第78話 たとえ邪魔をされても
僕を売ったり、闘いの邪魔をしたりと僕に不利な状況を作ろうとするリュウ。
リュウの狙いは、僕の戦い方やスキルを見ることではない。
僕を消耗させることが目的なのだ。
しかも出来るだけ自分の力を使わず、相手にそれを強いる。
この7階層に来てからも、思い当たる節がところどころあった。
獣神の宝玉を異世界収納に保管させ、そのレアスキルと補正効果を封じたのはその一貫だろう。
そして今は有利に戦っていた僕に、攻撃をしかけてきたのだ。
攻撃といっても直接攻撃をするのではなく、相手が有利に働くように間接的な攻撃がほとんどだ。
重力操作で動きを封じたかと思えば、敵の攻撃を避けた僕目がけて、魔眼で僕を突き飛ばす。
バランスを崩した僕に、獣人たちの攻撃が容赦なく襲いかかった。
今まで楽にかわせていた攻撃が、僕に被弾し始めたのだ。
もちろんリュウがずっと攻撃をしている訳ではない。
しかし、リュウに攻撃をされるかもしれないという警戒が、僕の判断を鈍らせ、動作が一歩遅れるようになってきたのだ。
おまけに族長が遠距離から槍を投げつけてくる。
かわすだけなら訳はないが、威力が桁違いだ。
まともに食らってしまえば、僕とてただで済む訳ではないのだ。
このまま戦闘が長引けば長引くだけ、僕が不利になるだろう。
そのためには魔力やスキルポイントの消費が大きいレアスキルで、短期間で殲滅させてしまわなければならない。
僕は獣人たちに囲まれる前に【逃げるLv6 】を使用。
僕の体は獣人たちの囲みから少し離れたところに瞬時に移動した。
僕を見失った獣人たちだが、リュウは僕の位置が分かっていた。
僕がいる方へ、炎系の魔法をぶっ放した。
これは僕を攻撃するための魔法ではない。
僕の位置を獣人に知らせるものだ。
獣人たちが炎の行く先を見ると、その場所には僕がいる。
獣人たちは全員、僕がいるエリアに向かって走り出した。
もちろん僕は逃げるためだけに、スキルをつかったのではない。
大きなスキルを使用するにはある程度の「タメ」が必要となるのだ。
僕はスキルの中から、【落とし穴】と【暴食】、【相互理解】を組み合わせた。
相互理解もまたぶっ壊れスキルの1つで、スキルの効果を広範囲に広げる硬化を持っている。
僕は襲いかかる獣人たちに向けてスキルを発動させた。
ぐぅぅぅっ
スキルと魔力の減りが早い。
レアスキル同士を組み合わせるので、その消費量は計り知れないのだ。
獣人たちの足元に何十・何百もの落とし穴が現れた。
突然足元現れた落とし穴に、落下する獣人たち。
その落とし穴は異空間を抜けて、僕の口へと繋がっている。
つまり、落とし穴に落ちた者はすべて僕に食べられるのだ。
一回の攻撃で戦力の1/3を失った獣人たち。
その殲滅力に、やつらも恐怖を感じているらしい。
戦意を失いつつある奴らに、族長の檄が飛ぶ。
雄たけびをあげながら、再度やつらは闘争心を取り戻したようだ。
結局全滅させないとこの闘いは終らないのか。
僕は次なる大型スキルを準備し始めた。
魔眼スキルの1つである【爆発】は現在の僕のレベルだと殺傷能力は低い。
あくまで攻撃のつなぎにするためのスキルだ。
しかし、その爆発エネルギーを【物理無視】で爆発させずに抑え込んだらどうなるだろうか?
そのエネルギーの上に更なる爆発エネルギーを加え、徐々に凝縮していく。
その際に【相互理解】を使用し、広範囲化した爆破エネルギーを一点に集中させるのだ。
そうすることで、高エネルギーが瞬時に生成できる。
後は、タイミングを見図り上手く爆発させる。
おそらくミサイル並の威力になるだろう。
僕は魔眼スキルと【相互理解】【物理無視】をフル活用し、高濃度の爆発エネルギーを圧縮させる。
僕の目の前に球体状の爆破エネルギーの塊が出来た。
獣人たちが来る前に、これを出来る限り量産させる。
獣人たちが間近に迫ってきた。
僕は完成した一つの爆発玉(たった今命名)を獣人たちに向かって投げつけた。
爆発玉が地面に触れた瞬間、激しい爆風と爆発音が轟き、獣人たちの一個小隊約30人ほどが跡形もなく吹き飛んだのだ。
激しすぎる威力。大理石の床に大きなクレータが生じ、その威力を物語っている。
爆発玉はまだまだ残っている。
僕は獣人たちの集団に向かって、連続で爆発玉を投げつけた。獣人たちの阿鼻叫喚の叫びが、部屋中に響き渡る。
いつの間にか獣人たちの人数はもう30人ほどしか残っていなかった。
ほとんどの獣人たちが僕の攻撃で死に絶えてしまったのだ。
最後の一個を舌に巻きつけて、獣人たちに向かって投げようとした。
しかし、急に爆発玉が重くなり、僕は思わず最後の1個を床に落としてしまったのだ。
リュウの【重力操作】!
気付いた時はすでに遅し。爆発玉は僕のすぐ下で爆発した。
爆心地のど真ん中にいる僕はかわすことが出来なかった。
まともに爆発を受けた僕は、数メートルも先に吹き飛ばされ床を転がった。
流石のメタルボックスも、爆発のダメージには耐えきれなかったようだ。
箱の前面から下部にかけて大きく損傷した。
幸いなことに上蓋は破損せずに残っている。
以前、上蓋が破損した際には攻撃が制限されて苦しめられたのだ。
僕は急いで起き上がって獣人たちへの攻撃を再開しようとした。
しかし、起き上った僕の前にいたのはリュウだった。
安全圏で傍観したり、僕に攻撃を仕掛けていたリュウが今僕の目の前にいるのだ。
こいつは敵だ。
僕を陥れようとしている。
僕は即座に攻撃態勢をとった。
もうリュウには騙されないぞ。
僕は彼を許すことなんてできない。
(おー、光、なんとか生き残ってんな。やっぱ光強いわ。
俺の負けや。降参するわ。)
リュウは舌を上にあげ、蓋を全開にしながら僕に寄ってきた。
なんだこのポーズは、降参のポーズなのか?
僕は呆気にとられたその瞬間、リュウは僕の上蓋を舌でつかみ、そのままバタンと僕の蓋を閉めたのだ。
リュウ、一体何を!?
カチリ。
リュウは僕の鍵穴に何かを突っ込んだ。
(光、今までありがとうな。でもこれでお別れや。)
何を言っているんだ?
あ、開かない!
僕の箱は蓋が閉まったまま開かない。
まるで蓋がロックされたみたいに。
必死で蓋を開けようともがく僕。
しかし、何度頑張っても蓋はびくともしないのだ。
(光、開かへんやろ?これが俺のレアスキル「鍵」や。)
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