表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/27

胃袋つかむぞ計画

 


 

 

「誠に、申し訳ございません! 」

 

 ラリッサは、魔王の前でひれ伏していた。

 

 

 

「そなた…、魔界を乱すためにやってきたのか? 」

 

 魔王はあきれ顔で言った。

 

 

 

「いえ! とんでもございません。畑のことは…事故、事故でございます! 」

 

 

「アルリネは、畑の修復におわれているぞ」

 

 

「はい…、大変、申し訳なく思っております。私もすぐにお手伝いを…」

 

 

「いや、いい! 余計な手を出すな」

 

 

「そんな…。それでは私の計画が…」 

 

 

「計画? 」

 

 

「い、いえ。なんでもございません」

 

 

  

(私が魔界で生きていくための食料を確保しつつ、私の作った極上の魔菜で料理を作って、魔王の胃袋をつかむのよ)

  

 

「畑仕事は、どうぞお許しください。アルリネに、魔界でのやり方をきちんと教わりますから…」

 

 


(王女は、今、計画と言ったな。やはり私の弱点を探って、魔界を壊滅でもさせる気なのか? 


 それなら自由にさせて時間を与えるよりも、畑仕事をさせて、アルリネやメランに見張らせておくほうがいいか…)

 

 

「わかった。せいぜいアルリネに、教えを乞うがいい。もしまた変に霊力を使ったら、ただではおかないからな」

 

  

「ありがとうございます! 」

 

 

(ああ、よかった。魔王様の胃袋つかむぞ計画が台無しにならなくて。そうだわ、それなら畑だけじゃなくて…)


 

 


 

*******



 

 


「ねえ、魔王様のお好きな食べ物ってなにかしら? 」

 

「魔王様が好む味付けは? 」


「魔王様がよく飲まれるお茶やお酒は? 」

 

 

 

 

 ラリッサはあれから、連日、城の厨房に通っている。

 

 厨房のスタッフに、魔王様の好みの料理や食べ物を聞いているのに、誰もラリッサに答えようとしない。

 

 

 

(きっと、何も話さないようにと言われてるのね。それならそれでいいわ。厨房の仕事を見ていれば、そのうち大体わかってくるんだから)

 

 

 

 というわけでラリッサは、ほぼ毎日、厨房で、料理人たちや厨房スタッフの様子を見つめている。

 

 

 

 

「料理長、あの人間の王女に、毎日じっと見つめられて、やりにくいっす~」

 

 

「我慢だ、我慢。一応、モスート様に苦情は申し上げてある。しかし基本的にはあの王女を好きにさせて、何かおかしいことをしたらすぐに報告しろということだ」

 

 

「はあ…。しかたないっすね…」

 

 

 

 

 毎日、通い続けているだけあって、ラリッサはそのうち、どんな食材があってどんな風に調理されているか、調味料はどこに何が並んでいるか、皿やカップ、カトラリーなどはどこにあって、料理によってどんな風に使い分けられているか、などを覚えてきた。

  


 また、ガルムやマーマイトなどラリッサが知らない単語が飛び交うが、見ていると調味料や魔ハーブだということがわかった。

 

 ラリッサは隙をみて、いろんな調味料をこっそり味見した。

 

 

 

(なるほど。これはこういう味で、下味に使うみたい。これはこんな味で、煮込みには良く使ってるわね)

 

 

 


「料理のメインが出来るぞ。皿、用意しろ」

 

「ガルムを持ってこい」

 

「マーマイトが足りないぞ」

 

 


「はい、どうぞ」

 

「お、サンキュ」



「お皿、準備できました」

 

「おう」

 



 忙しい厨房で、そんな声が飛び交うと、ラリッサはつい皿を出したり、調味料を渡したりしてしまっていた。

 

 そして厨房のスタッフも、ついうっかり、いつのまにかそれを受け入れてしまっていた。

 

 

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ