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第15話A 葛藤

僕の目の前に獣人2人が横たわっている。

先ほど逃げた獣人と同じような猫の耳のようなものがついている。

おそらく同種族だろう。


一人は160㎝くらいの細マッチョの男性。

まだ顔に幼さが残っている。

肩と腰に矢が刺さっており、今も血が止まらずに流れている。

傷口が紫色に膿んでおり、大きく晴れているようだ。

おそらく矢に毒が塗ってあったのだろう。

かろうじて息はしているようだが、意識も失っており、おそらく時間の問題だろう。


もう一人は150㎝くらいの若い女の子。

先ほど逃げた女の子とよく似た顔をしている。

彼女も軽装で、ところどころ切り傷のようなものが見える。

頭から血が流れ出しており、時々ビクッと痙攣している。

この女の子も意識を失っており、呼吸は浅く速い。

右手に何か紙のようなものを握りしめている。


このまま放っておけば、間違いなく絶命するだろう。

もしくはこの近隣のモンスターの餌になるに違いない。


それならいっそのこと…。


・・・!?


僕は一体何を考えているんだ!

僕は人間に戻るために、ダンジョンの最下層を目指しているんだ!

彼らは獣人族といえど、意思の疎通が出来る人間だ。

それを食べようなんて、僕は一体どうしてしまったんだ。


ん?


もう一度女の子が握りしめている紙を見ると、どうやら地図のようだ。

近づいてよく見ると、この階を記した地図らしい。

完成された地図ではなく、この獣人たちが書き記していたのだろう。

地図には大雑把な地形と、メモ書きのようなものが書かれている。

残念ながら何と書いているかは読むことができない。

この世界の文字なんだろう。

この地図を食べたらどうなるんだろう?


僕は舌で彼女の手を開き、地図を箱の中に収納しようとした。

その際に、彼女の傷口に僕の舌が触れる。


(うまぁぁい!)

僕の舌に広がる塩味と甘味。

まるで極上のステーキの上にかけられた、最高の赤ワインをベースにしたグレイビーソースのようだ。

この味の広がりと重厚さは、先ほど食べたゴブリンとは比べ物にならない。

一体本体を食べたらどれほどの幸福が待っているんだろう。

僕はかつて父と母と行った3つ星レストランの食事を思い出していた。


だめだ!だめだ!


僕は人間だ!人間を食べるなんてどうかしている!

そんなことを考えることすら恐ろしいことなんだ。


邪念を振り払うように僕は舌に地図を巻き取り、そのまま箱の中に地図を入れた。


「箱の中に地図を収納しました」

「限定スキル【マッピング】Lv1を確認しました」


思った通り、マッピングスキルを得ることが出来た。

早速鑑定Lv4でスキルを調べてみた。


【マッピングLv1】

収納している間使用できる限定スキルの一つ。


想像していた通り、このアイテムを持っているだけで自動マッピングしてくれるようだ。

地図はステータス画面で見ることが出来るし、ステータス画面を閉じても空間上に表示し続けることもできるようだ。


ダンジョン攻略にはなくてはならないスキルを、偶然にも手に入れることが出来た。

もうこの場に長居は不要だ。

変な気分になる前にこの場から離れよう。


ガサガサ…。

僕がその場を離れようとした瞬間、少し離れたところで物音が聞こえた。

僕は音のする方に耳を傾け、目を凝らして音の方向に注目した。


なんと、先ほど逃がしたゴブリンが大勢の仲間を連れて戻ってきたのだ。

おそらく標的は僕だろう。

200メートルほど離れた所から30匹程のゴブリンたちが、それぞれ武器を持って僕のいる方に向かっているのだ。


一匹一匹は弱くてもさすがにこの数は驚異以外の何物でもない。

まともに戦えば、やつらに蹂躙されてしまうだろう。

迎撃態勢を取らねば。


僕は【擬態Lv3】を使用すると同時に、【とらばさみ】を使用し、僕の周囲10メートル程のところにいくつも「とらばさみ」を設置した。


「とらばさみLv2がLv3となりました」


【弓Lv1】を使用し、出現した2種類の弓矢の矢じりに【毒レベル4】を付与。弓をオート操作モードに切り替えた。


ドドドドドッ…


ゴブリン共が向かってくる音が、段々と近づいてきた。

大声を上げながら、真っすぐに向かってくる。

おそらく人数で勝るヤツらは、そのままの勢いで押し込んでくるだろう。

負けることなんて考えてもいないだろう。

そこに唯一の勝機がある。


バチン!バチン!

とらばさみに引っかかり前のめりに倒れるゴブリンたち。

3体ほどは倒せたのだろうか、その場で足を押さえてうずくまっている。

その直後に、オートの弓矢が発射。

一匹のゴブリンの頭を貫いたが、もう一本の弓矢はかわされてしまった。


全く勢いが止まることのないゴブリン達。

ここからは肉弾戦だ。


僕に気づいた3匹のゴブリンたちが同時に襲いかかってきた。

一匹は斧、もう2匹はナイフを振りかぶった。


僕は、真ん中のゴブリンに向かって【体当たりLv4】を発動。

まともにヒットしたゴブリンは、勢いあまって後続の集団にぶち当たった。


「体当たりLv4がLv5になりました」


体当たりで一瞬動きが止まった僕に、2匹のゴブリンは切りかかった。

【方向転換Lv4】で斧の攻撃はかわしたものの、ナイフは僕の箱を傷つけた。


再度振りかぶったゴブリン2匹に毒針Lv4 を発射。

それぞれのゴブリンの額と首筋に毒針がヒットし、音を立てその場に倒れた。


その間に追いついた後続が、一斉に襲いかかってきた。

【体当たりLv4】と【方向転換Lv4】で攻撃をかわすも、全部かわせるわけではない。

ゴブリンの武器が、僕の箱を傷つけHPを奪っていく。

HP400→240


ゴブリンの単発の攻撃では大きなダメージを受けるわけではない。

しかし、僕の攻撃が単発であるのに対し、複数攻撃を返すゴブリン。

明らかに僕の方が分が悪いのだ。


しかも、僕の攻撃で完全に息絶えるのではなく、当たりどころが悪かったり避けられたりして倒せてないゴブリンも多い。


このままではやられてしまう。


パックン!


僕は倒れているゴブリンに【食べるLv8】と【早食いLv1】を発動。

戦いながらゴブリンを食べる作戦へと切り替えた。

今まで食べることに時間がかかっていたが、【食べるLv8】はほぼ一口で、ゴブリンを捕食できる。

おそらく【早食いLv1】の効果もあるのだろう。

ゴブリンを食べることにさほど時間がかからなくなっていた。


「【飛びかかるLv1】を獲得しました」

「【悪食Lv1】を獲得しました」

「【不意打ちLv1】を獲得しました」

「早食いLv1がLv2となりました」

「視覚Lv4がLv5となりました」

「聴覚Lv4がLv5となりました」

「味覚Lv2がLv3となりました」

「あなたのレベルが上がりました」

【HP/MP/SPが全回復しました】


【ステータス】

名前:光

種族:ミミック

クラス:見習い

称号:モンスターイーター

Lv:6→7

HP(体力):400→600

MP(魔力):600→800

SPスキルポイント:750→1000

筋力:100→180

耐久:200→350

知力:300→500

器用:100→200

俊敏:50→80

運:8000→12000


【スキル】

食べるLv8、早食いLv2、舌Lv3、溶解Lv4、方向転換Lv4、視覚Lv4、聴覚Lv4、味覚Lv3、毒針Lv4 、鑑定Lv4、毒耐性Lv6、溶解耐性Lv2、擬態Lv3 体当たりLv5、狙い打つLv1、逃げるLv1、這うLv3、飛びかかるLv1、悪食Lv1、不意打ちLv1



限定スキル

とらばさみLv3、弓Lv1、マッピングLv1


「運が10,000を超えたので、称号【ラッキーマン】を獲得しました」

いつの間にか運が10,000を超えてしまっている。

新しい称号も獲得したようだ。


「ラッキーマンの称号の獲得により、【悪運Lv1】を取得しました」

「ラッキーマンの称号の獲得により、【逃げるLv1 】が【逃げるLv5】となりました」

「ラッキーマンの称号の獲得により、【クリティカルヒットLv1】を獲得しました。

新しいスキルの獲得とスキルレベルが上がった。

いずれもこの状況に役立ちそうなスキルだ。


Lvが上がり不利な状況から少しずつ戦況が好転していく。

ゴブリンの数も今や半分くらいになっていた。

なんとか乗り切れるかもしれない。

僕が安心しかけたその時だった…!


「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!


どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。


もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!


皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!

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