第17話 双剣
光が渦を巻き、 二人は最後の人間国に転移した。
だが、予想外の場所だった。埃っぽい部屋、壁一面に本棚が並ぶ。
アルヴィン・ド・ヴァルモンの目が、細くなる。これは、なんだ。
二つの剣――眩いばかりではない。どう表現してよいのか、わからないが、見たこともない。
秘めた力を感じ取った。
リリアの耳が、ピクリと震える。
(?転移するのを間違えたにゃ?)
「ここ、沢山の本があるにゃ」
アルヴィンが、指を唇に当てる。
「し!静かに」
「頭の中で会話しよう」
「ここにある本、リリアは読めるか、文字。人の気配は感じられないから、大丈夫だ」
リリアの心に、返事が響く。
[読めるよ、何か読むのかにゃ?]
アルヴィンが、一冊を指す。
「その手前にある、一冊読んでもらえないか。聖職者が貴族に教える事が書いてある」
リリアが、本を手に取る。
ページをめくり、声にならない叫び。
「わかった。え?、そんな酷いにゃ」
「亜人は人間を食い散らかし、滅ぼす。亜人は悪である。人間は亜人をないがしろにし、
いつの日かこの世から消し去る」
「そうでなければ、我々人間は亜人に食い殺される。亜人は人間を犯し、食べ、それで生きている」
リリアの目が、涙で曇る。
「うそにゃ!亜人は、人間と争わないし、食べるなんてこと無いにゃ、なんでこうなるにゃ」
アルヴィンの胸に、確信が走る。
「やはりな。その教えが長い年月、人間に教えられる。同じ教えを子々孫々と」
「教えがそれであれば、無知な人間は、その教えこそ正しいと思うだろう」
リリアの心が、怒りに燃える。
[全て間違っている、この本を捨てるにゃ]
アルヴィンが、首を振る。
「本を捨てても意味が無い。それが教えである限り、人間は変わらない」
「教えの根本から変えなければ」
「その他も読んでもらえるか」
リリアは頷き、別の本を手にすると、言葉を失った。
「聖職者が神であり7つの国にそれぞれの信仰する神がいる」
「聖職者が何よりも問うとき存在であり、次に国主、軍人、商人」
「村人は亜人と変わらず」
「聖職者の行いは、何処の誰であっても咎めることを禁ずる」
「国王であっても……」
リリアの声が、震える。
「つまり、人間の中でも、村で生活している人も、亜人と同じように採取される側」
「酷いにゃ、獣人は平等にゃ。人間はおかしいにゃ」
アルヴィンの心に、決意が固まる。
(やはりそうなのか、間違いではない。人間の行いは正しくないいや、
聖職者の教えは正しくは無い)
「嫌な思いをさせてすまない。人間が何故、酷いことをするのか、それは教えそのもの」
「この教えが正しいと、刷り込まれるから」
リリアの頭の中で、叫びが爆発する。
[聖職者を全てこの世から排除せねば]
アルヴィンが、部屋の奥を指す。
「ここから、奥に、頑丈な鍵がかかっている部屋がある、そこに転移する」
――シュウ。
光が走り、二人は新たな部屋へ。そこは、宝物庫であった。
財宝が所せましと、眩いばかりに。金貨の山、宝石の輝き。リリアの目が、輝く。
「金貨が一杯にゃ、見たこともない綺麗な石もあるにゃ」
「手にもっていけないにゃ、少しだけなら、え?いいのかにゃ?」
リリアは気まずそうに、アルヴィンを下目使いで見る。
アルヴィンが、肩をすくめる。
「持てる範囲であれば、持って行ってよい。これらも採取したものだろう」
リリアは金貨と、眩い光を放つ石を数個、袋に詰める。アルヴィンは別の所を歩いて行った。一番奥である。
頑丈に鎖がかかっており、何重にもかけられていた。そこには、双剣が光り輝いていた。
これは、余程の業物ではないか、そう感じさせた。いままで見た剣と明らかに違う。頂いていこう。
アルヴィンが、手をかざす。
――シュウ。
鎖は解かれ、二本の剣を背中にしょった。
リリアの目が、丸くなる。
「まぶしいにゃ、その剣、宝石みたいな剣にゃ」
アルヴィンが、微笑む。
「もってみるか?」
剣をリリアに渡すと、
リリアはあまりの重さに、体から地面に倒れこんだ。
「なんにゃ、この重さ、こんな重い剣はじめてにゃ」
にゅにゅにゅにゅぅーーふぅー
「持てないにゃ」
アルヴィンは剣を軽々と取り、背中にしょった。
リリアの声が、驚きに満ちる。
「え?アルヴィン、凄いにゃ、かるがると」
アルヴィンの心に、満足が広がる。
(収穫だ)
「町にいこう、そこが最後だ。転移するぞ」
――シュウ。
光が走り、二人は町に着く。それは賑やかであった。商業が発達しているのである。
人間たちが沢山、沢山。どこをみても、人、人、人で町は盛り上がっていた。
商人たちの声が、響き合う。果物、布地、武器――活気が満ちる。
その一方で、遠く離れた、すみに、陰湿な店が立ち並んでいたのであった。
鎖の音が、かすかに聞こえる。
リリアの鼻が、震える。
[あの匂い……また、か]
アルヴィンの手が、双剣の柄に触れる。この剣が、革命の鍵になるか――




