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王女の魔王との和平交渉①


 

 

 王女としてのラリッサの覚悟に負けるかたちで、ロスヴァ―王国は、魔界への使者としてラリッサ王女を遣わすことになった。

 

 

 

「おひとりで大丈夫ですか? なぜ私にお供させていただけないのです? 」

 

 

「エリアスは勇者として魔族を倒してきたわ。そんなあなたを連れていけば警戒されて、隙をみて武力行使に出るのではと思われるかもしれない。 

 

 丸腰の私がひとりで行ったほうが、相手を安心させるはずよ」

 

 

 そんな理由をつけて、ラリッサ王女はひとり、魔界へ赴くことになった。

  

 

 

 ラリッサは、結界樹のある両国の境界までやってきて、言葉を述べた。 

  

 

「魔王が支配する魔界よ。長き戦いを終わらせるための和平の使者を受け入れよ」

  

 

 すると、声だけが響いてきた。

 

 

「和平の使者という言葉に嘘偽りはないな。もし言葉と真実が違えば、そなたのその口は二度と真実を話せなくなる」

 

 

「誓って嘘偽りはない。私を魔界へ、遣わせてください」

 

「良かろう」

 

 

 結界がゆらりと歪み、ラリッサは魔界へと導かれた。

 

 

  

 

 

**********




 気がつくと、ラリッサ王女は大きな扉の前に立っていた。

 

 そこはどうやら、魔王の城の中のようだった。

 

 

 ラリッサのそばには、魔王ではないが、黒髪の、鼻が高く耳がとんがって、頭にはらせん状に伸びた角が生えている、とても背が高い男が立っていた。

 

 

 

(なあんだ。魔王じゃない…。まあいいわ。どうせすぐに会えるんだから)

 

 

 少しガッカリしながらも、ラリッサ王女はお辞儀をして挨拶をした。

 

 

「通してくださり、ありがとうございます。私はロスヴァー王国の王女、ラリッサでございます。和平の使者として参りました。魔王様にお目通り願います」

 

 

「ラリッサ王女、ようこそ。私は魔王様の側仕えをしておりますモスートです。魔王様はこの扉の向こうです。どうぞお入りください」

 

 

 ギィ、と音を立てて、扉が開かれた。

 

 

(この向こうにいるのね~。ああ、楽しみ♡)

 

 ラリッサの期待は膨らんだ。

 

  

 扉の向こうは、奥まで細長く広がる謁見の間だった。

 

 最奥の数段高いところに、魔王が豪華な玉座に腰かけている。

 

 

 その両隣には軍人とおぼしき逞しい魔族がひとりずつ控えていて、段下の両脇にはさらに魔族が、そしてラリッサのいるところから玉座までの両側には、魔族の兵士が等間隔に警護についている。

 

 

 魔族に囲まれて、さすがにラリッサもごくりと喉を鳴らした。

 

 が、その緊張も、魔王を認識したとたんに綺麗さっぱりほぐれてしまった。

 

 

 

(あの人だわ。間違いない。長い黒髪に金の目ですらりとした背格好。

 

 あー、なんて格好いいのかしらぁ! 来て良かった♡ )

 

 

「ラリッサ王女? どうされましたか。どうぞ奥へお進みください」

 

「あら、失礼」

 

 

 モスートに促されて奥へ行く。



 

「魔王様。この度は和平交渉に応じていただき、誠に感謝いたします」

  

「うむ。長きにわたる戦いは、双方にメリットはないからな」

 

(ああ~。声も素敵! )

 

  

 うっとりしながらも、ラリッサはロスヴァー王国からの和平条件を述べるとともに、それをしたためた文書を渡した。

 

 


 魔物たちの攻撃をやめてくれれば、そのあいだに錫杖によって仮の結界を張ること。

 

 仮の結界を張っておいてから、結界大樹と結界樹の力を回復させ、元通りにするということ。


 

 

「ふむ。まあいいだろう」

 

 魔王は頷いた。ラリッサはさらに続けた。

 

 

「それともうひとつ条件がございます。それは…」

 

 ラリッサはコホンと咳払いしてから言った。

 

 

「それは…ロスヴァー王国の王女である私、ラリッサを、魔王様のお側にお仕えさせていただくことです! 」

 

 

 言い切ったあと、ラリッサは期待をこめた目で魔王を見つめた。

 

 

 

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