第83話 ハルク復活!?
久しぶりに夢を見た。
僕が人との距離を置く前の頃の夢だ。
僕の思い出したくない黒歴史の一つ。
どうして今更見るんだろう…。
僕はゆっくりと目を開けた。
視界は良好。
聴覚や触覚も問題ない。
僕とハルクに刺さっていた槍もいつの魔にか消えている。
箱の傷はそのままだが、問題はないだろう。
ハルクは僕を守るように覆いかぶさっている。
ハルクの傷は癒えてはおらず、血が僕の開いた口の中に滴っていた。
僕は間接的にハルクの血を摂取していたのだ。
その時、僕にふいにある考えが浮かんできた。
ハルクも転生者なんじゃ…。
夢に出てきた不良高校生、あいつがひょっとしてハルク?
でも今はそんなことを考えている暇はない。
ハルクは重傷を負っている。
まずは治療してあげないと。
【癒しの光】
僕は僕の持っている最大の回復魔法をハルクに使った。
ん?…回復効果がいつもと違う。
いつもよりも傷の回復が早いのだ。
そういえば、アップデートしていると言っていたな。
僕の能力が強化されているのかもしれない。
後でステータスをチェックしてみよう。
【癒しの光】を使用し続けるとハルクの傷口は完全に塞がった。
ハルクの体中にあった擦過傷なども、きれいに消えてしまったのだ。
これでもう安心。
意識を失っているハルクを待つだけだ。
グ~。
安心したら途端にお腹が空いてきた。
ハルクが起きるまでの間、腹ごしらえをしようか。
幸いにもここは宝物庫だ。
財宝やミミックがそこら中に散乱している。
まずは、この部屋の物を食べるとするか。
僕は部屋に散乱している財宝や宝箱を食べ続けた。
金や銀、硬貨、宝石、剣や盾などの装備品など、この部屋にある全ての物を食事対象としたのだ。
食事中に何体ものミミックにも襲われたが、奴らは僕の敵ではない。
僕は彼らをも食べ返した。
しかし、一向に僕の空腹感が満たされることがない。
僕のお腹?は鳴るばかりだ。
ハルクの様子はどうだ?
もうそろそろ意識を戻しても良いころだが。
僕は一旦食事をやめ、ハルクの元に向かった。
ハルクは先ほどと変わらず、その場に倒れている。
ピクリとも動いていないのだろう。
彼は一ミリも動くことなく同じ姿勢を取り続けていた。
よっぽど疲れていたのだろう。
彼は僕を守りながらここまで来たのだ。
彼の友情には本当に頭が下がる。
もう少し寝かせてあげたいところだが、そろそろ動かないとリュウや他の敵に見つかるかもしれない。
僕はうつ伏せに寝ているハルクの背中を揺すってみた。
反応がない。
ハルクはずっとうつむいたまま、動く気配すらないのだ。
それに、体も冷えている。
宝物庫の温度は他の階層よりも若干寒いのだ。
このままにしておけば、風をひいていしまうかもしれない。
(おい、ハルク。そろそろ出発しよう!)
僕は再度ハルクを揺すってみた。
やはり何の反応もない。
これはおかしい。
(おい、ハルク!)
僕はハルクを強めに揺すってみた。
しかし、ハルクからの反応はない。
僕の舌にハルクの体の冷たさが伝わってくる。
まさか…。
僕はハルクの手を握ってみた。
ハルクの指は硬直しており、まるで鉛感を握ったみたいに一切の柔らかさがない。
背中と比べ、手は氷のように冷たくなっていた。
僕はうつ伏せになっているハルクをごろんと転がし、ハルクを仰向けにさせた。
ハルクの目はしっかりと開いていた。
しかし、瞳孔がしっかりと開いており瞬きひとつしない。
呼吸も無く、口は半開きとなったままだ。
手足だけではない、全身が明らかに硬直している。
ハルクのようでハルクではない。
それが僕がハルクの顔を見た時の印象だ。
ハルクは死んでいる。
ハルクは僕を守って死んでしまったのだ。
彼はもう還ってはこない。
僕はその事実を受け入れられずにいた。
短い間だったが、ハルクとは濃密な時間を過ごした。
敵味方に分かれて戦ったこともあった。
ハルクは僕を助け、僕もハルクを助けた。
お互いの意見がぶつかることもあったが、ハルクはずっと僕を支え続けてくれた。
リュウとの闘いも、ハルクは自分の身を犠牲にして助けてくれた。
ハルクはこの世界で出来たたった一人の友人なのだ。
もっと話したいことがある。
ハルクと一緒にもっと戦いたかった。
しかし、もうハルクはいない。
クロコもリリアもいない。
僕はまた独りぼっちになったのだ。
・・・・。
いや、待てよ。
僕のスキルの一つにネクロマンシーがある。
クロコの時と同じように、これでハルクを復活させればいいじゃないか。
幸いにも十分血を出し尽くしたようだ。
これなら【死者使役】が使用出来るだろう。
ゾンビとなってしまうが、この際仕方がないだろう。
例えゾンビとなっても、僕とハルクの絆は変わることはないはずだ。
僕はハルクに向かって【死者使役】を使用した。
僕とハルクは黒い光に包まれる。
クロコの時と同じだ。僕はこのままハルクの精神世界へと移動するのだ。
ビー!ビー!
甲高いビープ音が響き、僕らを包んでいた黒い光はかき消された。
「【死者使役】が拒否されました。エラーコード#771を参照ください。」
なんだ、エラーが起こったのか?
くっもう一度だ。
僕は再度、【死者使役】を実施した。
しかし、同様にビープ音が聞こえ、エラーコード#771が表示される。
僕はエラーコード#771の内容を確認した。
「#771【死者使役】はプレイヤーには使用できません」
「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!
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