第56話 ワニたちの住処
ワニたちの住処に連れていかれた僕は、この場所で沢山の財宝を見つけた。
僕もワニたちの財宝コレクションの一部にされるのであろう。
もちろん、僕の狙いはワニたちの財宝から必要なアイテムを奪うことだ。
ただ、財宝を守る巨大ワニたちは数十匹。
正面から戦うのには少々骨が折れそうだ。
そこで僕は今も僕を探し続けているであろうハルクに連絡し、僕の無事とワニたちの住処の場所を知らせようとした。
離れている相手に意思を伝えるのには、新レアスキル【相互理解】がうってつけだ。
このスキルは離れた相手とも僕の中の無線回路で会話し、見た映像をも相手に送ることが出来るのだ。
まんまスマホだw
しかもその映像は、場所を移動するごとに映像も切り替わるようになっている。
グー〇ルストリー〇ビューだw
相手と共通の文字を持つ場合、相手と文字でのやりとりも出来る。
LI〇Eだw
僕はハルクに僕の無事を伝え、この場所の行き方の映像を送った。
ただ、急に声をかけられたハルクはビックリして溺れそうになっていた(笑)
ハルクが来たら行動へ移そう。
ハルクが来るまでは、状況を正確に分析しておこう。
現在僕がいるところは、広さ100m四方ほどはある広い部屋だ。
鍾乳洞の中にある真四角の部屋。完全に人工だろう。
レンガを重ねたような石造りの壁で、ところどころにひっかき傷のようなものが刻まれている。
鍾乳洞の中よりも比較的温暖。
壁も床も乾燥しており湿度もさほど感じない。
他に部屋はなく出入口は1か所、水路だけのようだ。
現在、部屋にいるワニたちは全部で28体。
10mを超すワニは僕を連れてきたやつのみで、後は5〜7mほどの大きさのようだ。
ただ、このワニたちは何らかのスキルを持っているようで、力押しのモンスターだと思い込むと手痛い目に合うかもしれない。
宝箱や財宝は部屋の一番奥。
つまり水路から一番遠い場所に固められている。
きらきらと光る宝飾品が多く、指輪やネックレス、金貨、水晶などが中心だ。
宝箱は全部で8つ。
どの宝箱にも鍵穴がついている。
その中の一つの宝箱が、うっすら赤く点灯していた。
レアアイテムだ。
ワニがため込んだ財宝たちの中に、レアアイテムが混ざっているのだ。
僕がワニに連れ去られた時に感じたのは、この事に関する暗示だったのかもしれない。
レアアイテムが役立つものであれば、7階層攻略の時の助けになるだろう。
僕はハルクが来るまでは単独行動することを避け、宝箱に徹し、チャンスを伺っていた。
僕はハルクを待っている間、ワニたちを観察していた。
部屋にいるワニたちはほとんど動くことはなく、この部屋で寝そべっている。
一定時間が過ぎると、他のワニたちが水面から餌を持って現れ、そこで食事タイムが始まる。
食事後に部屋で寝そべっていたワニたちは部屋から出発し、餌を持って帰ってきたワニたちが代わりに部屋で寝そべるのだ。
まるで二交代制のように、時間ごとに役割が決まっているようだ。
部屋に集まっているだけのように見えていたが、実はしっかりと統制されている。
また、財宝や宝箱を集めているように見えるが、興味を示すワニは一匹もいない。
財宝に対して、一切見向きもしないのだ。
おそらく興味本位で集めている訳では無さそうだ。
目的を持って集め、集めた宝箱をしっかりと守ろうとしている。
僕をここに連れてきた大ワニもこの種族のリーダーでは無さそうだ。
他のワニたちと同じように行動を行い、統率している感じはない。
とすれば、このワニたちを統率するものが他にいるのだろう。
おそらくそいつが、宝をワニたちに集めさせている。
どうやらややこしいことに巻き込まれたのかもしれない。
ハルクは無事にここまで辿りつけるのだろうか。
僕はハルクに再度【相互理解Lv1】で、進捗状況を聞くために連絡した。
(ハルク、今どこにいる?こっちに向かっているのか?)
「んあー」
突然の僕の声に驚いた様子のハルクだったが、すぐに僕に返答した。
「オデ、おめぇのとこさ向かっでるけんど、他のヤツもむがっでるみてぇだ。」
(他の奴?どんな奴だ?)
「悪魔族の奴らだ。ガーゴイルやインプ達もぞっちむがっでる。」
ガーゴイルやインプ?ゲームなどで登場する使い魔の一種だ。
そいつらがこっちに向かっている?
ワニ達と合流しようというのか?
(ハルク、だいたいどれくらいいるんだ?)
「15匹ぐれぇだ。みんな武器をもっでるから戦いに行くみてぇだ。」
なんだか胸騒ぎがする。
そいつらはワニたちの仲間ではないのか?
やつらの狙いは別にある!?…レアアイテムが目当てなのか!?
(ハルクは気付かれないように、やつらの後をゆっくりつけてくれ。ただ、やばいと思ったら逃げてくれ。僕は僕で何とかする)
「わがった。」
その時僕は気付いていなかった。
7階層の前哨戦というべき熾烈な大規模バトルが、この部屋で起ころうとしていることを…。
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