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神野ミナトという女


 「えーーまた1位?」

 幼馴染の親友、土里麻里がクラス中に響く声でいつも通り驚く。

 「今回はいつもよりたくさん勉強したからね、、だってテスト期間中1回も私達遊んでないでしょ?」

 私は嫌味にならないようにマニュアル通りの返しをした。

 実際、それ程勉強はしてない。

 1週間の勉強時間を足すとせいぜい2時間程度。

 それでも1位をとれる。皆んなが馬鹿すぎるのだという考えは、8歳頃に捨てた。

 歳を重ねるにつれ私は天才なのだと自覚するようになっていった。

 そして今高校3年生に至る。

 「確かに遊んでないけどさ、、それでも1位って、、」

 心の中で麻里に問う。何故こんなに簡単な問題が解けないのか?

 麻里の大袈裟な声に集まってきたのは、同じクラスの人達。

 「神野さん凄い、、」

 「これで運動もできるんだからな、」

 「いいなー何でこんなのが解けるの?」

 「宇宙人だったりして、、」

 次々にモブ生徒達の妬みが宙を飛び交う。

 

 先程、なんかよく知らんモブ生徒が言った通り、私は運動も出来る。

 球技やら体力テストやら何の努力もしてない。

 だが、出来る。自分でも怖い、、

 

 学校が終わると、いつも通り帰り道にはモブ男後輩くん達10数名が手を振ってくる。

 お気づきだろう、、そう!私は顔も可愛いのだ!

 たまに思う、、何だ私は、と、、

 神の隠し子ではないかと、、

 

 モブ後輩くん達が作る私専用の帰り道は、学校から離れてもまた再度作られる。

 隣町の学生や、私の住んでいる町の学生達によるものだ。

 パーフェクトな私には当たり前の光景だ。

 

 ただ、少し前にその学生達の列に1人だけ禿げたおっさんが混じっていた時は流石にゾッとした。

 消化しきれてない昼食が出てきそうだったが、ファン達の前で堂々とゲロをするアイドルがいるだろうか?

 グッと堪え、胃液を胃にゴリ戻す。

 

 偽りの姿であるサラサラとした黒髪ボブにナチュラルなメイク。

 スカートは敢えて長すぎず、何ならすこし短め。

 え?こんなに清楚なのに意外とスカート短くしてる、

 逆にそそるよねー、

 と内心思っているであろうモブ男達へのサービス精神だ。

 出来る姫、、ゴホン、、出来る女というのはこういった家臣への配慮もする。

 

 長い帰路を乗り越え、家に帰るとようやく苦痛から解放される。

 「只今ミナト姫帰宅なり!」

 「おかえり、ってちょっとミナト、家でも少しは身だしなみに気をつけないと、外で素がでても知らないわよ。」

 馬鹿みたいな帰宅サインに母親は毎度呆れている。

 鬱陶しい前髪をヘアゴムでくくり、軽い水洗いでメイクを落とす。コンタクトを外し、黒縁メガネをかける。

 制服を脱ぎ捨て、動きやすくペットの臭いが染み込んだジャージを着る。  

 ペットボトルのジュースと、お菓子の袋をせこせこと集め、2階の自分の部屋まで駆け上がる。

 

 姫の、、ゴホン、私の部屋は、、っていうかもう家着いたんで素でいきます。

 姫の部屋は学校のマドンナ神野ミナトからは予想がつかないような派手な色彩をしている。

 姫はバトルアニメや格ゲーが好きなので、そのキャラのポスターを壁に貼っている。


 「よっしゃ、イケイケオラオラオラ、おいゴラァ」

 血走った眼でモニター画面を見つめ、暴言と共にコントローラーのボタンを押しつぶす。

 

 「てめぇ、くそくそくそ、」

 オンライン対戦をしているのだが、結構相手が手強い。

 この姫の攻撃を生意気に躱しやがる。

 「キェーーーーーー」

 負けた。防音を施した部屋である為、心配ないが、普通の部屋ならフツーに近所迷惑の声量。

 だが、同じ家の住人には筒抜けだ。

 ドンドンと速いテンポで階段を駆け上がってくる音がする。

 「オイコラァガキ、うるせんだよガキ、1階まで貴様の汚ねぇ声が響くんだよ!調子こくなよ学生の分際で、このクソガキが」

 バタン、、そう言って母親は強く扉を閉めた。

 相変わらず口が悪い、いや、悪すぎる。

 我が子に向かって汚ねぇ声って、、学生の分際って、、


 遺伝かなぁ?


 テンションが下がったところで、ゲームを切り、アニメに切り替えた。

 姫が今見ているアニメはゴリゴリのバトルシーンが豊富に含まれた、厨二病心くすぐるやつだ。

 推しキャラは拳銃を使うアモンというイケオジだ。

 最近アモルの戦闘シーンが多めで、やっと強さが分かり始めたところだ。

 マジで強い、、どんなモンスターも正確に脳天をぶち抜いて一撃で仕留めていく。

 叶うならこのアニメの世界に入って、アモンと一緒に戦いたい。

 鏡の前に行き、アモンの真似をする。

 「俺の弾丸は光より速いぞ!」

 手で銃の形をした空気を掴み、上体を少し反らせて決めポーズ。

 

 きゃーかっこいい、、と叫びたいところだが、ヤクザ母親を召喚したくないので、抑え気味に叫ぶ。

 

 だが、次の瞬間、、え?、、アモンはすんなり死んだ。 

 嘘でしょ、ねぇ嘘でしょ、、

 実は復活出来る能力持ってたりして、、

 

 復活する気配はない。

 「ノォオーーーーン、アモンゥゥゥーー」

 悲観の雄叫びをあげる。

 

 ドンドン、、、

 やばい、足音再来。

 「オイコラ小僧、」

 「すまぬ、、」

 「舐めてんのかーー」

 

 この日は、みぞおちに膝蹴りだけで済みました。

 


 次の日、朝7時に起床。

 面倒くさい化粧とヘアセットをする。

 鏡に写る自分の顔をみながら、表情を作る。

 髪の毛を手でときながら、金髪にしたいなぁと呟く。

 え?あの清楚で有名な神野ミナトが金髪?ギャップ萌えするー!

 という声を狙ってもいいのだが、流石に金髪は校則違反なので諦めた。

 オールマイティーな姫とはいえ多分だが、ギャップ萌えするー!なんか思われずに、やばこいつとかしか見られないだろう。

  

 着心地の悪い制服に着替えて、学校に向かう。

 

 最寄りの駅に着くと、早速だがモブ男共の私専用登校ロード。

 こいつらは恐らく同じ中学なのだろうが、本当に名前が思い出せない。

 記憶力が無いとかじゃないよ、、だってテストは1位だから、、

  

 

 

 電車を降りると、後は学校まで歩いていく。

 「神野さーん」

 「神野さーんおはようーー」

 モブ男達は途切れない。

 

 「おはよう!」

 満面の笑顔を見せ、愛想良く挨拶する。

 おはよう!の後に名前を言ってあげればもっと好感度は上がるだろうが、なんせ名前を知らないもので、こればかりは仕方ない。

 

 すると、ウゥーーンとパトカーのサイレン音が街中に鳴り響く。

 前方をみると、車線から思いっきり逸れた車がパトカーから逃げている。

 ものすごいスピードで曲がっているため、運転手はさぞ重力に困っているだろう。

 それにしても凄いスピードだ。

 うん?何かこっちに向かってきてねーか?

 あれ?うん?

 やばいやばい、、

 こういう時って時間が長く感じるとは言われたけど、本当に長い。

 いろんなことを考えれる。

 頭の回転が止まらない。

 私を囲っていた男共は、同じく焦って様子を見せた。

 そうだ、、こいつらなら私を庇ってくれるかも、、

 そうだよね、絶対そうだ

 すると、やはり

 「神野さん、下がって、、」

 モブ男Aが私の前に出てくれた。

 かっこいいとさえ思えた、、

 だが、私の身体は動かない、、自慢の運動神経が機能しない。

 脳は動いているのに。

 え?これ2人とも死ぬやつやん、

 車がモブ男Aの前まで来た。

 「あ、やっぱ怖い、、」

 モブ男Aは、ヘッドスライディングするかのように横に飛び逃げた。


 え?やばこいつ、、

 ドォォォォン

   

 衝突音が街の喧騒を上書きする。

 

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