表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/121

第72話 レアアイテム

7階層でバカに絡まれた後は、堰を切ったように敵が現れた。

闘いの音を聞きつけ、周囲の人族や人型の種族、それを追ってモンスターたちが集まってきた。


レアアイテムの取得。

奴らに取って7層を目指す理由がそれなのだろう。

いくら財宝を売っても一生遊んで暮らすことは出来ないが、レアアイテムを売れば物によっては一生遊んで暮らせるらしい。


命を落とす確率の方が高い7階層に、冒険者たちが群がる理由がそこにあるのだろう。

まして7階層の奥にしか無いはずのレアアイテムが、今目の前にあるのだ。

多少の危険を冒しても、彼らは取得しようとするだろう。


一体何人、何匹の敵を倒したのだろうか。

僕らの周りには死体の山が出来ていた。


ここには何体の敵がいるのだろう。

部屋の中央にいる僕たちを狙って、東と南の通路から敵が湧き出てくる。


今ハルクが倒したのは、オークの戦士だ。

東の通路から十数匹のグループで出現している。


南の通路からは人族のパーティ。

全員弓矢や魔法を用い、遠距離から僕たちを攻撃してくる。

一発一発の威力は弱いが、気を抜くとあっという間にハチの巣にされてしまうだろう。


「エクスプロージョン!」

リリアの爆炎系魔法が、人族のパーティの中心部で爆発する。

叫び声をあげながら、吹き飛ばされる戦士たち。

しかし、生き残った戦士たちが盾を構えながら突進してくる。


このままでは多勢に無勢だ。

僕はポイズンブレスを吐き相手を威嚇すると同時に、仲間に北側へ逃げるように合図を送った。


各々飛び道具で相手を威嚇しながら、北の通路へと走り出す。

逃げる僕たちをオークと人族のパーティが追ってきた。


ガチン!

金属に挟まれる音がして、リリアがその場に倒れこんだ。

とらばさみだ。

以前僕が使っていた罠にリリアの足が挟まれたのだ。


この罠アイテムはアバターポイントの景品だった。

ということは…。


必死でとらばさみを外そうとしているリリアに向かって、近くに転がっていた宝箱が口を開けながら飛びかかってきた。

間一髪攻撃を避けたリリアだったが、とらばさみがより深く足に食い込み、リリアの左足が紅く染まっていた。


身動きが取れないリリアに向かって、別の宝箱も飛びかかった。

しかし、今度はハルクがミミックをがっちりキャッチ。

宝箱の蓋を剥ぎ取り、地面に叩き落とした後にハンマーで粉砕した。


罠に手間取る僕たちに、追いつく人族とオーク族。

3匹のオークが武器を持って突進し、人族は離れたところから矢を射かけてきた。


戦うしかない。


僕は人族との距離を【暴食スキル】で食べ、瞬間移動のように相手の傍に近づいた。

突然の僕の出現に驚きながらも、態勢を整えようとする人族の戦士たち。

しかし、整える暇すら与えず僕は彼らを全て平らげた。


クロコは突進するオークの足を尻尾で払い、倒れた瞬間に頭を噛みちぎる。

残りの2体のオークは、いつの間にかリュウがその首を跳ねていた。

後方で待機していた数匹のオークは、叶わないと判断したのかそのまま撤退したのだ。


ハルクを見ると、ハルクの腕に何かがぶら下がっている。

ミミックがハルクの腕に噛みついているのだ。

ただ、ハルクは気にもしていない様子。

噛まれた腕を振り上げ、そのまま地面に叩きつけた。

宝箱が大破し、破片が周辺に飛び散った。

ハルクは動かなくなった宝箱に再度ハンマーを打ち付け、木端微塵にしたのだ。


周辺に敵がいなくなったことを確認し、ハルクはリリアの足に挟まっていたとらばさみの口を開きリリアの足を解放した。


「あ、ありがとう」

リリアがぎこちなくお礼を言うと、


「おめぇの為に助けたんじゃねぇ。」とハルクは、ぶっきらぼうにリリアに背中を向けた。


闘いが起こった原因を整理すると、今回狙われたのは僕の宝箱が赤く光っていたからだ。

レアアイテムを所持しているだけで、その収納している部分が赤く点灯する。

その光は真っ暗闇でない限りはさほど目立たないが、その光の意味を知っている者にとっては分かり易すぎる目印なのだ。


しかし、同じようにレアアイテムを持っているはずのリュウの箱は赤く光っておらず、まるで普通の宝箱のようだ。


僕はリュウにその理由を聞くと、


(レアアイテムは異次元収納の中に入れたら、反応せんようになるんや。

その代りスキルも補正も入れてる間は使えんから、注意せなあかんで。)


そうだったのだ。

リュウの体が光っていない理由が分かった。

ということはリュウも異次元収納を持っているってことか。

なぜかリュウは、僕も異次元収納を持っていることを知っているようだ。


(俺は、必要なアイテム以外は全部異次元収納で保管してるわ。

なんでって、そりゃスキルばかりに頼ったら自分成長せんやろ?

スキル無しでも戦えるってことが、一人前のミミックやないかと思ってるんや。)


なるほど、彼の言うことも一理ある。

確かに異次元収納に入れれば、敵に狙われることが減るだろう。

ただ攻撃の補正やスキルが使えなくなるので、戦力は大幅にダウンする。

特に近接攻撃の補正効果は、非力な僕にはすごく助かっていた。

近接攻撃の攻撃力が落ちるのは正直痛い。


しかし仲間をピンチに陥れるくらいなら、多少のデメリットは眼をつぶらなければならない。

まずは仲間の生存を優先。

多少の不利ぐらいは、他のスキルでなんとかなるだろう。


そう言えば「仲間の命を優先する」っていうのは今までの僕には有り得なかった。

現実世界でも仲間が大事なんて考えたことも無かった。

友達がいなかった僕には、ゲームだけが心の拠り所。

ゲームのイベント以外で人を助けるということをしたことがなかった。


僕はこの世界で少しずつ成長をしているのかもしれない。

今まで体験したことの無い経験が、僕を少しずつ肉体的にも精神的にも強くしてくれているのだ。

闇落ちしてるけど。


異次元収納にレアアイテム【獣神の宝玉】を収納すると、僕の体で転倒していた赤い光は消えてなくなった。

これでもう少し楽に進めるだろう。

僕は不安な気持ちを、仲間の危険を減らすためと自分に言い聞かせた。


しかし、この時の僕は気付いていなかった。

この提案自体がリュウの罠であることを…。


「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!


どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。


もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!


皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ