大丈夫か?」
ロロベルトは、身体の至る所が紫っぽく変色していて、吐血をしている。
毒か?さっきのオークの攻撃が当たってたのか?
回復薬とかないぞ、
でもなぁ、前世の恨みで見殺しにしとくという案も、、
クソっ、流石の姫でもそれは出来ない。
まぁ、こいつは素材集めてくれるし?
助けてやってもいいかな?
ってどうやって助けるんだよ、、
〈skill共有を実行しますか?〉
おっと、さっきの意味わからんやつか。
共有、、、とりあえず
「実行!」
〈対象サーベル・ロロベルトに耐毒を共有しました。〉
そういう事か!自分の能力を付与できるって事ね。
「ゴホォ、、ラナプリンさんありがとう、、ゴホォ」
「これで貸し2つになったな。」
世話の焼ける奴だ。
さっきまでの苦しみが演技かのように、すっかり元気になったロロベルトは、黒オークの素材集めを始めた。
「こんなもんかな?どうこれ?」
オエッ
「何でまたそんな余裕なんだよ、、、」
涙が出てきた。
オエッーー
〈ブラックオークの皮膚、ブラックオークの筋肉、ブラックオークの心臓、紫竜剣〈シリュウケン〉のカケラを使って弾丸を作りますか?〉
「作る!」
〈ブラックオークの部位、アイテムから、
黒・剛圧弾
白・紫竜弾〈炎〉
白・紫竜弾〈毒〉を生成しました。〉
めっちゃ作るやん、、それに炎とか毒とかちゃんと異世界やってるって感じだな!
〈黒・剛圧弾、その他2つのコピーを実行しますか?〉
「もちろん、実行!」
着々と弾丸も増えてきているな。
すると、屍となったブラックオークの地面からいきなり魔法陣のようなものが現れた。
そして、1部位も残さずどこかへ消えてしまった。
どこに行ったのか?
姫達は村に帰る為、ゲートを潜った。
ゲートを抜けた先は、クエストにいく際に潜ったゲートの場所だった。
姫達の前には、白髪に長い髭を設えた長老みたいな人と、モンスター討伐の受付の女がいた。
なにやら、2人は涙ぐんでいる。
だが、目尻と頬は上がっていて、嬉し涙である事が窺える。
「奇跡じゃ、、よくぞご無事で帰還なされました!」
長老が、姫の肩を揺さぶりながら、討伐の帰還を喜んでくれたが、ちょっと触るのはやめて欲しい。
「触るな、、」
「ああこれは申し訳ありません。」
長老は深々と頭を下げる。
「すいません、この人は私の祖父でございまして、ここペングラム村の村長なんです。」
受付の女が姫を宥める。
「なんで、そんな偉い人が俺たちの帰還をそんなに喜んでるんですか?」
姫が疑問に思っていたことを、ロロベルトが代弁するかのように質問する。
、、、
少し間が空いて口を開いたのは長老だった。
「実はですね、、、今我々がいる国を牛耳っているのは、オルデンナイト王国という所なんです。
ここペングラム村は、その国の傘下みたいなもので、、
そして、丁度一月程前、オルデンナイト王国の王族の方から、
〈一月以内にペングラム村から優秀なハンターをこちらに派遣しないと、用済みの区域として貴様らごと村一帯を排除する。〉
という、文面が送られてきまして、、」
とんだ獰猛な王族だな。
「大変情けないのですが、このような事実を村人に言う勇気はありませんでした。
我々は、パニックになりました。どうしたら一月という短い間で優秀なハンターを見つける事が出来るだろうかと、、
この村の現役ハンターが討伐可能なモンスターの最高ランクはBランクです。これだと王国の言う優秀なハンターに値しない事は、重々承知していました。
そこで無礼ながら、この村に転生なさり、ハンターの称号を授かった方に、Dランクのモンスターと嘘をついて少数でクエストに行かせ、Sランクのモンスターを討伐させにいく事にしました。」
はぁ?
「もし生きて帰って来られたのなら、その方が我々の希望であり、優秀なハンターなのではないかと、、
しかし、一月以内に転生して来られたハンターの方は、クエストに行ったきり誰1人としてこの村に帰ってくることはありませんでした。」
やってる事やべーぞこのジジイと女。
文頭に「無礼ながら」と一言添えたからといって、内容のエグ味が薄まる事は無いぞ。
でもまぁ、そうなると姫達は優秀ということになる。
転生先輩達には悪いが、あまり気分は悪くないぞ。
「じゃあ俺たちは、優秀ってことですね、、ハァッハァッーー!」
ロロベルトも姫同様、有頂天になっている。
「Sランクレッドオークを倒したお2人なら、きっと王国の方にも認めてもらえる筈です。」
受付の女は、期待を込めた目を輝かせながら、姫達に語りかけてきた。
というか、どちらかというと褒めて欲しいのはブラックオークを倒した事なのだが、、
「どうか、王国へ行き私達を救っていただけないでしょうか?」
完全ヒロインコース来ました!
「もちろん行くぞ!」
「ありがとうございます!」
「手続きでもしてる間、コーヒーでも頂こうかな、」
調子に乗って、苦手なコーヒーとか言っちゃった、、
「俺はじゃあ、ブラックコーヒーにしようかな、もちろん砂糖とミルク無しでね!」
やはりロロベルトもテンション爆上がりだ。
イキリ慣れてないのか、ブラックコーヒーの砂糖無しとか言う訳分からん注文をしている。
「あっ、もう手続きは済んでますので、今すぐオルデンナイト王国の方へ行っていただきたいのですが、、」
恥ずっ、調子乗った罰だな。というか、手続き済んでるって、、なんで承諾する前に勝手に手続きしとんじゃ。
「それと、そもそもブラックコーヒーには砂糖とミルクは入ってませんよ。」
おい、やめたってくれ、頑張ってイキったんだから。
横を見るとロロベルトの顔が、梅干しのように赤くなっている。
ってかこの女も少しは合わせてくれよ。
やっぱ王国行くの辞退したろうかな、、




