ジークとフリード
「おう、パトちゃん!
見舞いに来てくれたのか?」
ウラディンは嬉しそうにしている。
が、パトリックの第1目的はお見舞いではなさそうだ。
「それもあるが、俺からウラディンちゃん達にお願いがある。」
「なんだ?」
と問う。
「この子らの面倒を見てくれ。」
そう言って、パトリックは双子らしき子供を前に差し出す。
双子の名はジークとフリード。
パトリックの話によるとこの2人はハヴレイン国王の親戚の子なのだと。
その親戚の王族からの命令で、パトリックのギルドで世話をすることになったらしいのだが、ロブストギルドは国随一の多忙ギルドな為、ウラディンならなんとかなるのではないかという少し皮肉が入った策でこちらによこしてきたと言うことだ。
「でも何でこんなちっちゃい2人がギルドに入ってるんだ?」
「それが成人のハンターとタメを張るぐらいの実力なんだよ。
だから、英才教育じゃないけど、若いうちに修羅場を経験させといて優秀なハンターに育てようという策だろう。」
説明をしてくれるのはいいが、パトリックはその間ずっとジークとフリードに服をちぎられている。
気が散ってしょうがない。
それにしてもこの幼さで成人と同じぐらいの実力。
よっぽど優秀なんだろうな。
「別にいいが、今姫達はジャックのギルドと合併して動いているのは知っているよな?」
「勿論だ。だからジャックには内緒でお願い。
なぁいいだろ?サンドワーム討伐も手伝ってやったじゃないか?」
「恩もあるし、良いじゃないですか?」
と、ロロベルトが言う。
「そうだな、よし良いだろう。
面倒見てやる。
おいちびっ子2人こっちへ来い!」
ウラディンはそう言って手招きをする。
すると、
「お前達が俺たちの面倒を見てくれるのか?」
「あまりの実力に尻尾巻いて逃げんなよこの野郎!」
うわー、めんどくせぇー。
生意気すぎるだろう。
まぁウラディンが特殊なだけで、本来王族とはこんな感じで横柄なんだろうな。
「てめぇら今なんて言った?」
ウラディンは闘志を燃やしている。
こんな子供相手に何ガチギレしてんだよ。
「やーい怒った、獣女ー!」
「怖くなんかないぞー、おちりぺんぺんー。」
「うりゃーーぁー!!」
逃げるジークとフリードを本気で追いかけ回す成人女性のウラディン。
「ありがとな、一応王族の子だから扱いは丁重に。それじゃあ頼んだぞ!」
パトリックは安堵で少し微笑んでいる。
多忙っていう言い訳で実は面倒くさいだけじゃないのか?
なんとなく笑顔が悪魔の形相に見えてきた。
厄介な奴らを引き受けてしまった。
♦︎
「腹減ったーー」
「こんな時は肉が欲しいな」
ジークとフリードはお腹をさすりながら、涎を垂らしている。
2人を引き取って1日目。
既に生意気すぎていくつかの神経がすり減らされている。
「いいなぁ肉は!!」
ウラディンはそんな生意気2人に同調する。
「あっそれっニーク、ニーク、ニーク」
ウラディン、ジーク、フリードの肉肉ダンスが始まった。
打ち合わせしてたみたいに踊りがシンクロする。
「お前も参加してこいよ。」
3人のダンスをひたすら眺めているロロベルトに言う。
「いや、流石に恥ずかしいよ。」
そりゃそうだよな、、
こういうのは一緒に乗ってあげるのが大人という解釈もできるが、ウラディンの生意気2人に引けを取らないはしゃぎ具合は、子供そのものだった。
ここ、〈紫将の団〉が管轄するホテルには、団員がうろちょろしている。
「どこに行くんだ?」
部屋を出ると早速たまたま通りかかった団員から鋭い目で質問される。
「飯だ、飯。」
「そうか、いっぱい食って攫われないように力つけてこいよ。はっはっー」
うざい、殴りたくなったが、今はすぐに隠して真後ろにいるジークとフリードの存在がバレないように、グッと堪えた。
そんな団員達の目を盗んでホテルを出て向かったのは、[肉戦力]という肉屋。
牛や豚、鶏はもちろん、ラム肉も扱っており、肉食系人間ならもってこいの国内では有名な店。
店内は大人数の客で埋まっている。
それだけ人気なのが伝わってくる。
たまたま運よく空いていた席につき、早速注文をする。
そういや、こいつらお金持ってんだろうな。
また奢りとかなったりしたら殴りかねないぞ。
「お前達は何歳だ?」
「7歳だ。」
7歳、前世でいう小学2年生の歳。
7歳が成人とタメを張れるぐらいの実力は結構楽しみである。
「何だ、見た目通りお子ちゃんじゃないか。」
ウラディンが肉を頬張りながらジークとフリードに向かって嘲笑う。
「あっ、てめぇ、言ったなこんにゃろう。」
怒ったジークとフリードは席を立ち、ウラディンにしがみつくや否や、服をサワサワと触り始める。
そして、ビリビリと服の繊維が弾ける音がする。
「おい、この服はウラの手作りなんだぞ、やめろ!!」
「しらねぇよ、ジーク次は背中部分責めるぞ。」
「おうよ!!」
すばしっこい動きで2人はウラディンの背中に回る。
「ねぇーーーやめてよーー、」
ウラディンまさかの大号泣。
お子ちゃん発言が特大ブーメランになっているぞ。
「ははっ、泣いてる泣いてるー」
店内の客がちらほらこちらを見ている。
こんな見た目が派手な成人女性が号泣してんだから、そりゃ見ものだよな。
服を破られて少し可哀想だが、あまりの泣きっぷりになんかおもろくなってきた。
ちょっと意地悪かもしれないが、すまんロロベルト。
「おい2人とも!今こいつも2人のことクソガキって言ってたぞ」
姫はそう言って、ロロベルトに指を指す。
「え、言ってないよ、ねぇ、ラナプリンさん、ねぇ?」
「何だと、行くぞフリード」
「おうよ!!」
キタキタ、ジークとフリードは、ちぎったウラディンの服を投げ捨て、ロロベルトにしがみつく。
「ちょ、やめて、言ってないってば、
キャーーーーーーー!!!」
ビリビリビリッ
はーおもろいおもろい。
おもろすぎて涙が出てきた。
この席には、5人中2人がほぼ裸状態だ。
他人席からしたらシュールな光景。
おもろかったけど、何となく嫌な予感がする。
裸の成人の方々から鋭い視線を感じるのだが、、
「おい、ガキんちょ共!ここにいるラナプリンって人がさっき2人の事をちびちびブラザーズって言ってたぞ!!ねぇー、気のせいかな?」
ウラディン、こいつっ、、
「あれれ?奇遇ですね、俺も聞こえましたよそのワード」
くそっロロベルトもこいつ言いやがった。
逆襲の目をしている。
「何っ!!おいジーク行くぞ!!」
「おうよ!!」
おい、マジかよ、やめろやめろッ
ジークとフリードがこちらに向かってきて、しがみついてくる。
だが、
「なんか高そうだな、この服」
「そうだな、」
2人はそう言って、姫から離れた。
よかった高そうな服着てて。
流石王族の子、価値判断は一級品だな。
品定めができる7歳は優秀だぞ。
「それよりさっきガキんちょって言ったな?」
「行くぞジーク」
「おうよ!!」
そして再度ウラディンとロロベルトの方へ行き、襲いかかる。
次はズボン責めだ。
ビリビリッッ
合計35000プリンプリン
会計の際、ウラディンはずっと泣いていたのでまともに話ができず、ジークとフリードはそもそも財布を持っていなかった。
仕方なくロロベルトと割り勘。
ったくこいつら、この貸しはいつか必ずきっちりと返してもらう。
♦︎
「そろそろクエストに行くぞ!」
ジークとフリードを引き取って7日目。
この7日の間で姫達は、バレたらやばいのでジークとフリードを置いて、小銭稼ぎ&弾丸集めの為に軽いクエストに行った。
それを知ったジークとフリードはずっと「クエストに行きたいクエストに行きたい」ばっかでうるさい。
〈紫将の団〉の一員が近くに来るたびに隠してやってるのにガキだからそのありがたさを理解してないな。
続くクエストでお金には困ってない。
ただあまりにもうるさいのでここは人生の先輩として、まぁこの世界では後輩だが、たまにはクエストに連れて行ってあげてもいいかと思っている。
7日も一緒にいたら意外と可愛いところもあるので完全に憎めない。
まぁウラディンのことは完全に舐めているようだが、、
クエストに行くとなると、2つの選択肢がある。
まず、デラマルスをリーダーとしてギルド員10人以上で動く選択肢と、1人だけだがジャックとクエストに行くという選択肢。
ジークとフリード抜きで行った時は、前者の形態だった。
2人を連れて行くとなると、どちらもバレるリスクは高い。
10人もいたらどさくさに紛れてジークとフリードを戦わせることもできるかもしれない。
でもその分目撃者も増える。
〈紫将の団〉団長であり、デラマルス曰く国内1のハンターであるジャックの目を盗んで、2人を戦わせる事もまぁ難しいだろう。
どちらを取るべきか、、
よりリスクのない方はどっちだ?
「なんでまたクエストに行くんだ?金ならあるだろ?」
デラマルスに直談判しに行く。
ウラディンとロロベルトに相談した上、結局選んだのは前者の方だ。
どさくさの方がリスクは低いと考えた。
「まぁ最近出費が重なってな。」
「そうか、良いぞ。
ちょうどボスも体を動かしたいとか言ってたし、ちょっと呼んでくるわ。」
やばいことになった。
ここでジャックも来るのかよ。
今更断るのも怪しいしな。
でもこのギルドは強者には甘いよな。
最悪バレても、もしあの2人が優秀ならワンチャン認めて貰えるか?
ジークとフリードの実力に期待しながらも、何事もなく穏便に終わることを願うばかりだ。
… クエスト受付にて …
結局集まったのはブラックグリフォンを討伐しに行ったメンバーからゼムライを引いた面々だ。
ジャックとデラマルスの2人がいるから他のギルド員はいらないだろうと判断したらしい。
行くクエストはⅡ王冠のブラックゴブリン。
このメンバーならⅣ王冠でも勝てるのだが、なんせおチビがいるからこのクエストにした。
ジャックは何となく不服そうだが、、
小銭にもならねぇーとでも言いたそうな表情。
今ジークは姫の背中に、フリードはロロベルトの背中にいる。
服の中に忍び込んでちゃんとしがみついていで隠れている。
この受付嬢は結構ポンコツだからまぁバレることは無いだろう。
「そういえばラナプリン様とロロベルト様の背中が盛り上がってる気がするのですが、、」
チッ、コイツ勘だけはいんだよな。
うわー、ジャックとデラマルスがすげぇ疑わしそうな目で見てくる。
やめてくれ、、
「まぁそのあれだ、最近背中の筋トレをしてるからな、そういう事もあるだろ。」
「そうなんですね、分かりました。それではご武運を祈ります。」
うん、コイツはやっぱバカだ。




