敗陣
ワイルディンズの強さを証明するべく、姫達は意を決して臨戦態勢に切り替えた。
こちらがどれだけ駄々をこねようが、ジャックとデラマルスはサポートのサの字も態度に表さない。
「封器解放!」
3人の声が揃う。
最初から全開で行く。
○○○
やばいな、想像以上に強い、、
弾丸も大翼の風圧で跳ね返されてしまい、グリフォンの体に届かない。
おまけに鼓膜が破れそうになるほどの咆哮。
「物質貫通!!」
〈封器skill物質貫通を実行します。〉
風も物質である空気の流れ。
空気ごと貫通してやるわ。
黒・氷翼弾はグリフォンが生み出す暴風を貫通し、鎧のような体に被弾する。
よっし、当たった!
氷翼弾が被弾した箇所からどんどんと氷が生み出されグリフォンの体を蝕んでいく。
だが、グリフォンは鉤爪を器用に使い、凍化した自身の体を砕いていく。
やっぱ効かないよねぇー。
姫の攻撃を嫌がったのか、グリフォンはこちらに目掛けて降下してくる。
〈ability適応神経〉
あっぶねぇー、これ喰らったらひとたまりもないな。
空からちまちまと攻撃してきたグリフォンが今初めて地上に足をつけた。
〈skill地廻竜の瓦解を実行します。〉
ジャック、デラマルスと一緒に後退していたロロベルトがすかさずskillを撃つ。
地面の草原がグリフォンの体を覆い、地中に埋めることに成功した。
姫達はすかさず攻撃を入れる。
氷が効かないなら、毒ならどうだ。
〈封器skill白・紫竜弾〈毒〉の自動装填を実行します。〉
〈封器skill物質貫通を実行します。〉
地面の草原を貫通し、地中に埋まってもがいているグリフォンに猛毒をお見舞いする。
だが、グリフォンが放つ威圧によって草原は蒸し返され、地上にパワーで上がってきた。
黒い体の所々が毒によって藍色に薄くなっていて、動きが少し鈍く感じる。
「鎌鳴らし!」
〈封器skill鎌鳴らしを実行します。〉
「武陣大兵殺!」
〈武器skill武陣大兵殺を実行します。〉
暴風によって間合いを詰めれなかったウラディンとゼムライがこの千載一遇のチャンスを逃さない。
ウラディンは大鎌を両手で構え、封器skill鎌鳴らしでグリフォンに飛び掛かる。
まだ傷が癒えていないにしては、常人離れした身体能力だ。
ゼムライもブラックコールドドラゴンに放った一点集中型の武器skillを叩き込む。
姫は2人の間を縫うようにして黒・剛圧弾を連射する。
だが天災の如く薙ぎ倒す暴風によってこの猛攻は弾かれてしまう。
姫の弾丸は物質貫通によって直撃したものの、グリフォンは軽傷で済んでいる。
グリフォンは血走った目で翼を広げると、反撃態勢をとった。
接近していたウラディンとゼムライは、蝿の如く風によって地面に叩きつけられた。
「ウラディンちゃん、ゼムライ!!」
すると瞬きをした瞬間、目の前にはグリフォンの翼で視界がいっぱいになった。
やばい、速すぎる、、
○○○
気がつくと、姫はベッドの上で仰向けになっていた。
近くの丸椅子には心配そうな顔を浮かべているロロベルト。
ジャックとデラマルスは窓の外を見ながら話している。
「大丈夫?ラナプリンさん!」
「どこだここは?」
「王都内にあるハンター専門の治療室だよ。」
治療室か、、周りのベットを見てみると姫と同じように寝ているウラディンとゼムライの姿。
そうか姫達は負けたのか、、
あの鳥野郎に。
ん?待てよ、、
「どうやってここに帰って来れたんだ?」
「あーそれは、、」
ロロベルトが言葉に詰まっていると、、
「おう、起きたか、」
と、ジャックがこちらを見下ろす。
「新参者には知らないだろうが、ハンターには緊急ゲートっていうシステムがあってな、、
もしもの時にはターゲットを討伐できなくてもそのゲートで帰れるんだよ。」
それを早く言えよ、はなから無理だったろあの鳥は。
「まぁでも、お前達の強さは分かった。
V王冠相手によくやったよ。
俺たちのチームで護衛してやる。」
このザマで認められたわけか、
あまり腑に落ちないな。
「とりあえずしばらくは休め、そんなんじゃI王冠にも勝てないからな。」
そう言ってジャックとデラマルスは治療室を後にした。
「何だよ偉そうに、、そもそも推奨人数的に無理だろ。お前は勝てるのか?って話だよ。そう思わないか?ロロベルト。」
そう問いかけると、ロロベルトはむず痒そうにしながら、
「ラナプリンさん、、あの人は強いよ。」
と慄いた声で言った。
○○○
「おいジャック、我等の強さを確認したいからってここまで放っとく事はねぇだろ。ウラディンちゃんの傷も癒えてねんだぞ。」
治療室をでたジャックに、目が覚めたゼムライが追いかけて怒鳴りちらかす。
「放っとくって、俺が参戦してもどうせ勝ててねーよ。」
「勝ててねーか、、そうか、なら我等が畳み掛けた最後の攻撃、それに対するグリフォンの反撃。
凄まじい暴風だった。
だが、その暴風を喰らっても我だけは暫く気絶してなかったといったらどうする?」
ジャックは足を止める。
一瞬時が止まったかのように、辺りが静かになる。
「気絶してなかったのなら緊急ゲートは自分の足で潜って欲しかったなぁ。
お前は重かったから。」
ゼムライは訝しげな表情を浮かべて、
「そうか、、今後は気をつける」
と呟いた。
○○○
数日後、、
治療中だが、好物の肉を食べまくってすっかり元気なったウラディン。
「よっしゃー、ウラ復活ーー!!
今ならあのグリフォンに勝てるぞ!」
〈紫将の団〉が管轄するホテルの一室で今はウラディンとロロベルトの3人でいる。
このホテルにいる理由は、ダンジョンだけに限らず国内においても容赦なく襲撃される可能性があるからだ。
ゼムライは、宮殿内の田舎、その木の上がどうも居心地が良いらしく、呼んでもこなかった。
クエスト以外の時間はほとんど寝ているらしい。
今も多分寝てる。
今日はウラディンの看病に時々来ていたパトリックに話があると言われ、3人で待機している。
トントン、
開けると、服がズタズタに破れたパトリックと、、少し下に視線をやると、前世でいう小学生1年生ぐらいの身長の子供が2人いた。
2人とも目つきが鋭く、そっくりだ。
「誰だ、この子達は?」
「あーすまないすまない、この子達は俺の甥っ子なんだ。ほら挨拶しなさい。」
「よっ!」
「よっ!」
生意気な返事が左右から同時に放たれる。
「何で連れてきたんだ?それにその服のボロボロさどうした?」
「そう、その事で話がある。」




