第79話 リュウの本当の狙い
外側から箱に鍵をかけられた僕は、自分では蓋を開けることが出来なかった。
箱を中から揺すってみても、床に強く倒れこんでも、壁に突進しても、蓋は決して開くことが無かった。
ミミックの攻撃は蓋を開くことによって行われる。
特に僕のレアスキル【暴食】は蓋が閉じた状態では反応すらしないのだ。
僕は何とか蓋を開けようと、今できそうなことは全て試してみた。
しかし、何をしても蓋が開きそうな気配すらなかった。
(無駄なあがきや、光。その箱は内側からは絶対に開かへん。
鍵を閉めた俺にしか開けることが出来ひんのや。)
(一体お前のスキルは何なんだ!?)
僕はリュウに質問する振りをして解決策を探っていた。
リュウが鍵を自分から開けるわけがない。
ただ、質問を続ければポロっとヒントのようなものが出るかもしれない。
(これは俺だけがもつ超レアスキルや。このスキルを使えば、どんな扉も鍵も開けたり閉めたりし放題や。
初めてこのスキルを得た時は、なんやこの役に立たへんスキルと思ったけどな、行きたいとこはどこでも行けるし、お宝も簡単に到達できるんや。)
(族長の宝物庫に忍び込めたのもそのスキルと使ってなのか?)
(そうや。結構隙が多い宝物庫やったからちょろかったで。簡単に忍び込めたわ。
でもこのスキルが役に経つのは盗賊の真似事だけやない。
対ミミック戦の秘密兵器や。)
確かに大抵のミミックの箱には鍵穴がついている。
でも一体だれが、ミミックに鍵をかけようと考えるんだ。
(この世界はなぁ、ミミックが優遇されてんねん。
通常なら苦労して覚えるはずのスキルが、相手を食べるだけで獲得できるやろ?
しかも上限なんてないから、いくらでも取り放題や。
それにな、俺らが使ってるアバターポイントって他の種族には無いらしいで。)
確かにそれは僕も疑問に思っていた。
僕が一気に強くなれたのもスキルのおかげだ。
スキルのおかげで、圧倒的不利な状況を乗り越えてここまで来れた。
スキルで敵を殲滅し、倒した敵を全て食べることで、僕はチートとも言える強さを手に入れたのだ。
特に【暴食】を覚えた辺りから、僕の戦い方は大幅に変わった。
敵だけでなく、あらゆるものを食べれるスキル。
常識さえも食べてしまえるのだ。
さらにミミックが持つ固有スキルもチート級だ。
【魔眼スキル】は、防御無視で相手に大ダメージを与えられ、【重力操作】を極めれば、このダンジョンごと壊してしまえるらしい。
さらにまだまだ未獲得のチート級固有スキルもあるという。
ダンジョンのバランスすら破壊してしまえるスキル。
一介のモンスターに与えるべきスキルではないのだ。
アバターポイントにしてもそうだ。
ポイントさえ支払えば、この世界にはないはずの現代兵器まで購入できる。
プレイヤーには誰でも共通のポイントと思っていたが、実際はそうでは無かったらしい。
(ミミックは俺らがいる世界の中の最強種の1つらしいで。
ただ、ここの創造主はミミック同士で争うのを楽しんでいるらしいわ。知らんけど。
ほんま悪趣味やで。)
確かに思い当たる節はいくつもある。
でも、僕はそうじゃないと思ってた。そう信じようとしていた。
しかし不可解なのは、なぜリュウが僕を閉じ込めたかだ。
リュウは僕の力を削ろうとしていた。
それは紛れもない事実だ。
リュウが僕の力を削ったのは、僕を閉じ込めやすくするため。
そこまでは理解できる。
ただ、この後だ。
リュウは一体僕をどうしたいのだ?
(リュウ、一体僕をどうするつもりだ。
獣人たちに渡して、宝を得るつもりなのか?)
(どうするつもり?そんなん決まってるわ。
獣人たちに光を売らんでも、あの程度なら俺一人で対応できるわ。
初めからあいつらに光を渡すつもりはないねん。)
だとしたら何のために?
僕はリュウに尋ねようとした瞬間、最悪のビジョンが脳裏をよぎった。
まさか、僕を食べるため…!
体が急に凍りつくような寒気を感じた。
僕が食べられる!?
そんな、まさか?
(光ももう分かってるやろ?
俺がお前の力を奪っていた理由…。
そや、お前を食うためや!)
リュウの一言が、僕の頭の中で何度も何度も繰り返された。
僕を食べる!?
友達になれそうだと思ってたリュウに食べられる。
僕はリュウの発言を信じられない、信じたくはなかった。
(相手を食べても通常1つしか手に入らないスキルが、ミミックを食べることで3つになるんや。
しかも普通はスキルの獲得はランダムやけどな、プレイヤーを食べたら自分でスキルを選べるんや。
利用しない手はないやろ?)
確かに僕がリッチを食べたきに、スキルを自己選択できた。
ひょっとして初めからこれを狙ってたのか?
リュウが僕の仲間になった本当の理由は、僕を食べるため?
(俺は光のスキルが欲しいんや。
光の【暴食】さえあれば、俺は誰よりも強くなれる。
ダンジョンの奥にいるダンジョンマスターにも勝てるんやで。)
(そんなの自分勝手だ!リュウなら僕を食べなくてももっと強くなれるだろ?
人を騙してまで、仲間を失ってまでやるほどのことなのか?)
僕は自分の思いをリュウにぶつけた。
しかし、まったく気にする様子すらないリュウ。
(光、なんか誤解してないか?
ミミックの本質は、騙す、奪う、食べるやで?
そもそもミミックには仲間なんて必要ない。
基本的にミミックはソロで動くもんや。
もうこれ以上話しても無駄や。
光、さっさと俺に食われてくれ]
そう言うとリュウは僕にゆっくりとにじり寄ってきた。
「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!
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