第12話 リリアの嗅覚
「――匂う! 裏切りの匂いだにゃ!」
獣人国の噴水広場に、リリアの叫びが響く。朝日が獣人たちの毛皮を照らし、剣と爪の訓練音が響く。18歳の姿のアルヴィン・ド・ヴァルモンは欠伸する。「眠いな。」 ミーナとリナが寄り添う。「アルヴィン、気をつけて!」
リリアの鼻が震える。「遠くにゃ! あっち、強い匂いだにゃ!」
ジュライン、獣人戦士がアルヴィンを睨む。「人間め! また娘を奪う気か! 一か月前、俺の二人の娘が人間に拉致された! お父ちゃんと呼んで肩車した子が、消えたんだ!」
ガレンが肩を落とす。「俺のせいだ。ドワーフとの行商で村を空にした。すまねえ、ジュライン。」
ギワンが呟く。「俺が残るべきだった。悪かったな。」
アルヴィンは欠伸する。「獣人国を獣人が守らなきゃ、誰が守る? 自分の国だろ。」 獣人女性、エルフ、聖職者の闇が蘇る。「俺は去る気はない。人間の国で学んだ武術、学問を叩き込む。ミーナもな。」
ミーナが頷く。「私も教えるよ。獣人国を強くして、誰も奪われないように!」
ジュラインが剣を地面に叩きつける。「ありがたいが、俺は今すぐ娘を助けたい! 一か月経つ! 一人ででも行く!」
広場が静まる。ジュラインの目が潤む。「諦めろだと? 諦められるか!」
アルヴィンは思う。(面倒だな……でも、放っておけない。) 「ジュライン、娘の衣類は? 嗅覚の鋭い奴は?」
リリアが胸を張る。「私だにゃ! 一番鼻が利く!」
ジュラインが娘の服を渡す。リリアが嗅ぐ。「――匂う! 遠く、あっちだにゃ!」
アルヴィンがリリアに手を振る。――シュウ。光が走り、リリアの嗅覚が増幅される。「どうだ?」
リリアの耳が立つ。「強い! でも、遠すぎるにゃ!」
――シュウ。アルヴィン、リリア、ジュラインが夜空に浮かぶ。月光が獣人国の森を照らす。リリアが叫ぶ。「あっちだにゃ! 遠く、娘の匂い!」
ジュラインが震える。「本当か!? 俺の娘が!」
ガレンが地上で叫ぶ。「無茶だ! 何日かかる!」
ミーナが呟く。「アルヴィンなら、すぐよね?」
アルヴィンは欠伸する。「面倒だな。ジュライン、声も物音も出すな。約束できるか?」
ジュラインが頷く。アルヴィンがミーナに手を振る。――シュウ。ミーナの身体能力が限界まで高まる。「ミーナ、俺がいない間に何かあっても戦える。残ってくれ。」
ミーナが頬を膨らませる。「嫌よ! 私も――!」
ジュラインが頭を下げる。「ミーナさん、頼む。村を守ってくれ。」
リナがミーナに寄り添う。「私も残るよ。アルヴィン、気をつけて!」
ミーナがしぶしぶ頷く。「……わかった。アルヴィン、絶対戻ってね。」
※※※
アルヴィンはリリアとジュラインに手を振る。――シュウ。光が走り、3人は匂いの方角へ転移する。森の奥、闇が蠢く。リリアの鼻が震える。「近い! 娘の匂いだにゃ!」
ジュラインが拳を握る。「俺の娘……!」
アルヴィンは欠伸する。「正義は獣人国を守るものだろ? 娘を奪う奴は、俺が許さない。」
18歳の青年は知らなかった。この転移が、内通者の闇を暴き、獣人国の革命を加速させることを。人間の罪、獣人の希望。正義を求める旅が、今、動き出す。




