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第71話 7階層


7階層への階段を降り終えた僕は、その光景に圧倒されていた。

階段を降りたところは大きな部屋となっており、部屋のあちこちに財宝や宝箱がぎっしりと積み重ねられている。

石造りの壁には低感覚にランプが備え付けられ、薄明るく部屋全体を照らしている。

壁には幾何学的な模様が施され、部屋の神秘性を増しているように感じる。


床は大理石だろうか?

ワックスがけされたような光沢のある床で、魔法陣のような円形の模様が中央から外へと広がっている。


部屋の広さは約30メートル四方ほど。

同じ広さの部屋が何百何千も集まって、全体として長方形のフロアになっているようだ。

部屋によっては広かったり、長方形だったりといくつも種類があるとのことだ。

6階層からの階段は丁度フロアの真ん中部分。

階段の位置を基準にして北西エリア、南東エリア等大きく8つのエリアに分かれている。


部屋間は壁で仕切られており、壁と壁の間にある広めの通路から出入りができる。

部屋の四隅の角には一際大きな柱があり、その間には等間隔に柱が立っている。


通路は東西南北の四ケ所。ほとんどの部屋はこのタイプだそう。


周囲を見渡すと、階段付近の部屋の宝箱はほとんど手を付けられておらず、そのままの状態で残っている。


リリアによるとフロア中央部の宝箱や財宝は価値が低く、中には模造品も含まれているとのこと。

フロアの奥に行けば行くほど価値のあるアイテムが多く、レアアイテム等はもっぱらフロアの最深部付近にあるらしい。

そのため、フロアの奥の方が戦いが激化し、フロアの中央部に近づくほどレベルの低い冒険者たちが多いようだ。


リリアが宝玉を預けたという獣人は、北西エリアにいるとのことだ。

とりあえずは北西方向に向かって進むことにした。


3つ目の部屋を超えたあたりだろうか、僕らは冒険者と思われる集団に取り囲まれた。

8人の人族男性のみのパーティで、重装備の騎士系が3人、軽装備の剣士系が2人、僧兵1人、弓兵が1人、魔導士系が1名だ。


ここに来るまでかなりの激戦を繰り返してきたのだろう。

鎧や盾は至る所破損しており、片腕を無くしている者もいる。


騎兵は兜の代わりに高価そうなブレスレットを下げており、他の者も手や足に指輪やアンクレットを身に着けている。

おそらくこの階での戦利品だろう。

悪趣味に宝飾品を見せびらかしているあたり、この階に来る冒険者にしては小物のように見える。


「あんたたち、何か用?」


真っ先に声を上げたのはリリアだ。

リーダー風の男を睨み返している。


「いや、俺たちが宝箱を収集している所に、お前たちが通ってよ。

そのでかい兄ちゃんが担いでいる宝箱をみりゃ、赤く光ってるじゃねぇか。

その中にレアアイテムがはいっているんだろ?」


答えたのは、リリアが睨んでいた剣士タイプの男。

眼に大きな眼帯をしており、顔のあちこちにあざが残っている。


そういや、レアアイテムを保持していると赤く光ることを忘れていた。

より良い宝箱を狙う者たちが多い中、この目印は狙ってくれと言っているようなものだ。


「だったらどうなのよ!」


リリアの声が怒りを帯びて、高く大きくなった。

ケンカ腰のリリアの姿に剣士と騎士は顔を見合わせて、 下卑た笑みを浮かべる。


「何も俺たちもタダでもらおうなんて思っていないさ。

俺たちの戦利品と交換でどうだい?

ほら、このブレスレットなんて、嬢ちゃんにはぴったりだ。」


剣士は自分の首に下げていた真珠風のブレスレットをとって、リリアの目の前に付きつけた。

それを見た他のパーティメンバーも、「似合うんじゃないか」「良かったな嬢ちゃん」などと囃し立てたのだ。


「ふざけないでよ!こんなもの!」


リリアは突きつけられた剣士の手を払いのけた。

剣士の手からブレスレットがこぼれ、床に落下する。

落下したブレスレットは、糸から宝石が外れ地面に四散した。


「嬢ちゃんこそふざけちゃなんねぇな。」

剣士は腰に下げていた鞘から剣をゆっくりと抜き抜き、右手で上段に構えたのだ。

剣士が構えたのが闘いの合図。

他のパーティメンバーたちも武器を構え、戦闘態勢をとった。


「ふん、元々渡すつもりもないくせに。」

リリアは杖を構えながら距離をとった。

肩で担いでいた僕とリュウを地面に降ろそうとするハルクだったが、僕はハルクに(僕をアイツらに向かって投げつけてくれ)と耳打ちした。


リュウを地面に降ろしたハルクは、僕の要求通り剣士に向かって僕を投げつけた。


咄嗟のことに動きが止まる剣士。

激突する寸前に僕は剣士の頭を噛み切った。


首をなくした胴体は糸が切れたマリオネットのよう。

剣士の体は力なく前方に崩れ落ちた。


突然倒れた剣士よりも、他のパーティメンバーの興味はレアアイテムの入った宝箱。

剣士に駆け寄る者はなく、全員で僕を取り囲んだ。

完全にリリアや他のメンバーから背を向け、僕のみをターゲットにしたようだ。


「こいつらバカなの?」

リリアの魔法が背後から騎士を襲った。

騎士の体全体を火柱が覆い、一瞬で騎士の体が黒焦げになった。


パーティメンバーたちが我に返った時にはすでに遅し。

ハルクのミスリルクラブが騎士の首を吹き飛ばし、クロコの牙が剣士の体を引きちぎった。

僕から視線を外した僧兵を一口で食らい、リュウの重力操作で残りの者たちの体を止め、そのまま全て食らい尽くした。


こうして僕たちの7階層初めての闘いは呆気なく幕を閉じてしまった。


「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!


どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。


もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!


皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!

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