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第62話 増え続ける悪魔族たち

関西弁ミミックは部屋の中央部分、丁度天井に開けられた大穴の近くで戦っていた。

戦っている敵は悪魔族のガーゴイルやインプ。

悪魔族では低級レベルだが、一匹の強さは他のモンスターを圧倒するほどだ。

戦闘手段は、長く伸びた爪で引っかき、尖った牙で相手の急所を貫く。

両種族とも魔法を操り、至近距離ではブレスも使用する。

より格闘やブレスに特化しているのがガーゴイル、魔法が得意なのがインプという印象だ。


対して関西弁ミミックは、とても巧い戦い方をする。

空中を飛び回る彼らを【重力操作】や飛び道具で奴らの空中移動という手段を奪い、地上戦では範囲攻撃で相手の総数を減らす。

範囲攻撃で倒せなかった奴は、直接物理攻撃でとどめを刺している。

ディフェンステクニックも見事だ。

常に相手とは一定の距離を保ち、近づかれば離れ、離れれば近づく。

素早さを上げるスキルを使い、避けられない攻撃は防御系スキルでダメージを軽減させる。

彼の戦い方は僕にとっても参考になった。


(兄さん、せっかく来たんやから見てんと手伝ってや)


思わず感心して見ていた僕に、関西弁ミミックから催促の声が飛んできた。

そうだそうだ、僕は彼を手伝いに来たのだ。

早く殲滅させてハルクの方を手伝いにいかなくては。


ただ、実際のところ彼が本当に味方かどうかは分からない。

手の内を見せすぎるのは危険だ。


おそらく彼もそうだろう。

この激しい戦いの中でも、彼が使っているのはミミックの固有スキルや基本スキルばかりなのだ。

それだけでも戦える彼も、底知れぬ強さを有しているのだろう。

もちろん僕も手の内を隠すようにした方がいいのだろうが、それでこの悪魔族を倒しきれるかは自信がない。


考えているうちに2匹のガーゴイルたちが僕の方へやってきた。

僕の頭上を飛び回り、攻撃のタイミングを図っているようだ。

彼の戦い方を真似るなら【重力操作】が定石だろう。

飛び回っているやつを無理やり、地上に落とす方が効率的だろう。


僕のつまらないこだわりだが、全く同じ手段では芸がない。

別のスキルを使って、相手を呼び寄せたい。


僕は固有スキル【おびき寄せる】を使用。

僕のスキルに触発されて、2体のガーゴイルは僕を目がけて高所から攻撃を仕掛けてきたのだ。

最短距離を真っすぐ向かってくるガーゴイル達。


こうなったらガーゴイルたちもただの的だ。

僕は毒針をガーゴイルたちの眉間を狙って発射した。


突然の飛び道具にバランスを崩しながらも、なんとかかわすガーゴイルたち。

奇妙な叫び声をあげ、その勢いを保ったまま、僕に手の届くくらいのところまで迫った。


もちろんかわされることは想定内。

僕はかわされたと同時に【物理無視】を使用し、毒針の飛ぶ方向を反転させていた。


ガーゴイルたちは、僕に攻撃しようとするどい爪を持った手を伸ばした。

しかし、僕に攻撃が届く前に後頭部に毒針が突き刺さった。

叫び声をあげる間もなく、絶命するガーゴイルたち。

やつらも一度かわした毒針が、追尾してくるとは思わなかっただろう。

何度使っても、【物理無視】はチート級スキルだ。

しかし、1匹2匹使い魔たちを倒しても戦況は全く変化はしない。

後から後から、ガーゴイルやインプたちが天井の大穴から現れるのだ。


使い魔たちは途切れることがないまま、何匹も何匹も湧き出してくる。

奴らの戦力は無尽蔵だ。

このままでは遅かれ早かれ、僕らの方が参ってしまう。

奴らを止めるには、供給源を抑えるしかない。

しかし、どうやって?


おそらく、ガーゴイル達に命令を与えるものが近くにいるのだろう。

穴の向こう側で指示を出しているに違いない。

どうにかそいつを倒せさえすれば、この状況にも変化が起こるはずだ。

命令系統が崩れれば、戦闘を継続させることなんて出来るはずが無い。


ただ、問題はどうやってそこまで行くかだ。

唯一の穴からは、使い魔たちが通っている。

見つからずに穴の向こう側に行くことなんて不可能だ。

次々沸いてくる奴らを倒しながら、穴の外に行くのも難しいだろう。


詰みだ。

有効な手段だと思ったのだが、出入口が一つしか無いのであれば方法が限られてしまう。

せめて、【テレポート】が使えるといいのだが。


【テレポート】は移動系のスキルだ。

一度行った場所や行ったことが無くても、映像を正確にイメージ出来るとその場所に瞬間移動できるという便利なスキルだ。


以前僕を監視する奴の目を利用して、相手の場所に【テレポート】できた。

ただ、今回は相手の狙いは僕では無く、関西弁ミミック。

相手の視線を利用して移動することは出来ないのだ。


彼の方を見ると、攻撃を受ける回数が増えてきているようだ。

ますます彼のスピードが低下し始めている。


急がないと本当にヤバイ。

せめて僕がその地に行っていれば、良かったんだが。

!?


そういやハルクが、悪魔族をつけていた。

穴を掘っているところまで見ている。

彼の記憶を映像として僕に送れれば、【テレポート】で移動が出来る。

僕には相手と意思や記憶のやり取りが出来る【相互理解】のスキルがあるのだ。


僕はハルクにメッセージを送った。


(ハルク、今大丈夫か?聞きたいことがある)

僕の声にビクッとするハルク。

彼も懸命に戦っているのだろう。

ハルクの頭や体から血が流れ出ている。


「んあー。今忙しいがら、手短にいっでくれ。」

ハルクは片手で兵士を持ち上げ、そのまま黄金鎧の戦士に向かって投げつけた。


(ハルクが悪魔族を張っていた場所を正確に覚えてるか?そこの場所を強く意識して欲しい)

こう見えてハルクは強い記憶力の持ち主だ。

ハルクの記憶を映像化出来れば、僕は穴の向こうに行ける。


「ちょっと待ってな」

ハルクは片手で倒れている兵士の足を引っ張り上げ、防御態勢中の兵士の盾に勢いをつけて叩きつけた。

盾ごと吹き飛ばされる兵士。

数メートルほど飛ばされた後、そのまま動かなくなった。


「これでええか?」

ハルクのイメージは本当に正確だった。

その地点の鍾乳石の形や数、地面の質感や湿度などを正確に映像化できたのだ。

これはそのまま使えそうだ。


(サンキュ、ハルク)

僕は早速ハルクの記憶再現イメージを利用して、【テレポート】を行った。

僕の体がその場から消え、その地点へと移動したのだ。


「サンキュってなんだ?」

ハルクは僕が言った言葉の意味が分からずに、しばらく考え込んだという。


ハルクのイメージは完璧だった。

僕は穴の外の地点に到着した。


そこには何百匹ものガーゴイルやインプたちが、列をなして穴へ飛び込んでいる。

如何ともしがたい数の圧力。

僕や関西弁ミミックが倒した奴らは、ほんの一部にしか過ぎなかった。


列の後方で、ガーゴイルたちに指示を与えている別の種族がいる。

こいつだ。

こいつを倒すことが出来れば、状況が改善できるはずだ。


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