表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/121

第68話 女性魔導士

モンスターに襲われているのは、黒っぽい魔導道衣ととんがり帽子をかぶった女の子。

歳は20歳代前半だろう。スレンダー系美人だ。

彼女とは僕が2階層で敵として遭遇。

僕の中途半端なフェミニズムで、他のパーティメンバーは食べたものの、彼女1人だけ食べずに逃がしてしまった。


その後3階層で再び遭遇。

獣人の戦士に殺されかけた僕を、気付かれないように見逃してくれたのだ。


その彼女が今度はモンスターに襲われている。

周りに獣人の戦士はいないようだ。

罠か?


モンスターはオークが5体。

2本歩行の屈強な戦士だ。

口の両端から飛び出す2本の大きな牙と、大きな豚鼻が特徴である。

他のモンスターたちに比べて知能が高く、単独よりも集団での戦闘を好む。

武器や防具を使いこなし、上位種では魔法も使えるとのことだ。


(光、可愛い姉ちゃんが襲われてるやん。助けてやろうや。)

普段冷静なリュウだが、こういうところはやけに軽い。

どことなくチュートリアルにも似ているかも。


逃げながら魔法攻撃を繰り出そうとしている彼女の前に、リュウが視界に現れる。

リュウは【重力操作】でオークたちの動きを止め、刃物のように硬く研ぎ澄まされた舌でオークたちの首を切断していった。


リュウにとってはオークなど敵の内には入らない。

一瞬でオークを倒したリュウは、魔導士の彼女に向き直った。


(危なかったな。)

リュウは精一杯の笑顔を作って(後ほど本人談)彼女に話しかけたが、彼女の興味は別のところにあったようだ。


「あんた、あの時のミミック?」


(それは僕の事だ…)と思ったが、僕はその時とは箱ごと変わっているので彼女には分かるはずが無い。

あえてアピールする必要もないだろう。


(いや、俺は君に会うのは初めてや。ごっつ可愛い姉さんのことなら忘れるはずないわ。)

「ふーん、そう。」

明らかに興味を無くした彼女。

助けられた礼すらも言わず、辺りをキョロキョロと見回している。


「あーやっぱりいた。」

彼女は近くで待機していた僕たちにも気付いたようだ。

アピールをしようとしているリュウを置き去りにし、僕らの方へと向かってきた。


「ミミックがこんなとこ、一匹でいるはずないと思ったんだ。仲間でしょ、あんたたち。」

随分となれなれしい奴だ。こんな奴だったっけ?


「もう一匹のミミックさんね。あんた私に会ったことがある?」


ここは知らぬ存ぜぬで通す方が得策だろう。

敢えて正体を明かす必要もない。

僕は舌を振り、会ったことが無いことをアピールした。



「ふーん、あっそ。まあいいわ。」

彼女は出会うミミック全てに聞いているのだろうか?

獣人の戦士の仲間である彼女が探しているのは、おそらく僕が持っているレアアイテム【獣神の宝玉】だろう。

本来奴が獲得するはずであったレアアイテムを、結果として僕が取得してしまったのだ。


彼女の目的ははっきりしていないが、ここは早々に立ち去るに限る。

僕は彼女に背を向け、先を進もうとしたその時。


「あー、あんた隊長だよね。なんでこんなところにいるのよ?」

彼女はクロコを指差し、大声でわめき散らした。

彼女とクロコは知り合い?


「私あんたに会いに来たのよ。宝物庫が襲われたんでしょ?

様子を見てこいって言われてるの。

でも、なんでこんな所にいるの?

宝物庫の守備はどうしたの?

そいつらは誰?」


クロコは彼女に詰め寄られても、表情一つ変えずにだんまりしている。

やはり、クロコと彼女は面識があったのだ。

クロコは彼女の主人(?)である獣人の戦士から指令を受け、宝箱などを守っていたようだ。


すでに宝物庫が襲われたことは、彼女も知っているらしい。

僕らが宝箱を回収したことがバレるのも、時間の問題だろう。

どうする?

彼女を殺して口封じをするか?


「ねぇ、何で黙っているのよ?

宝物庫はどうなったの?

あんた今何してるの?」


しつこく詰め寄る彼女に、クロコは重い口を開け始めた。


「宝物庫は全滅した。我も、我の部下たちも全て命を失った。

宝箱も全て賊に奪われてしまった。」


「えっ、何言ってんのよ?

全滅ってあんた今ここにいるじゃない。

適当なこと言ってごまかさないでよ。」


するとクロコは尻尾を自分の顔の方まで持ち上げ、勢いをつけながら尻尾の先で自身の左目を貫いた。


「ちょ、ちょっと、何してるのよ!」


クロコの左目は自身の攻撃で潰れ、大きく陥没した。

それでも出血することは無く、痛みすらも感じていないようだった。


「我はすでに死んでいる。我は偶然通りかかった新しいマスターによって、ゾンビとして蘇ったのだ。

我は痛みを感じることも、血を流すこともない。

ゾンビとして新マスターに付き従うだけだ。」


「えっ、そんなことって…。

死者を蘇らせる!?

そんなレアスキル、見たことも聞いたこともないわ。」


彼女は今目にした光景とクロコの説明に強く動揺しているようだ。

虚勢を張ろうとしているものの、あまり効果は得られていない。


「女、帰ってお前のマスターに伝えよ。

宝物庫を守る者たちは全滅し、宝は全て奪われてしまった。

すまなかったと…。」


「ちょ、ちょっと!そんなこと言ったら私もどうなるか分かんないじゃない!

でもいいわ、伝えてあげる。

その代わりお願いがあるんだけど…」


さすがの彼女も状況が理解できたようだ。

クロコの提案を渋々ながら受け入れてくれた。

クロコが言った通りの報告をすれば、少なくとも僕たちからやつの眼が逸れるだろう。

しかし、彼女のお願いって?


彼女はクロコの潰れた左目をまじまじと見ながら一言。

「私を8階層まで連れてって」


「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!


どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。


もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!


皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ