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姫はガトリング使い  作者: 木村裕貴
冒険編
32/36

チカ

 「ジャック1人だけでか?」


 ロロベルトの発言は寝耳に水だった。

 

 「うんそうだよ。」


 あの化け物のブラックグリフォンをジャック1人で倒したと言うのだ。

 でも確かに、ジークとフリードを人質にした目の狂った殺人鬼みたいなやつをワンパンで気絶させたりとかしてたしな。

 あくまで感覚だが、あの殺人鬼も只者じゃなかった。なのに、そいつを一撃。

 国内1のハンターというのは嘘ではなかったんだな。


 「何でそれを黙っていた?」


 「やっぱ気になるか。

 今度もしジャックさんに会っても、内緒にしといてよ!!」


 「勿論!」


 とは言ったものの、内容によってはジャックお咎め祭りだかな。


 「報酬金だよ、

 俺とかラナプリンさん達の報酬金もジャックさんとデラマルスさんが2人で持っていったんだよ。

 もし報酬金が振り込まれてなくても、緊急脱出したって言ったら疑わないでしょ?」


 「いっても他人の口座だろ?

 横取りとかできるのか?」


 「それはデラマルスさんがうまいことやったっぽいよ。」


 そういや、あいつ最初自己紹介で裏の仕事が得意とか言ってたな。

 合点がいく。

 でも、そうなるとこれは咎めないわけにはいかないぞ。

 ロロベルトにはすまないが、次会ったら容赦しない。

 

 ロロベルトは、この報酬金2人占めを口外しない代わりに、【地廻竜の化身】というSkill習得のアドバイスをジャックに貰ったらしい。


 どいつもこいつも現金なやつだ。



 この世界の人間は金に貪欲な奴が多い。

 それに今気づいたけど、ウラディンの飯代、まだ一銭も返してもらってない。

 催促するの忘れてたな、、



♦︎

 

 所持金65000プリンプリン

 意外と持っているが、村とか商業屋がないので、使い所がない。

 

 昨夜、川沿いで集めた木材やら葉っぱやらを上手く工作して、お手製の簡易な寝床を作った。

 オルデンナイトの激安ホテルよりも断然寝心地は悪かったが、野宿と考えると悪くはない。

 モンスターが攻めてくるようになってから、国のあちらこちらに魔物がいるらしいが、ここら辺にいる気配はないので安心して眠りにつけた。

 川のせせらぎ、虫の鳴き声をASMRにしながら。

  

 「ぷはぁーーー」


 朝は大欠伸から始まった。

 野鳥の鳴き声が心地よい。

 寝返りするたびに葉っぱの鋸歯ぎょしが首やら体に突き刺さってくる。

 おかげで身体中窪みだらけだ。


 ロロベルトはもう既に起きていた。

 姫同様、葉っぱの鋸歯にやられた模様。

 首を掻きながら、川で捕まえたであろう魚を串焼きにしている。

 

 「おはよう」


 「あぁおはよう、、それ朝飯か?」


 「そうそう、意外とこの川、魚が多くてさ、

 食べれるやつか分からないけど、まぁ焼いたら何とかなるっしょ。」


 香ばしい魚の香りがしてきた。

 前世の日本を感じさせるような、和の匂い。

 たまには恋しくなるな、日本の風景も。


 ロロベルトは焼き魚奉行なのか、真剣に焼き加減をみながら、ここぞというタイミングで火から放す。

 姫は適当に食べれそうなやつから取って行き、口に放り込む。

 美味い!

 身はほろほろで、皮もパリッとしている。

 ただ塩気は抜群に無い。

 まぁ勿論そうだよな。

 村によったらまず塩を買うことを優先しよう。

 

 焚き火のメキメキ音をbgmにしながら、無塩朝食を嗜む。


 「そうだ、チカにも食わしてやらないとな。」


 ロロベルトはそう言って、【地廻竜の化身】を繰り出す。

 ゴォォォォォーーンという轟音が辺りに響き渡るが、特に誰もいなさそうなので迷惑はかけてないだろう。

 グリフィエンの矢に貫かれた体は、もう既にほとんど塞がっている。傷口周辺には矢痕が痛々しく残っているが、、

 それにしても凄まじい治癒力である。


 「勘弁してくれよ、朝からうるさいわ。

 それにそいつ、Skillだろ?

 食事とかいるのか?」


 「分からないけど、なんか愛着湧いてさ。

 親心みたいなやつ。

 いっぱい食べさせてやりたいんだ。」


 「チカ」というのは、地廻竜ちかいりゅうだから、頭2文字をとってそう名付けたそうだ。


 チカは、川の水ごと泳いでいる魚を豪快に丸呑みする。

 川の水の体積が半分ほどになったところで、丸呑みを一時停止した。

 にしてもデカすぎるな。

 こんなやつがロロベルトのどこに眠ってるんだよ。

 ずっと居座られても鬱陶しいし。


 「チカはもうちょっと小さくならないのか?

 幅とりすぎだろ。」


 「それは思ってたんだけどさ。

 小さくするSkillとか無いし、どうしよう。

 おーいチカー!!

 もうちょっとコンパクトになれーー!!」


 ロロベルトはチカに向けて両手を口に当てて、メガホンで指示するかのように、命令する。


 すると、

 チカは、キュキューーーーと全身を萎ませ、野鳥サイズへと縮小した。

 先の筋肉質な肉体から、茶色のプニプニした肌質になっている。


 「出来るんかい」

 「出来るんかい」


 姫とロロベルトの声がハモる。


 そういう事なら助かる。

 あんなにでかいのをしょっちゅう召喚してたら、目立ってしょうがない。


 「チュッチュッーー」


 それに小型になったら結構可愛い!!


 さっきまで小さく見えた魚が今となっては、ギリギリ手で御している巨大魚に見える。

 拙い所作だが、一生懸命手で魚を押さえて、口に頬張っている。


 「可愛いなこいつ。」


 「本当はかっこいい方がいいんだけどね。」


 「チュッチュッーー」

 

 「こんなに可愛いなら、Skill解除せずにずっと出しといてやれよ。

 ほら今もシャバに出れて嬉しそうな表情してるし。」


 「えー、この表情は魚が美味しいからじゃないの?」


 「そうとも取れるが、少なくともお前の懐に封じられているよりかは楽しいと思うぞ。」


 旅のお供にはピッタリだ。

 癒しにもなるし。


 「まぁいいけど。」

 

 ロロベルトは自分のSkiiがかっこいいではなく可愛いのに不服そうだが、渋々姫の提案を受け入れた。



 

 朝食を済ませ、村探しの準備、荷物まとめなどに取り掛かっていると、すぐ近くで甲冑の軋む音と何人かの足音が聞こえてきた。

 グラデーションのように音が大きくなっている事からして、こちらに向かってきている模様。


 モンスターか?


 いや、違う。

 モンスターはもっとまばらで雑然とした足音じゃないか?思い込みかもしれないけど。

 それに甲冑を着ているモンスターは姫の脳内ストックには確かいない。

 まぁ未知の世界だから何がいるか分からないが。


 足音はどんどん迫ってきており、約10メートル先の木陰から聞こえてきたのは、


 「ここら辺だよな?」


 「あぁ確かに」


 モンスターではなく人の、そして男の野太い声。

 やはり人間。


 「念の為、チカしまっておけ。

 他人からすると、モンスターと間違えられてもおかしくないからな。」


 「分かった」


 ロロベルトはSkillを解除しようとするが、何かしら手こずっている。

 

 「何でだろう、Skill解除できない。」


 「は?何でだよ?」


 「なんか押し戻される感覚があるというか、」


 男数人はもうそこまで迫ってきている。

 ピンチ!!


 「とりあえず隠せ!」


 ロロベルトは背後にチカを隠した。

 チカはロロベルトに抱きつくように背部にしがみつき、何事??とでも言わんばかりの表情をしている。


 ようやっと姿を現した男達は、音通り甲冑を着ていて、片手に半身程の長さをした剣を持っている。

 見た目からして一般人では無い。

 ハンターに違いない。

 恐らくチラッと聞こえてきた会話の内容からして、最初に巨大サイズで現れたチカに気付いてこちらに向かってきたんだろう。

 

 

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