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第9話 酒場で毒を飲む男

「飲め、人間! その麦酒は熊すら即死の毒だ! 死ね!」


獣人国の酒場に、獣の咆哮が響く。木の床が軋み、酒と腐臭が混じる。アルヴィン・ド・ヴァルモンは欠伸する。「面倒だな。」 眠そうな目で毒入り麦酒を眺める。


リリアが叫ぶ。「そこに座れ、ミーナも! にゃー!」


酒場が静まる。人間のアルヴィンとミーナの登場に、獣人戦士たちが目を細める。コップが床に落ち、割れる音。ミーナが震える。「アルヴィン、怖いよ……。」


リリアがガレン、巨漢の獣人に声を掛ける。「ガレン、座ってにゃ!」


ガレンの目が光る。「人間は悪魔だ。村を焼き、女子供を奪う奴らだ!」


女将が麦酒を運ぶ。「4つ、いいね?」 だが、アルヴィンは匂いに気づく。――毒だ。獣人女性(第2話)、エルフ(第4・5話)、ミーナ(第6~8話)の悲鳴が蘇る。(この国も腐ってるのか?)


「客人を毒で迎えるのか?」 アルヴィンの声が静かに響く。


リリアが耳をピクッと動かす。「まさか! にゃー!」


ガレンが麦酒を掴む。「ふざけるな! 俺が飲んでやる!」


「やめろ、ガレン。」 アルヴィンが手を止める。「毒だ。熊も即死する。」


ミーナが叫ぶ。「アルヴィンが言うなら本当よ! 飲まないで!」


女将が慌てて走る。「すみません、猛毒です! 熊が死ぬほどの……。」


リリアが唸る。「女将! 私が連れて来たのに、なぜ!?」


女将の目が潤む。「旦那の娘二人、一月前人間に拉致された。帰らない。恨みで……あなた方への毒じゃない、許して。」


アルヴィンは思う。(好機だ。話すきっかけになる。) 「熊が即死する毒なら、飲んでみるか。その代わり、何もなければ話を聞いてくれ。」


ミーナが叫ぶ。「ダメ! アルヴィン、死んじゃう!」


――シュウ。


アルヴィンが麦酒を一気に飲み干す。錆びた鉄の味、喉が焼ける。だが、彼は念じる。――解毒。身体が熱くなり、毒が消える。「ふー、旨い! 毒が一味効いてるな。ミーナのも勿体ないから――」 もう一杯を飲み干す。「お代わり、普通の麦酒で。」


酒場が凍りつく。女将が震える。「全部入れたのに……大丈夫!?」


リリアの耳が震える。「毒飲んで平気!? にゃー!」


ガレンが大笑い。「気に入ったぞ、アルヴィン! 人間じゃねえ、馬鹿だ!」


戦士たちが笑い、拍手が沸く。「人間じゃねえ! 歓迎だ!」


ミーナが呟く。「馬鹿って失礼……でも、楽しそう。良い人たちだね。」


※※※


宴が始まる。獣人たちが酒と肉を運び、歌と踊りが響く。ガレンがコップを掲げる。「アルヴィン、話って何だ?」


アルヴィンは欠伸する。「俺とミーナは人間の国から追放された。帰る場所はないし、帰る気もない。」


リリアが目を細める。「帰らない? にゃー、面白いな。」


「この国で何が正しいか、悪いか、見極めに来た。」 アルヴィンの声が静まる。「人間が悪魔なら、なぜだ? 話してくれ。」


ガレンが唸る。「人間は村を焼き、女子供を奪う。俺の妹も、2年前にな。」


リリアが続ける。「毎年、夜中に襲ってくる。火と剣で、逃げ場がないにゃ。」


ミーナの目が潤む。「そんな……私たちの国も、聖職者が少女を……。」


アルヴィンは思う。(聖職者の地下、獣人女性、エルフの悲鳴……どこも同じか?) 「正義とは何か、俺はそれを探す。獣人国の真実を教えてくれ。」


ガレンがコップを握り潰す。「真実? 人間の罪だ! だが、お前は違うのかもな。」


リリアが微笑む。「アルヴィン、馬鹿だけど悪い奴じゃない。話すよ、にゃー。」


宴が静まり、獣人たちの目がアルヴィンに集まる。この対話が、獣人国の革命を呼び、リリアやガレンと共に正義を掴む旅の始まりとなることを。

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