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第57話 集団戦闘開始

ハルクとの交信を終えてから、急にワニたちは慌ただしくなった。

寝そべっていたワニたちは全て起き、臨戦態勢で唯一の入り口である水面を睨んでいる。

外出していたワニたちも全て戻り、陣形を組んで戦闘準備を行っていた。

僕をここに連れてきた大ワニも、最後方で構えている。


その光景はまさに圧巻。

総勢50匹前後のワニたちが全て入り口の方を向き、赤い目を光らせているのだ。

部屋全体にビリビリと緊張感が走る。

集中力を切らしたワニは一匹もいない。

かなりの練度で統率されているようだ。

この光景を見ると僕一人だけでも逃げられると、タカをくくっていたのは誤りだと気付かされる。


この緊張感を保ったまま、しばらく時間は経過した。

しかし、一向に悪魔族たちは現れる様子はない。

ハルクの話だともう着いてもよい時間だ。

引き返したのだろうか?何かトラブルが生じたのだろうか?

この状況でも誰一人隊列を崩さないワニたちは見事だ。

一体誰がやつらを調教したのだろうか?


僕はハルクに【相互理解Lv1】で変わったことはないかと連絡をとった。

その際、同時に【千里眼】も使用。

テレビ電話のように応答するハルクの顔や周囲の状況も分かるようにした。


(ハルク、現在の状況はどうだ?悪魔族たちはなぜ来ないのだ?)


突然の僕からの連絡に、ビクッとしながらキョロキョロ辺りを見回すハルク。

その反応はどこか愛らしい。


「んあ~、ビッグリした~。」

ハルクは毛むくじゃらのお尻をかきながら、僕とは反対側を向いた。

僕にはハルクが見えているが、ハルクには僕が見えていない。

修正する必要があるな。


「悪魔族のやつらはよー。ちょっと前に別の場所に向かって穴を掘り出したみてぇだ。何やってんのがわがんね。」


(穴を掘り出す?なんだ、ワニの住処に向かっているのではなかったのか?)


僕にも悪魔族がやろうとしていることは分からない。どうやら偶然、向かう方法が一緒だっただけかもしれない。

でも、ワニたちがあれほど警戒しているのはどういうわけだ?


「悪魔族の代りによ。おめぇのとこ向かっでるのは人族だぁ。やつらもうすぐそこにいる。」


(人族!?人族も宝を狙ってるのか?ワニたちが警戒していたのは彼らの侵入だったのか。)


「んで、どうする?」


ハルクは僕からの指示を待っている。

すぐにでもハルクに来て欲しいが、悪魔族が何をしているのかも見極めたい。

人族の動きも気になる。


僕は…。


一旦ハルクには僕の所に向かってもらおう。

人族の後をつけながら、見つからないようにゆっくりと。


ハルクにそのことを伝えると、彼も了承したようだ。

悪魔族の監視から離れ、今から人族を追ってワニの部屋に向かってきてくれるとのことだ。


ただ、悪魔族は一体何をしようというのだ。

なぜか胸騒ぎがする。

気のせいだといいが…。


急にワニたちが体を深く沈め、今にも飛びかかれそうな構えを取り始めた。

部屋の空気がさらに張りつめたようだ。

離れたところにいる僕でさえも、ワニたちの心臓の音が聞こえそうなくらい緊張感が伝わる。


僕は入り口の水面に目を凝らして見てみると、気泡が次々に水面に浮かび上がってくる。

人族が…来る!?


水面から顔を出したのは、中年の男性。ごつごつした顔の至る所に傷跡が残っている。

ただ、水路からここまで来るのがやっとだったのだろう。

むせこみながら、肩で大きく息をしている。


バクッ


隙だらけの男をワニは一口で噛みちぎる。

胴体から上が一瞬で消えてしまった。

水面が男の血で赤く染まる。

間髪入れずに別の男が顔を出したが、同じようにぜーぜー言いながら、空気を取り込もうと一生懸命だ。


バクッ


今度は別のワニが男に頭から噛みついた。

一撃の元に倒され、頭を失った体はそのまま水路の中へと沈んで締まった。


その後、何人もの兵が顔を出したが戦う以前の問題だ。

彼らは、水路を渡るだけで精一杯なのだ。

空気を取り込んでいる間にワニたちに攻撃される。


こんな状態で本当に戦うつもりなのか?


まるでゲームセンターなどにあるワニ〇ニパ〇ックの逆バージョン。

ワニたちに一切の手加減はない。

顔を出せば出すだけ、食べられてしまうのだ。


その時、天井から何かを削るような音が聞こえた。

次の瞬間、大きな音を立て天井の一部が崩れ落ちてきた。

舞い上がる粉塵。

落ちてきた天井の周囲は、広範囲にほこりが立ち込めていた。


その中から現れたのが奇妙な動物。

蝙蝠のような羽を持ち、犬と猿を組み合わせたような姿、暗緑色と灰緑色の中間色の体の色。

手足には鋭い爪が生え、指と指の間にはトカゲのような水かきのようなもので連結されている。

真っ赤な眼の中の黄色の瞳孔が印象的だ。


これが、ハルクの言っていたガーゴイルなのか。

確かに通常のモンスターとは違う禍々しさを持っている。


ガーゴイルたちのうしろに隠れて、別の悪魔族も登場する。

ガーゴイルと同じく蝙蝠様の翼を持ち、頭に大きな角が二本ついている。

角に負けないぐらい長い耳を持ち、鋭い牙だらけの口は顎まで大きく裂けている。

こちらは猿というより人間の子供の体に近い。

五本の指にはそれぞれ長く尖がった爪が見え、しっぽまでついている。

おそらくこいつがインプなんだろう。


意表を突かれた場所から現れた悪魔たちに、ワニたちは動揺し陣形が乱れてしまった。

そんな隙を見逃す悪魔たちではなかった。


悪魔たちはその羽で飛び回り、陣形の乱れたワニたちを狙って攻撃を仕掛けてきた。


悪魔たちの攻撃は常にワニたちの急所を狙っていた。

ワニたちの硬い胴体には手を付けず、ワニの顔面への集中攻撃。

高所からワニの目に爪を突っ込んだり、至近距離で顔面に火炎を吹きかけた。

一部のインプたちは槍を持っており、ワニの脳天目がけて槍を突き刺したのだ。


もちろんただでやられるワニたちではない。

ガーゴイルの足に噛みついたと思うと、強力な力で地面へ引きずり下ろし、数匹のワニが一斉に噛みついたのだ。


部屋の中央はワニと悪魔族たちの壮絶な戦いとなった。

ワニや悪魔たちのおぞましい叫び声が部屋中に響き渡る。

数で勝るワニたちと、一匹ずつの強さで勝る悪魔族たち。

いつしか前線で人族を攻撃していたワニたちも部屋の中央へと集まってきた。


しかし、それが裏目に出た。

ワニたちは人族の侵入を許してしまったのだ。

続々と水路から部屋に上がる人族。

持っていた武器を構え、ワニたちに向かって襲いかかった。


宝箱の前で行われる壮絶なバトル。

僕はこの状況を目の当たりにしながら、あることを考えていた。


(全部食べたら、一体どれくらい強くなれるだろうか?)


「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!


どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。


もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!


皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!

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