天敵
ある時、突如人類の天敵と言える種族が現れた。
それらは人類を食料とするのではなく、明確に人類を殺す目的で生きていた。
そう。
まるで人類を滅ぼすことが使命であるかのように。
無論、人類側もあらゆる手段を用いて天敵に対抗をしようとした。
それこそ最後には核の力さえも用いようとしたが、結局のところ敗北を喫した。
今や、人類は全盛期の人口の0,1%にも満たない数しか残っておらず、それらもまた天敵から逃れるようにして隠れて生きている。
そんな人類たちを天敵は無情にも探し出して殺しているのだ。
生存競争の果てに負けた種族に対する扱いとしては不自然なほどに、何百年もかけて人類を滅ぼし尽くそうとしている。
天敵側がこんなにも必死になるのは何故か。
決まっている。
今まで何があっても滅びることのなかった人類を恐れているからだ。
しかし。
「もう良いのではないか?」
ある時、天敵の長が言った言葉に彼らはどよめく。
「この百年。どこを探そうとも人類の姿はなかった。最早滅び尽くしたと言えるだろう」
「しかし、確証はありません。もしかしたら人類は生きているのかも……」
「人類を恐れすぎだ。仮に生き残っていたとしても我らはここまで栄えているのだ。よもや滅ぼされることなどあるまい」
長の言葉に反論の言葉はあったが、日毎にその声は消えていき、やがて彼らの総意として『人類は既に脅威はない』という結論となった。
なってしまったのだ。
彼らは忘れてしまったのだ。
人類はただの一人でも残してしまえば状況を覆しうる可能性を持つ種族だということを。
そして、それがために自分達の祖先は人類を殺し尽くすことを目的として人の天敵になったということを。
人類に代わりこの星を支配した種族が、ある日、宇宙に逃げ延びた人類の一族に戦争を仕掛けられ日が来るのだが、それはまた別の話だ。