第75話 族長vsミミック
(逃げると勿体ないってどういうことだ?)
僕は禍々しい殺気を帯び始めたリュウに聞き返した。
(そのままの意味や。族長今弱ってるやろ?
倒して食ってしまえばええやん。ごっつ強うなるで~!
それに、ついでにお宝も奪ってしまおうか。
前、盗り損ねたやつあんねん。)
(前、取り損ねた!?)
やはり、魔神の宝玉を奪って逃げたのはリュウ!?
(あの時反撃されるとは思ってなかってん。
俺のメタルボックスも壊されたしな。
あれ、めちゃアバターポイント高かったやろ?
ポイントなくなってしもうたんや。)
(そんな大事なこと何で黙ってたんだ?)
僕はリュウが今まで、黙っていたことに深い憤りを覚えた。
(何でって、聞かれんかったやろ?まぁ、聞かれても言わんかったやろうけど。
アバターポイントとアイテム稼ぐために、宝箱探してたら光が現れたんや。
俺と同じメタルボックス使用してて、笑いが抑えきれんかったで。)
(リュウ、君は僕を利用するために…?)
(生き残るためには、しゃーないやろ。
どうにかして光を、獣人の所へ連れて行こうと考えていたところに嬢ちゃんが来た。
やっぱり運命ってあるんやな。)
僕らはみんなリュウに騙されていたのだ。
お調子者で変わった奴だったが、友達になれるかもって思ってたのに。
(おっ、大将立ち上がったで、相手したってや。)
族長はふらつきながらも、地面に転がっている大剣をとり僕の方へと向かってきた。
クロコは大きく口を開き、火炎の玉を族長に向かって発射した。
1発、2発、族長の体にまともにヒットするも、族長は全く止まる様子はない。
ある程度距離が縮まったところで、族長は歩みを止め、その場で大きく息を吐き始めた。
来る。
息を吐ききると同時に、族長は爆発的なスピードで僕に向かってきた。
両手で大剣を肩越しに構え、突進しながらその剣を僕に向かって振るう。
間一髪その斬撃をかわした。
勢いあまった大剣が地面に激突すると、爆発音と共に床が弾けたのだ。
大理石?で出来た床が砕け、破片が辺り一面に飛び散った。
これはとても受けられない!
しかも僕は、獣神の宝玉が異次元収納に保管したままだ。
獣神の宝玉のレアスキルどころか、補正効果すらも受けられていないのだ。
補正効果のない僕は非力なミミックにしか過ぎない。
ハルクより力が勝る彼に、パワー勝負で太刀打ちできるはずがないのだ。
彼に勝つにはレアスキルを使うしかない。
僕は族長に向かって【重力操作Lv5】を発動。
族長の足を止めようとした。
族長の体に重力の壁が押しかかる。
しかし、大声をあげながら気合を入れる族長。
僕の【重力操作】がかき消されてしまった。
動揺する僕に、族長の体当たりがまともにヒットする。
僕の体は数メートルほど飛ばされて、地面を三回転程転がされた。
大剣を構え直し、再度突進してくる族長。
僕は後方に逃げながら暗黒魔法【ブラックランス】を使用し、黒い3本の槍を族長に向かって発射した。
しかし、表面を傷つけただけで族長に刺さらず、地面に落下する3本の槍。
間合いに入った族長は、その大剣を振り下ろした。
懸命にかわす僕だったが、今度は完璧にはかわしきれない。
族長の剣がまるでチーズを切るように、メタルボックスの側面の一部を斬り裂いた。
懸命に逃げる僕。しつこく追いかけ回す族長。
ただ、その距離が少しずつ縮まってきた。
ガン。
族長と相対しながら後方へ逃げる僕。
ただ、この戦い方は障害物だらけの宝物庫では命取りだった。
僕は宝物庫に山積みにされている財宝にぶつかり、後方へ倒れこんだ。
もちろん、その隙を逃す族長ではない。
僕に向かって大剣を振り落ろそうとした。
ガブッ。
僕に止めをさそうとする族長の右足首に、クロコが噛みついた。
クロコの強力な咬合力で、族長のアキレス腱を噛みちぎったのだ。
大剣を振り下ろそうとしていた族長の手が止まり、族長は自身の右足に視線を移した。
族長のふくらはぎから踵にかけて、大量の血がほとばしる。
次の瞬間族長は、ためらうことなくその大剣をクロコの脳天に突き刺したのだ。
ビクッと一瞬痙攣のように体を揺らしたクロコだったが、そのまま動かなくなった。
再度僕に視線を移そうとする族長。
しかし、族長が見た方向には僕の姿は無かった。
僕は族長の足元に潜り込み、族長の左足に向かって大きく口を開けていた。
僕は族長の左足を【暴食】で平らげた。
「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!
どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。
もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!
皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!




