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第18話 奴隷商人からの買戻し

町の通りは、活気に満ちていた。

商人たちの呼び声が、響き合い、果物の甘い香りが漂う。


お仕えする人々、旅人、華やかな服装の貴族。皆が、笑顔で交わす。

だが、アルヴィン・ド・ヴァルモンの目には、その裏の影が見えていた。


リリアの鼻が、かすかに震える。


「目が死んでいる。陰湿な臭い、暗さ、絶望が漂っている」

変な声が聞こえる。うめき声? いったい何が。


アルヴィンが、リリアに囁く。

「貴族風に衣装を変えよう、リリア」


――シュウ。


光が二人の体を包む。上流貴族の絢爛たる衣装に変わる。金糸の刺繍、宝石の輝き。

アルヴィンが、鏡代わりの水溜まりを覗き、満足げに頷く。


「リリアから見て、金持ちに見えるかい?」


リリアの目が、細くなる。

「お金持ちにゃ、悪い人間そのものに見えるにゃ」


アルヴィンが、くすりと笑う。

「それは、リリアもな」


二人は、町のはずれの方へ歩を進める。段々と人気が減っていく。

賑わいが、遠ざかる。町も暗がりに、影のほうになっていく。


先程の華やかさとは、明らかに違った。そこには、立っている人間の女性が沢山居た。

何かその女性と話している、若者もいる。


ここは、歓楽街である。酒と笑い声が、ねっとりと絡みつく。


さらに奥に二人は進んだ。かなり大きな建物である。陰湿な感じは変わらない。扉が軋み、開く。



中から、背の低いおじちゃんが出てきた。




いらっしゃませ。


「これは、これは、高貴なお方とお見受けする」

「ささ、どうぞ、中へ。なんでも取り揃えております」

「お好きなものをどうぞ」



リリアの心に、怒りがこみ上げる。


[ここは奴隷を売っている。モノだと]


アルヴィンが、淡々と尋ねる。


「獣人が好みだな、案内してくれるか」


商人の目が、輝く。


「貴族様も、好きですね。亜人は悪魔ですから、なんでしたら、人間の幼子等も取り揃えております」


アルヴィンの声が、冷たくなる。


「興味ない、獣人のところへ」


商人が、にこやかに導く。


「そうなりますと、こちらへ」

「若干匂いますが、気になさらず、お好きなものを」

「味見は出来ません、そこはルールですから」



「すべて教え込んであります。なんでも言うことを聞きます」

「特に、我がお店では、特上のものを、時間をかけておりますゆえ」


「良い物を揃えております。今ここには、丁度、獣人は、30程、おります」

「ごゆっくり、見ていただけますと幸いでございます」




暗い部屋に、鎖の音が響く。獣人たちの目が、虚ろに輝く。

アルヴィンの胸に、怒りが灯る。


「獣人、全部買おう」


商人の顔が、驚きに歪む。


「全部とはこれは、モノ好き、いや失礼しました」

「では金貨30枚で。お値打ちでございます」


アルヴィンが、肩をすくめる。


「ほう、それは高い、やめておく、帰るぞ」


商人の心に、焦りが走る。


(こんな見た目の貴族様、めったに足を運ばれない、吹っ掛けすぎたか)


「いや、では15金貨です、先ほどはご冗談をもうしたまで」

「商人の挨拶みたいなものです」


アルヴィンの声が、苛立つ。


「いらないと言っているのだ」


はじめから、足元を見ている。この商人動けなくして、全て転移させることもできるが。


商人が、にやにやしながら、値切る。


「では金貨5枚で、これ以上は下げられません。いかがでしょうか」


これでも儲けだ。金貨5枚だぞ、銀貨で取引しているものが、金貨。


アルヴィンが、突然、声を上げる。


「金貨15枚でよい、30全てだ」


「ただし、あなた方、奴隷商の入手経路を教えてくれることが条件だ」


商人の目が、貪欲に光る。


(5枚じゃなく、15枚も、人間でも、エルフでも幾らでも買える金額、入手経路、金貨15枚ならどこでも逃げられる)


「金貨15枚も、もちろん、お教えしましょう」

「わたしが言った事は内密に、旦那様お願い致します」


なるほど、罪人を盗賊として、訓練し、襲撃か。


商人が、得意げに語る。


「奴隷商人は各国、10や20はいます、当店みたいな大規模なところは、国に1つです」


アルヴィンが、頷く。


「買いに来るのは、貴族か」

「いえ、たいていの方は、城にお使いしている

方々が、ご用命を受けてでございます」


「直接あなた様のように、足を運ばれる方が珍しいです」

「中には、いらっしゃいます。上物エルフや、人間の幼子を」


「獣人は特に安いですし、貴族がお買い求めになるのは、余程の物好き、いや失礼しました」


アルヴィンが、冷笑する。


「なるほど、金貨5枚でも儲けか」


商人が、慌てて手を振る。


「金貨15枚は返しませんよ」


アルヴィンの手が、剣の柄に触れる。


「入らん。くれてやる。一つ最後に、俺がここに来た事は忘れてくれ」


剣をちらつかせて言い放つ。商人の額から汗が滴る。


「もちろんです、わかりました。商人は利益さえでば、嘘でもなんでもつきますが」

「今嘘をいうと、命が無いというくらいは、わかります」

「それでは取引成立と言事で、すぐに準備いたします」


外に出る前に、アルヴィンは獣人たちの目に手をかざす。


――シュウ。


柔らかな光が、彼らの視界を守る。


暗闇でどれくらい居たのかは知らないが、いきなり外の光では目がつぶれてしまう。


アルヴィンが、リリアに呟く。


「リリア、すまない、結局拉致の救出はできなかった」


リリアの目が、優しくなる。


「いいにゃ。既に、言いたくないけど、助けられなかったにゃ。それでも、獣人30名、ありがとうにゃ」


ダークエルフが居るが、助けてあげたいが、今は獣人の国を助ける事に注力している。

入手経路が分かった。

世に奴隷商を有象無象いることも、人間ですら売り物、いずれまた来るであろう。



アルヴィンが、手をかざす。


――治癒。


痛みを和らげ、気持ちを正常化に。光があたり一面に広がる。

獣人たちの体が、ゆっくりと癒えていく。


鎖の跡が、薄れ、目が輝きを取り戻す。


一人の獣人女性が、涙を零す。


「ありがとう……光が……」


アルヴィンが、静かに言う。


「これで獣人の村に戻ろう」


――シュウ。


光が渦を巻き、救出した30名とリリアは転移した。


***


村の広場に、光が降り立つ。だが、静寂が広がる。


リリアの鼻が、慌てて空気を嗅ぐ。


「おかしいにゃ、誰も居ないにゃ?」


!?


「御城にゃ!それと、なんだ沢山の人間、沢山、え?何この数、人間が大群で攻めてきているにゃ」


御城のほうに、急がなきゃだめにゃ。


アルヴィンの目が、遠くの空を睨む。


(獣人30名を連れて移動するには時間がかかる)


アルヴィンが、手をかざす。


――シュウ。


大きな大きな絨毯が、地面に広がる。


魔法の絨毯、風を操る手品。リリアと救出した獣人を乗せ、


アルヴィンが、命じる。


「それに乗って、リリア、においがするのはどっちだ」


リリアは指をさす。


御城の方向へ。


アルヴィンが、頷く。


「わかった、リリアはそれに乗って、空からついてこい。俺は先に行く」


――シュウ。


絨毯が、遠い空に飛ばされる。風を切り、獣人たちの叫びが響く。


「アルヴィン様!」


とたん、アルヴィンの姿は見えなくなった。


光の奔流が、彼を包み、消える。

双剣の柄が、背中で輝く。


人間軍の影が、大地を覆う。

100万の足音が、雨季の闇を震わせる。


リリアの心に、祈りが満ちる。


[アルヴィン、待っててにゃ……!]


この買戻しが、革命の新たな火種を灯すとは――



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