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姫はガトリング使い  作者: 木村裕貴
王国編
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絶体絶命のアナウンス

 パトリックは唯一形を保っているハッシュに手を合わせる。

 

 今までよくやってくれた。


 すると、潰されたレーベンの方向から上半身が裸で、黒髪ウルフカットの男がゆっくりとマイペースに歩いてきた。

 足元がグラグラの千鳥足で、口に手をやり大欠伸をしている。

 こんな昼間っから片手に缶ビールを持っている。

 全体的にだらしないというのが第一印象。

 

 岩に潰されたレーベンの周りを1周してビールを流し込む。

 そして、パトリックの方へ視線をやり話しかけた。


 「こいつを殺ったのはお前か?」


 「あぁそうだが。誰だ君は?」


 「俺はカースっつんだ。

 レーベン達の気配が消えたからまさかと思って来たら、やっぱ死んでたか、」


 パトリックは剣呑な目を浮かばせ、すぐさま臨戦態勢をとる。

 このカースという男、ジャックが警戒した2人のうちの1人である。


 「待て待てー。俺はお前と戦いに来たんじゃない。

 戦いなんてめんどくせーからな。」


 「部下が殺されても何にも思わないのか?」


 「こいつら俺の言うことも碌に聞かずにこうなってしまったんだろ?

 自業自得じゃあねぇか。

 俺はどんなに可愛い部下が死のうとそれが自業自得だったら何の情もわかねぇのさ。」


 あまりに非情だな、いくら自業自得でも可愛い部下なんだろ?情の1つや2つ湧いてもいいだろうに。

 

 「そうか、じゃあ転じてマクロの視点で質問する。

 何で君たちは今こうしてオルデンナイトに侵攻してきている?」

 

 俺はハッシュの仇であるレーベンを殺して真の冷静さを取り戻した。

 会話ができなさそうな相手でもないし、侵攻の目的を聞く。


 「それはなんかおたくのハンターさんがエイム国王に攫われたかとかいうハッタリを吹っかけてきたかなんか知らんけど、そんなとこだろ?

 後手より先手に回れとの事。

 それで強制招集。

 勘弁してくれよな。」

 

 ハヴレイン国王がトリビア王国へ話をしにいった事が宣戦布告として捉えられたのだろう。


 「オルデンナイトの見解では、攫われたのはハッタリでは無く事実だと見ている。証人もいるしな。」


 「どうなんだろうな、エイム国王がそんなことするとは思えないけど。

 まぁ俺にとってはどうでもいいわ。

 今日はゆっくり家で寝るって決めてたんだけどな、、はーぁ。」


 「俺とやらないのか?」


 「だから言ったろ、やらねぇよ。

 それにお前強いだろ。

 面倒ごとはごめんだ、それじゃあな。」


 そう言ってカースは来た方向へとふらふら帰っていった。

 

 なんだあいつの落ち着き具合は。

 会話から察するにレーベン率いる魔女達のギルド長だろう。

 俺の力量もすぐさま感知した。

 恐らく〈神の勇者〉。

 武器を持ってるようには見えなかったし。


 謎の圧を放つカースという男は、千鳥足でさえ何かの牽制に見えるほど隙のない不気味なやつだった。


 

♦︎ラナプリンの戦に戻る


 グリフィエンはの2発目の矢が姫に直撃する手前、屈強な体で担がれる感覚があった。


 見上げると姫を担いでいたのはゼムライだった。

 あの鉄の体のゼムライでさえ、背中には矢の擦り傷で、流血が見られる。


 ゼムライの後ろにはロロベルトとジークとフリードもいる。

 ロロベルトは、姫が逃げずに戦うという事が分かっていたのですぐさま国王達を安全区域に避難させ、助っ人のゼムライを叩き起こしに行っていた。

 ジークとフリードは連れてくるつもりはなかったらしいのだが、無理やりひっついてきて今この場にいる。

 

 「コールドドラゴンを1人で倒したラナプリンがもうお手上げか?」

  

 ゼムライは姫を下ろしながら相手の力量を測る。


 「情けないけどな。

 あいつが急に仁王立ちで沈黙決めたら、別人みたくなってな。」


 「多分、侵蝕だな、

 やっぱり他国の連中も使えたのか。

 そうなると厳しいな。」


 すると、ジークとフリードにしがみつかれているロロベルトが、


 「俺のチカがもしかしたら戦えるかもしれないんだ。」

 と案を出す。


 「チカ?」


 「あそこにいる竜のことだよ。」


 あの大きい竜か、確かにあれは強そうだな。

 そうこうしているうちにグリフィエンは3発目の矢を構える。


 「ロロベルト頼んだ。」


 「任せて、行けチカ!」


 ロロベルトは指示をすると、宙を舞っていた竜はグリフィエンに向かってハヤブサのごとく急降下し、飲み込むように大口を開けて向かっていく。


 グリフィエンは馬を巧みに操り竜の特攻を躱す。

 だが、竜の尻尾がグリフィエンを捕らえると、そのまま宙へまた飛んでいった。


 姫達の前には馬主のいない黒馬が取り残された。

 

 グリフィエンは尻尾に巻かれた状態から体勢を整え、弓を構える。

 ロロベルトの地廻竜とやらは思ったより優秀で戦闘センスも抜群に長けていた。

 グリフィエンの弓を巧みに躱していく。

 だが守りに意識を巡らせすぎたせいで、竜の尻尾の力が抜け、グリフィエンは宙に放たれたが、黒馬を呼び地面に衝突する前に乗馬して落下ダメージを消滅させた。


 そして威力とスピードが上がった弓から放たれる矢はとてつもない衝撃波を放ち、竜の巨体を貫通していく。


 地上に落下していく竜に対して、ロロベルトは着地する前にSkillを解除して地面への落下を防いだ。


 グリフィエンは馬を走らせ姫達の前にはまた戻ってくる。


 「黒馬双矢ノクティアスアロー


 【黒馬双矢】


 〈黒馬双矢〉によって、グリフィエンの乗ってる黒馬の口が大きく開く。

 この黒馬も弓矢のようになっていて、口から矢が連射されるようになっている。

 騎手のグリフィエンも自らの弓を引く。

 あんなのが2箇所から一気にくるのはまずい。

 竜はいないし、ゼムライも背中の流血によって上手く立てていない。

 だが、辺りを見渡して気づくとジークとフリードの姿がない。

 そりゃ逃げるのが正解だわな。

 この場にいる全員がまともに動けるならみんな逃げているだろうし。

 絶体絶命のピンチ、、そう思った瞬間、


 「おらーー!!」

 「死ねぇー!!」


 声が二重になって聞こえきた。

 叫んだのは、ジークとフリードだった。

 逃げてなんかいなかった。

 姿をくらまし、攻撃が通るチャンスを虎視眈々と狙っていたのだ。

 迫り来るグリフィエンの両サイドから2人は亜毒を纏わせた短剣を黒馬に突き刺す。

 刃先が黒馬の体に傷をつけると、直ちに爆発が起こる。

 ボォンボォンッ


 グリフィエンは少しバランスを崩している。

 黒馬は自身の体の爆発に驚いたようで、ひどく興奮している。グリフィエンが御しきれないほどに。


 そこの隙をついてジークとフリードは間髪入れず次の攻撃に入る。

 グリフィエンに剣を向け、斬りかかるが重厚な甲冑に刃が通るわけもなく、カンっと弾かれる。


 圧に押されたジークとフリードは態勢が崩れる。

 

 「子供を殺めるのは私の正義では無い。」


 グリフィエンはそう小声で呟き、弦を引くのではなく、弓自体でジークとフリードに攻撃をし、遥か向こうまでぶっ飛ばす。

 

 そして、邪魔がいなくなったグリフィエンは馬を宥め、落ち着きを取り戻すと、再度こちらに向かって弦を引く。


 もう終わったと思った。

 すると、

 

 「あ、あ、マイクチェックマイクチェック、よし。

 えぇオルデンナイトに侵攻してきているトリビア王国の皆様にお知らせがあります。」

 

 王都内にアナウンスが響き渡る。

 ジャックの声だ。

 

 「この戦争が無意味だと証明する為のちょっとしたショーを行いますので、気になる方は、、というかトリビアの皆様は必ず宮殿へ集まって下さい。

 それでは!」


 プツンっ

 アナウンスが切れる。


 グリフィエンはしばらく考えた後、戦闘態勢をやめた。

 

 「さっきのアナウンス、ただの時間稼ぎとは思えないな。まさかな、、

 確認は後回しだ。

 とりあえず今は宮殿へ行く。」


 グリフィエンは侵蝕状態を解除すると、鎧と黒馬はスゥーと消えていった。

 「ゴホォッゴホォッ」

 大病でもあるかのような吐血。

 

 侵蝕の反動か、、

 まぁあんなに強くなられたら代償はつきものだよな。


 弓を杖代わりにしながらも態勢を整え、

 〈転解ヴァーリー〉で宮殿の方へ弦を引いてワープした。


 

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