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乙女な王子と魔獣騎士【WEB版】  作者: 柊遊馬


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第38話、人形退治


「……あの状況でよくすらすらと言えるよ」


 ラウディは、メイアに黄金甲冑を装着してもらいながら言った。ジュダも鉄で補強された革鎧で身を固めている。


「あなたが出るまでもないと思いますが?」

「まさか。私も最上級学年の生徒だよ」


 ラウディはメイアから、魔石銃を受け取る。先日の遠征授業で彼女が持っていた魔石銃だ。


「それはブロンピュール式では?」


 使うのはタイラル式。魔石を加工した実弾を撃ちだす魔石銃では、誤射した場合、騎士生の革鎧程度ならあっさり貫いてしまう。


「私の銃はどちらも使えるように出来てる」


 そう言いながら、ラウディは装填口に青色の魔石を入れ、銃弾を打ち付ける雷石部分をはずした。その手の改造に一分とかからなかった。


 隣クラスの騎士生たちも装具を調える。そのうちの一人が、ジュダにタイラル式の魔石銃を寄越した。銃を受け取りつつ、ジュダは腰にロングソードを下げる。


「剣は必要か?」


 ラウディが小首を傾げれば、ジュダは魔石銃を点検する。


「いざ殴り合いの距離で対峙したら、どうするんです?」


 そこへハーラン教官がやってきて、声を張り上げた。


「ようし者ども! これより同期生たちの救助に当たる。前衛、盾を掲げよ! 麻痺程度の魔法なら防げるはずだ! 後衛は魔法人形を見かけたら蜂の巣にしてやれ!」

「はいっ!」


 騎士生たちが威勢良く答えた。教官も違えば、生徒たちの雰囲気もまた変わるようだ。


 ハーラン教官はジャクリーン教官に頷く。そのジャクリーンはジュダとラウディを見た。


「ラウディ殿下。くれぐれも前には出ないでください。……ジュダ、殿下をお守りしろ」


 言われるまでもない。ジュダは頷いた。


 ハーラン、ジャクリーン両教官を先頭に、騎士生二十六名が校庭へ飛び出した。目標まで百メータほど。魔法人形の案山子のようなシルエットはなし。


 やがてジュダのクラスの騎士生たちが見えてきた。倒れたままの者もいるが、何人かが起き上がっている姿が見えた。


「どうやら麻痺弾だったようだな」


 ジャクリーン教官は安堵する。そのまま騎士生たちの許に駆けつける。


「無事か?」

「ジャクリーン教官……」


 暴走に巻き込まれたクラスメイトたちの中で、リーレが相好を崩した。


「ひどい目にあいましたよ。……何だか騒ぎになっているようですね」

「お前たちが無事で、ホッとしているよ」


 周囲を固める隣クラスの騎士生たち。


「これから人形どもを退治しに行くのだが……お前たちも来るな?」

「それは願ってもないことです」


 リーレが好戦的に笑みを浮かべれば、他の騎士生たちも頷いた。だが何人かの騎士生はまだ動けずにいた。隣クラスの騎士生が動ける者に魔石銃や装備を与えていく。


「これで数の上ではこちらが敵を凌駕している。とはいえ、油断は禁物だ。数名単位の班を組んでお互いカバーしながら敵を捜索する!」


 ジャクリーンが指示を出す。


「我々は学校東側から、ハーラン殿、あなたのクラスは西側から」

「おう!」


 ハーラン教官は武人らしく応じた。彼は自分のクラスの生徒を引き連れ、元来た道を引き返す。


 ジャクリーン教官は残った騎士生を見回した。麻痺してまだ万全でない者を除いて十四人ほど。ジュダやラウディ、リーレもその中に入っている。


「それではこちらも仕事に掛かるぞ。隊を二つに分ける。ジュダ、お前は第二班を指揮しろ。第一班は私に続け」

「お、俺ですか?!」


 まさか自分が指名されるとは思わず言えば、ジャクリーン教官は微笑した。


「当然だろう、上位騎士生」


 教官はそう言い残すと、七名をつれて校舎へと入っていた。ジュダは残った面子を確認する。


 ――ラウディ、リーレ……マルトー、リアハ、メラン……サファリナ。


 思わずため息をつきたくなった。ラウディ、リーレを除くと、全員貴族生だった。


「あー、とりあえず装備の確認をする」


 なんとも居心地が悪かったが、ジュダは第二班の面々を見回した。


「魔石銃持ちは、俺、ラウディ、メラン。盾持ちはリアハとマルトー。……リーレは」

「これでいい」


 リーレは自信満々に模擬戦前に配られた魔石杖を掲げて見せた。確かにリーレは魔石魔法の詠唱が最短二秒だと言っていたから、魔石銃でなくても充分対抗できるだろう。


「サファリナは――」

「わたくしも杖でいいですわ」


 そう言いつつ、サファリナの表情は冴えなかった。何か思うところがあるようだが、黙っているところを見ると、言いづらいのだろう。銃が嫌とかそういう理由だろうか。


「校舎の外側から中庭へと回る。マルトー、リアハは前衛。人形が現れたら盾を構えて敵の注意を引く……マルトー、その……気をつけてな」


 ジュダは、身長二メータの巨漢を見上げた。彼の体格とすると、一メータほどの大型盾ですら小さく見える。


「残りの者は後方から狙撃。敵から撃たれそうと感じたら、盾役の後ろか遮蔽の裏に飛び込むこと。何か質問は?」


 騎士生たちは首を小さく横に振って答えた。ジュダは頷いた。


「前進だ」


 校舎の壁に沿って、中庭方面へ踏み込む。二列の縦隊。片側はリアハを先頭に、ジュダ、サファリナ。もう片方にはマルトーを先頭に、ラウディ、リーレ、メランの順番だ。


「正面上! 屋根!」


 リーレが叫んだ。顔を上げれば、案山子じみた人形が、魔石の設えられた顔をこちらに向けて屋根に張り付いていた。


 なんて器用な真似を――ジュダ、メラン、ラウディが魔石銃を構えたその時、魔法人形をパッと屋根から離れ、飛び降りた。


(ほむら)っ!」


 リーレが声を発すると共に、杖の魔石が光り、炎の球を放った。


 魔法人形の単眼が光ったその時、炎の球がその身体を直撃する。一瞬の身震いの後、魔法人形は力を失ったようにその場で動かなくなった。その目のように見える魔石も光を失っている。


「……どうやら魔法で動かなくなるって話は本当らしいな」


 ジュダは溜めていた息を吐き出した。まず一体。盾持ちのリアハに前進を告げた後、ジュダはリーレを見やる。


「いい反応だ。さすがリーレ」

「そりゃ一度やられてるからね。気をつけなさいよ、あいつらの目んところの魔石が光ったら麻痺魔法を放ってくるから」

「了解」


 ジュダは頷いた。

 中庭へと差し掛かる。騎兵訓練用の障害物がある辺りに差し掛かった時、前衛のリアハが声を上げた。


「人が倒れています! 騎士生かも」


 魔法人形にやられたのだろう。槍で付くための的のそばに倒れている者がいた。


「助けないと……」


 メランが銃を下げ、駆けようとする。ジュダは声を荒らげた。


「警戒を怠るな! 敵が近くにいるかもしれないんだぞ!」

「いや、でも敵なんて今――」


 言いかけたメランは、飛んできた電撃の直撃を受け倒れた。――言わんこっちゃない!

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