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第53話 6階層

久しぶりに睡眠をとった僕は、ゲームに連れてこられる前の生活のことを夢に見ていた。

規則正しく決められた毎日。

あまり親しくもないクラスメート。

ほとんど会うことが両親。

僕はいつも孤独と不自由さを感じていた。

僕にとって現実世界は、決められたことを淡々とこなすだけの世界だった。


今僕がいる世界は、退屈することはない。

常に生きるか死ぬかの選択を迫られていた。

ただ、その度に高揚感を感じる。

自由がある。

僕はこの世界では、誰にも縛られないのだ。

おそらく僕もこの世界になじんできているのだろう。


少しずつ強くなり、ダンジョンの階層も半分まで来た。

元の世界に戻りたくて、ミミックとして戦い続けた。

そのために多くの犠牲者も出してきた。

そこまでしても、僕は元の世界に戻りたいのだろうか?


目が覚めるとハルクはすでに起きていた。

結界の中で、僕をじっと見つめている。


僕はハルクの結界を解くと、ハルクは僕により近づいてきた。


「オデ、死んだと思ってた。」

そう、僕はハルクを食べたのだ。

リッチを騙す為とは言え戦友にそのことを告げず食べるように見せかけ、箱の中に収納をした。

操られていたとはいえ、ハルクは恐怖を感じただろう。

僕には返す言葉も無かった。


「オデ、助かった。おめぇの中でリッチを倒すところを見てた。これで安心。もう操られねぇ」

ハルクが食べられたことを、特に気にしていなかった様子に安心した。


(ハルクにかけられていた呪いは解け、お互いの目標を達成したけど今後どうする?)


僕はハルクに今後の行動について聞いてみた。

お互いの目標を達成した以上、現時点では一緒にいる必要はないのだ。


「オデ、倒してぇ奴がいる。今のオデはまだ奴には勝てねぇ。7階層で戦って強くなりてぇ。」


(僕も7階層に向かう。良かったら一緒に行かないか?)


僕は敢えてハルクの倒したい奴のことには触れずにいた。

僕はハルクの記憶を覗き、倒した奴のことは知っている。

僕も斬殺されそうになった、獣人の戦士だ。


僕がハルクの記憶を無断で覗き見たことは、あえて言う必要も無いだろう。

お互いに倒したい相手は一致している。

ハルクをあっさり倒せるほどの実力を持つ男。

僕らが単体で戦うより、協力して戦う方が勝てる可能性は高いだろう。


それに僕自身ハルクのことを気に入っている。

一人でダンジョンを攻略するより、ハルクと一緒に攻略したいのだ。

チュートリアルはおそらく、僕たちのやり取りを見て笑っているだろう。

僕のことを闇落ちしきれていないバグだと言ってのけるはず。

それでも僕はハルクとの旅を選ぶ。

現実世界でもゲームの世界でも、僕は仲間を求めていたことに気が付いたのだ。


「いいぞ、オデもおめぇと一緒に行く。」

ハルクの返答に僕の顔は少し熱くなった。

これでまた一緒に旅が出来る。

独りぼっちにならなくてすむのだ。


ハルクは僕の提案を快く受け入れ、2人でまずは7階層を目指すことになった。


・・・・・


リッチのアジトから6階層への階段は少し距離があった。

しかし、ハルクは6階層の階段の位置を覚えていたため、一度も迷うことなく目的地に到着できたのだ。

道中何度もモンスターたちに襲われたが、それほど苦戦することは無かった。

新しく手に入れた箱【メタルボックス】は防御力だけでなく、機動力も大幅に向上。

特にターボ機能の加速と箱の硬さを生かした体当たりは、例えハルクであっても大ダメージを受けてしまうだろう。


6階層への階段は、5階層の階段と同じく石造り。

階段に刻まれた沢山のひび割れに、ダンジョンの歴史の深さを感じてしまう。

僕はハルクに担がれながら、5階層を後にした。



・・・


6階層は1・2階層と同じく広めの洞窟のような造りだ。

5階層のような人工的な壁はなく、だだっ広い空間が広がっている。


1階層と違うのは、ただの洞窟では無く鍾乳洞というところだ。

天井からツララのような鍾乳石が何千・何万と連なっている。

ひんやりとした空気が漂い、ツララからは冷たい雫が地面に落下している。

床面は湿っており、水たまりも至るところに見られる。

床のところどころに筍状の石灰石が見られ、幻想的な雰囲気を醸し出していた。


6階層を探索する僕たち。相変わらず僕はハルクに担がれている。

今のところ冒険者の姿も、モンスターの姿もない。

まるでこの層には僕らしかいないように静まり返っている。


しばらくダンジョンを探索すると、何か違和感を感じ始めた。

まるで同じところを何度もグルグル回っている錯覚に陥るのだ。

ハルクも首をかしげている。


【マップ】を見ても、現在地の位置情報が上手く表示されない。

まるで巨大な磁界の中に迷い込んだような感覚だ。

マップは使えそうもない、

ハルクもキョロキョロと周りを見回している。

どういう訳かこのフロアは、マップ機能を阻害する。

一度この階層を攻略したハルクも、7階層の行き方についてはよく覚えていないようだ。


ズズズッ


どこかで何かが這うような音がする。

周りを見渡しても、動くものは何もない。

ハルクも何かに気付いた様子も無かった。

気のせいだろうか、僕は一旦不審な音には構わずに先へと向かった。


しばらく進むと、朽ち果てた死体が散らばっているエリアに遭遇した。

人間だけでなく、モンスターの死体も混ざっている。

ほとんどの死体は胴体から上が無く、白骨化した下半身だけが散乱している。

ハルク並みに大きなモンスターも、同じように胴体から上の部分がなく朽ち果てている。


よく見るとどの死体も一撃でやられているようだ。

死体の破損具合から、おそらく何者かが食い散らかした後だろう。

ハルクほどの巨体のモンスターを一口で噛みちぎれる相手が、この近くにいることになる。

僕の頭に緊張感が走る。


ズズズッ


今度は確実に聞こえた。

これは錯覚ではない。

僕たちの近くに、何者かがいるのだ。


ズズズッ


段々と音が近づいてくる。

間違いない、この音の主は巨大な体を持つモンスターだ。

大きい体を地面に摺らしながら、確実に僕たちに向かって近づいてきている。


10m?20mはあるかもしれない。

巨大な蛇のようなモンスターに違いない。


僕とハルクはお互いの顔を見合わせ、戦闘態勢を取った。


「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!


どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。


もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!


皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!

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