緊急事態
受付嬢はまたこいつらかという顔をしている。
「ギルド名はワイルディンズ、ホワイトコールドケルベロスのクエストに行きたい。」
「分かりました、えーと、今回は3名、、ですか?」
ツケとパトリックに払うお金を計算してみた。
ホワイトコールドケルベロスだと、ゼムライの能力と相性が良く、チャチャっと済ませられるらしい。報酬金もそれなりにあるので1回の討伐で済む。
だが、ゼムライがいることによって、ちょいとばかし足りない。
先程、ゼムライは「俺のウィンドウに表示されているから、これは俺の所持金だ」とガキ大将みたいな発言していた。
そこで考えた作戦、、題して
〈2人羽織したら、1人って判定になるんじゃねぇ?、そしてゼムライはいなかった事になるから、報酬金は3分割されてhappyhappy作戦!!〉
2人羽織については、「なんか面白そうじゃね?」というよく分からない口実でゼムライに持ちかけたのだが、
「確かに面白そうだな!」と、真っ直ぐな目で返してきた。
まさに野生、本能で生きている。
今ロロベルトは、巨人であるゼムライの腕の位置と辻褄を合わせる為、少し浮いている。
2メートルロロベルトの完成だ。
「そうだぞ、誰がどうみても3人じゃないか。」
とは言いつつ、流石に今回は無理だな。
「ロロベルト様はこんなに大柄でしたっけ?」
「あぁ、それか、こいつは今成長期でな、、」
「そうなんですね、分かりました!
では、ゲートを用意します。」
いけたー、この受付嬢馬鹿だなー。
純粋って言い方の方がいいのかな?
いや、やっぱ馬鹿だ。
最初は不気味で少し怖ったゲートも手慣れたように潜っていく。
少しはこの世界に慣れたかな。
ゲートを抜けた先は、見える光景が白と水色の世界。
凍てつく風、極寒の場所。
寒い寒い寒い寒い、、
〈ability耐凍を習得しました。〉
ふぅー生き返った、って事はつまり、ロロベルトも、、
ブルブル震えている。
ですよね。
〈skill耐凍の共有を実行します。〉
ゼムライは毛皮のコート一丁。
下着は無い、ほぼ裸。
耐凍があるとはいえ、、
感覚がないのかこいつは、、
雪に覆われた地面。
雪用のブーツでもなく、ただの靴なので一歩一歩が重い。
なんのモンスターにも遭遇しないまま、しばらく歩いていると、人影が3つ見えた。
ケルベロスか?でもシルエット的に人だよな。
「あーやっと出会えた、すいません、僕たち遭難しまして、、もしよかったら一緒に行動させてもらえないですか?」
話しかけてきたのは、20代ぐらいの男達、前世だと大学生みたいな雰囲気だ。
前にウラディンから聞いた話によると、既に他のギルドが参加しているクエストには、ハンターの規律上参加することができない。
緊急事態を除いては、、
だがたまに、ダンジョンに入って厳しい環境だったり、ターゲットから逃げたりしている内に帰りのゲートが分からなくなり、遭難してしまうハンターが現れるケースもあるらしい。
目の前の3人は、、見た目で判断するのは良くないが、お世辞でも強そうとは言えない。
恐らく遭難組だろう。
「知らん!どっかいけヘナチョコ共!」
ゼムライは、野太い声で追い返そうとする。
だが、
「まぁいいじゃないか、弱者を助けるのが強者の役割ってもんだろ?
そこの3人衆よ、ウラ達について来い。」
ウラディンが助け舟を与える。
「本当ですか、ありがとうございます!」
「えー、こんなヘナチョコ、、」
ゼムライはガックリしている。
「いいじゃないですか、ねぇ?」
ロロベルトはウラディンに賛成しているようだが、恐らくこの3人衆と同種だからであろう。
まぁロロベルトの気持ちになってみても、姫達と行動するのは肩身が狭いよな、、
でも、サンドワーム戦ではいいskillを持っていたけどな、、
もしかして、マウントでも取りたいのか?
すると、
「ラナプー、ロロっち、一応あの3人の警戒を怠らずにな!もしかしたら報酬金が上乗せされるかも、、」
と、ウラディンがこちらに寄ってきて、ひそひそ声で喋る。
「報酬金が上乗せって?」
こちらもひそひそ声で返す。
「スライムだよ。極稀にダンジョンに現れる低級モンスター。1体につき報酬金は100000から150000プリンプリン。
スライムは変装が得意だ。
多分だがあの3人がそう。
何気ない行動でボロが出るかもしれない。
こちらが察せれば、雪に擬態して逃げられるかも知れないから、慎重にね。」
「スライムなんだったら、今狩ってしまえばいいだろ?」
「人間だったらどうすんだよ、、
スライムはこっちが油断している隙に襲ってくる。だから、気づいてない演技頼むよ。」
「はいはい。」
1体につき100000プリンプリン、これは激ウマだな。
でも、本当にただの人間にしか見えないのだが、、
それと、ウラディンはゼムライにこの事を言ってない。
相当演技が下手なのか、、それとも襲われても殺される心配が無いからなのか、、
多分だが、その両方だな。
吹雪を乗り越え、重い雪道も超えた。
今は山の中で、焚き火をしながら休憩をしている。
クエストのメインモンスターは、その日に現れるとは限らない。
今日のところは一旦休憩だ。
と、言いたいところなのだが、もちろんダンジョンと現実の流れる時間は同じな為、今日このまま寝てしまうと、晴れてより窃盗犯になってしまう。
次の探索に向かう。
休憩中、3人の動向を警戒していたが、特に目立った異変はない。
1人は木片で怪我をしていたが、ちゃんと赤い血が流れていた。
それに「マスターズ」というトリビア王国のギルドメンバーということが判明した。
隣国同士は国家規模ではバチバチといえど、1ハンターとしてはとても気さくな人達である。
「ウラディンちゃん、多分あいつら普通の人間だぞ。」
ウラディンは首を90度にかしげる
「そうか、でも何か嫌な予感がするんだ。
それがあいつらと関係しているかは分からないけど、、」
疑心暗鬼になりながらも、また雪道を歩いていく。
辺りも少し薄暗くなってきた。
すると、
ワォォーーーーーンという遠吠え。
その遠吠えはどんどんと重みを増し、近くなってくる。
すぐ近くにいる、
しかも数匹どころじゃないな。
辺りの木陰に隠れているのだろうか、
なかなか姿を現さない。
「隠れているな、様子を見ているって感じ、、
ロロっちのあのskillもここで使ったら、ウラ達が大木の下敷きになる可能性がある。
となると、ゼムゼム行けるか?」
「当たり前よ!やっときたな我の仕事!」
ゼムライは背に装着していた大斧を取り出した。
ウラディンやパトリックのように魂を感じさせる武器ではないが、いい素材を使ってそうなズッシリとした代物だ。
「武風烈〈ぶふうれん〉!」
〈武器skill武風烈を実行します。〉
ゼムライは、大木ほどある腕で頑丈な大斧を振り回し、辺りの木一辺を風圧で伐採した。
「これで隠れ家は無くなったぞ!
出てこい犬っころ!」
もうない木陰から姿をゾロゾロと現したのは、顔が3つの全身がガラスのような透明に近い白で染まったケルベロスだった。
ざっと数えて50匹はいる。
「よし、ここまで世話になったので、ここは僕たちに任せてください!」
遭難3人衆がここで立ち上がった。
3人が身につけているのは、鋭利な鋒を備えた太刀。
そして、
「超速」
〈skill超速を実行します。〉
3人は各方向へと散らばり、ケルベロスと戦いを始めた。
3人とも、なかなかのスピードだ。
基本戦闘スキルでは、断然ロロベルトより上だ。
それなのによく遭難したよな、、
着々とケルベロスの屍が増えていく。
遭難3人衆のお陰で、姫達は何もせずクエストをクリアすることができた。
それにこいつらも、人間である事は間違いないだろう。
モンスターとモンスターが戦うなんて意味がないし、もし化けているのだとしたら、ケルベロスに加勢してくるはずだ。
ケルベロスの白い血が飛び散る。
雪の地面と重なって、もはや血かどうかも分からない。
殺すふりをしてるのではない。
ちゃんと殺している。
ロロベルトは、早速ケルベロスの屍へと近づき、採取を始める。
〈武器skill砂呑を実行します。〉
「おぉー、すごいすごい、やっぱり沢山取れるよ。」
ロロベルトは感心している。
取った素材が、纏布にどんどんと保管され、採取を終えたケルベロスに残ったものは、四足歩行の骨だけである。
「流石我の仲間だ!いい武器を持ってるなぁ!」
「ありがとうございます!この調子で全部の死体しゃぶり尽くしちゃいますよ!!」
お調子乗りのロロベルト。
〈ホワイトコールドケルベロスの部位から、
白・氷狼弾を生成しました。〉
〈白・氷狼弾のコピーを実行します。〉
あまりにも早く終わった。
今回はガトリングさえも出していない。
帰り用のゲートが現れる。
「僕たちどうしたら?」
戦闘に疲れた遭難3人衆が息を切らしながら、不安を漏らす。
「王族にさえバレなければ、バシューカッツの国境付近までは送り届けられるぞ!
まぁウラとゼムゼムは王族なんだけどなぁ!」
ゼムライも王族なのかよ。
王族という固定概念がひっくり返されそうだ。
「それじゃあ、、」
「良い良い、内緒にしといてやる。」
「ありがとうございます!」
3人が一斉に感謝を述べた。
ツケはなんとか間に合いそうだ。
報酬金の事をゼムライにいったら、キレられるかな?
まぁその時はその時だ!
そう思い、帰宅用のゲートに足を踏み入れると、
バチっ
はじき返された。
ゲートに入ることができない。
「なんでだ?こんなのゴリ押しで、、ふぐっーーぅぅーーうぅーー、」
バチっ
剛力のゼムライでさえいとも簡単にはじかれる。
遭難3人衆は、ただポカーンとその場で突っ立っている。
すると、
遠くから、
ガォォォォォーン
という鳴き声。
なんだかやばい、鳴き声だけでわかる。
今までのモンスターとは格が違う。
怖い、、
パキパキパキパキっと辺りの木や葉は結晶化していく。
氷片と化した辺りの光景から姿を現したのは、全長70メートルほどある巨大なドラゴン。
口から冷気が溢れている。
ロロベルトと遭難3人衆はドラゴンを見るや否や腰を抜かし、その場で座り込んでいる。
珍しくウラディンも焦った顔を見せた。
引き攣った笑顔、上手く笑えてない。
「奴はブラックコールドドラゴンだ。
Ⅴ王冠〈ファイブクラウン〉の大物。
ちょっとまずいことになったなぁ。」
〜ゼロ・ゼムライ〜
〈crown〉剛力者 〈証〉武
〈武器〉ブラックミノタウロスの大斧
〈属性〉力
〈skill〉超速
飛躍
身体強化
???
???
〈ability〉耐熱
耐凍
耐毒
白兵戦
超筋力
適応神経
???
???
〈武器skill〉武風烈
???
???




