第110話 関西弁ミミックのコメント
リュウが獣神の鍵を持っている!?
彼からの掲示板へのコメントは僕を強く動揺させた。
リュウはかつて一緒に旅をしていた仲間で、7階層で僕たちを裏切りパーティは崩壊した。
リュウから僕を守るためにプレイヤーのハルクや、大ワニのクロコは命を失い、リリアは瀕死の重傷を負ってしまった。
その許し難きリュウから、ミミック掲示板を通してメッセージが届いたのだ。
おそらく彼も、このメッセージの主が僕だと理解しているだろう。
彼もまた7階層から先に進めずにいた。
リュウは僕が獣神の宝玉を持っているのを知っている。
僕もリュウが魔神の宝玉を保持していることを知っているのだ。
いわばこれは掲示板に対するメッセージではない。
僕個人に向けたメッセージなのだ。
リュウが獣神の鍵を本当に持っているかどうかは分からない。
だが、僕も魔神の鍵を持っていないのだ。
魔神の鍵は元パーティメンバーのリリアが持っていた。
リュウは、その鍵の所在が僕に移っていると思っているのだろう。
これは高度な駆け引きになるかもしれない。
どう返信していいのかと、ナースの僕を見る目がそれを物語っていた。
僕はナースに個人チャットに切り替えるように伝えた。
プレイヤーはステータス画面より、特定の相手を検索・招待することで個人チャットをすることが出来る。
ミミック掲示板とは違い、1対1もしくはメンバーをチャットに招待することでその対象者とプライベート回線でやり取りすることができるのだ。
ミミック掲示板でのやり取りを他のプレイヤーに覗かれたくない場合に、特に有効な手段だ。
ナースはミミック掲示板の返信者情報の画面より、関西弁ミミックのチャットIDを取得。
そのまま彼をチャットに招待した。
・・・・・・・・・・・
チャットに招待してから1時間。
リュウからは何のアクションもない。
もしかするとリュウでは無かったのか、それとも探りを入れているのか?
リュウであるとすれば、何らかの策を労しているに違いない。
しかし今後リュウと交渉するために、相手が望む魔神の鍵を持っていないのはカード不足だ。
魔人の鍵の所在はリリアが握っているだろう。
そのリリアは現在、最西端の部屋にいるらしいという情報を掴んでいる。
まずは、魔神の鍵を取得するのが先決ではないだろうか?
僕は一旦幹部たちを招集し、掲示板にメッセージがあったことを伝え、その対応についての意見を求めた。
様々な意見が飛び交う。
(まずはそのリリアって人から、鍵を譲ってもらうのがいいんじゃね?)
最初に発言したのがタケルだ。
(いや、罠かもしれない。まずは様子を見てはどうだろう?)
ファラオボックスのアヌビスが反論する。
(最西端の情報がないからなぁ。ただ行っても追い返されるのが関の山だね。)
メタルボックスのアミナも反対派だ。
(光さんのお仲間だった人でしょ?だったら簡単じゃん!)
うさぴょんは相変わらずアグレッシブだ。
(リュウって、光さんのパーティをめちゃくちゃにしたミミックなんでしょ?
今すぐ交渉するよりも、こちらが力をつけるまで時間を置いてもいいんじゃ。)
重複亭箱太郎も、積極的に発言する。
(しのぶはどう考える?)
僕はずっと考え込んでいるしのぶにも質問をした。
(私は光さんに従う。)
彼女は、僕に判断を委ねてきた。
(ジークフリートはどうだ?)
ずっと黙っていたジークフリートにも意見を求めた。
(そうですね。私は出来るだけ早く魔神の鍵を取得すべきだと思います。
そもそも魔神の鍵を持っていなければ、交渉は難しいと思われます。
光さんの情報から、リュウはかなり狡猾で残忍な性格をしているようです。
そんな相手に持っていない魔人の鍵をちらつかせても、長くは持たないでしょう。
このチャンスを逃せば、獣神の鍵を手に入れることは困難となるでしょうね。)
だいたい僕と同意見のようだ。
交渉を長引かせながら、リュウが本当に獣神の鍵を持っているかを探り、その間に魔神の鍵を手に入れる方が交渉がしやすくなるだろう。
(それに…)
ジークフリートが続ける。
(魔神の鍵さえ手に入れれば、リュウを倒した時に魔神の宝玉まで手に入れられるかもしれませんので。)
確かにそうだ。交渉することばかりを考えていて、基本的なことを見逃していた。
獣神セット以外でも、8階層に行くことが出来るのだ。
ジークフリートの意見に全員が同意した。
僕は役割を再編。
最西端の部屋に向かうメンバーを選出したのだ。
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