別れ
「目的は達成したぁ!魔王様よ、私はやってみせました。魔王様ぁー!!」
スライムのエイム国王は、半分になった体で、勝利を讃えるかのように大声で叫ぶ。
グリフィエンはこれ以上国王を侮辱するなと言わんばかりに、まだ息があるエイム国王に化けたスライムを片手で捻り潰す。
命の核が潰されたスライムは、蒸発するかのように原型が崩れていき、跡形もなくなった。
この場、オルデンナイト王国にいる全てのハンター、一般民は唐突な事態に戸惑っている。
3箇所のゲートから次々と溢れてくるモンスター。
色は青、赤とそこまでランクは高くないが、一般民からすると、人を屠れるモンスターであることには変わりない。
ここにいるトリビアのハンター、ベロアやグリフィエン、キジスは気絶しているが、先程の威勢は無くなり、ただ辺りを見渡すことしかできていない。
普段こちらが攻めに行くモンスターから、今は攻められている訳だから。
「お前さん達の国でも、危ないんじゃないか?結界を解くから早急に自国に帰る事を勧めるが、」
年の功で現状を誰よりも早く飲み込んだハヴレイン国王が、ベロア達に自国の防衛の心配をする。
国境の結界は破られてもすぐに再生する。
すると、形相を変えたベロア、グリフィエンは白目で泡を吹いているキジスを担ぎ、侵攻してきた方向へと帰っていった。
他のトリビアのハンターもそれに続いて帰っていく。
「この戦争も、そしてモンスターがこちらの世界にやってくるように仕向けたのも、全てモンスターの意図だったんだな。」
ジャックはジークとフリードの首根っこを掴んで、冷静にこの状況を鑑みる。
姫はもしかしたらロキの能力が関係しているのではないかと疑ったが、それを言い出せずにいた。
すると、
「恐らく〈神の勇者〉が一堂に大勢会したせいで、何かしらの封印が解けてしまったのだろう。」
と、ハヴレイン国王がつぶやく。
思い返せば確か1度目の地震も、宮殿の会議。
〈神の勇者〉は姫とウラディンとパトリック、、
会議室に集中していた。
とは言っても、サンドワーム討伐の時はなんともなかったから少し不気味に感じるとこもあるが、、
姫達がこの世界に転生してきてから、この世界は混乱の渦に巻き込まれているようだ。
すごい重大な責任を感じる。
「とりあえず、動ける者はモンスターの処理に向かってくれ。
話はその後だ。」
ハヴレイン国王が姫達に指示を出す。
ウラディンは満身創痍という言葉では補えないほどの重症を負っている。
吐血だ。
グリフィエンと同じ〈霊化〉を使っていたのだろう。
ハヴレイン国王とその護衛達は、国内にいるハンターに指示を出す為、そして、国境の結界を解く為、宮殿へと向かった。
姫を含む今動けるハンターは、それぞれが散り、モンスターの討伐、一般民の保護へと専念した。
♦︎
ランクが高くなかったので、モンスターの討伐は早く終わった。
トリビアでもそして、他の八国、バシューカッツ王国でもやはりこの混乱は起きていたらしい。
各々の国のハンターがモンスターを早急に駆除したが、どの国でもこの事態に驚かない者はいなかった。
事態は収まり、後日姫とロロベルトはハヴレイン国王が待つ宮殿へと呼び出された。
最初にウラディンに連れられ、「ペングラム村から来た」と挨拶に行った時を思い出す。
「悪いの、わざわざ来てもらって。」
「いえいえ、で、どうしたんだ?」
「単刀直入に言うと、ラナプリン、ロロベルト、2人をこの国に置いておく事が出来なくなった。」
あまりの事実に数秒間、姫達は国王を見つめることしかできなかった。
だが、姫がいなければこんな戦争は起こっていなかったかもしれないし、ましてやモンスターが侵攻してくる事も無かったかもしれない。
真実が見えない故に断定はできないが、
でも覚悟はできていた。
ここに来る前に、大体何を告げられるか予想はついていたし。
「分かった、元はと言えば姫が引き起こした戦争だ。
姫が攫われなければこんな事にならなかった。
ただ、ロロベルトは関係がない、こいつはなんとかならないか?」
「いや、ラナプリンさん1人のせいじゃない。
俺が助けれなかったせいでもある。
追放されるなら俺はラナプリンさんに同行する。」
ロロベルトを巻き込むわけにはいかないが、姫の頼みは聞いてもらえない。
それに、いくらごねようが、もう王族内の会議での確定事項らしい。
「すまんのう、いうてもオルデンナイトの為に戦ってくれた同士じゃ。
それでもやはり身内がうるさくてのぅ。」
「国王が謝る事ではないぞ。
こちらこそすまなかった。」
ロロベルトも同様頭を下げる。
この部屋内で、3人中3人が頭を下げているという奇妙な状況を作り出してしまった。
「何かあったらすぐに力になる。
いつでも連絡してくれ。」
この国王は寛大だ。
この国に転生してきてよかった。
頼れる仲間に出会えたし。
まぁ国王以外の王族達は、姫達に殺気プンプンだろうが。
宮殿を後にすると、ゼムライ、ジーク、フリードが姫達を待っていた。
ウラディンの姿は見えない。
「どっか行っちゃうのか?」
「もう遊んでくれないのか?」
ジークとフリードは涙目を浮かばせなが、姫とロロベルトに視線を往来させる。
「すまんな、」
姫は返す言葉もなくただ謝ることしかできない。
「またいつか会えるさ、永遠の別れじゃないからな!それまでに俺たちを唸らせるほど強くなっていてくれよ。」
と、ロロベルトが偽りの威勢でジークとフリードに返す。
こういう時のロロベルトは頼り甲斐があるな。
ジークとフリードは涙を拭き、「分かった!」と溌剌に親指を立てた。
「すまんな、ゼムライ。」
ここからは大人の会話に入る。
「気にするな。ロロベルトが言った通り永遠の別れじゃないからな、頻繁に手紙でやり取りしよう。」
「ありがとな、」
「あの、ゼムライさん、ウラディンちゃんは?」
ここで気になっていた事をロロベルトが聞く。
「行くぞっていってもゆうこと聞いてくれなくてな。
家に引きこもっている。
相当ショックなんだろうな。」
「そうか、、」
気まずい空気が流れる。
♦︎
ウラディン、ゼムライ、ジーク、フリードはジャックのギルドに正式に引き取られる事になったそうだ。
まぁウラディンはその事について納得がいってないらしいが。
ジャックは姫達が追放されることに関して、「俺の仲間だ、ふざけんな」と、抵抗してくれたらしいが、激怒する王族達相手には、無意味な足掻きだった。
姫達は城門に着くと、門番に名前を伝える。
重厚な門がギィーーンと開く音を身にしみながら、ここを去る憂鬱感が襲ってくる。
「世話になったな、それじゃあ。」
「お世話になりました。皆さん元気で!」
ロロベルトと一緒に、見送りに来てくれたゼムライ達に礼を伝え、門に向かおうとすると、なにやら王都内が少し騒がしくなった。
建物から建物へ飛び移るような足音。
その足音は少しずつ近づいてきて、
「ばばぁぷーーーー、ぼぼぉっちぃーーーーー。」
と王都内にこだまする泣き声。
姫達の目前にある建物の屋上から飛んできたのは、ウラディンだった。




