第103話 一進一退
うさぴょんの先制攻撃で敵陣営に大ダメージを与えたが、5匹のミミックたちの活躍でその攻撃が収まりつつあった。
その隙を縫って反撃の号令を出したのが、ゴールド宝箱の箱助。
相手チームのリーダー格だ。
うさぴょんの攻撃で20匹のミミックは脱落しただろう。
残りのミミックで一斉に襲いかかってきた。
ある程度距離をつめたミミックたちは急に立ち止まり、全員なにやらスキルを使用する構えをとった。
あれは・・・重力操作だ。
約80匹のミミックが一斉に重力操作を使うつもりだ。
【結界Lv7】【鉄壁Lv7】僕は即座に防御魔法を唱えた。
タケルもうさぴょんも同様だ。全員防御を固めた。
ただ、あくまで付け焼き刃にしか過ぎない。
1人でも強力な【重力操作】を全員で使ってくるのだ。
【重力操作】×80
グシャ、グシャ、ベキベキベキ…
僕らの防御魔法など一瞬で潰された。
この程度の防御では、数の圧力の前に何の効力も発揮しないのだ。
宝箱がメキメキと潰れていくのが分かる。
このままでは一瞬で全滅してしまうだろう。
【暴食Lv3】を発動。
僕らを襲っていた重力操作の効力が消える。
僕は【重力操作】の影響を【暴食】で食べたのだ。
(この重力操作の多重攻撃は有効だな。
この戦い方は集団相手にも非常に有効な手段だ。)
僕は密かに今後に向けた戦いのデータを収集していた。
しかし、僕が【暴食】で重力操作を食べることは予測されていたようだ。
スキルを消しても驚くことはなく、ミミックたちは間髪入れずに襲いかかってきた。
僕らに向かって一斉に向かってくる飛び道具や呪文。
剣や矢、暗黒魔法や火炎魔法など、逃げ場のないくらいに僕らの頭上を埋め尽くした。
(この攻撃は重力操作と同時にすべきだったな。
相手に防御の隙を与えてしまう。)
【ハイプロテクション】【魔法吸収】
タケルとうさぴょんの防御魔法が発動し、僕らに向かってきた遠距離攻撃を全て受け切ったのだ。
この2人の能力は飛び抜けている。
2人が味方で本当に良かった。
向かってくるミミックが一匹、また一匹と姿を消す。
僕はミミックたちが集まる前に、この部屋一帯に罠を仕掛けていた。
罠に引っかかったミミックが次々と脱落していく。
(ミミックたるもの罠はかかるものではなく、仕掛けるもの。
この程度の罠に引っかかるようではまだまだだな。)
続いて僕は【ブラックホール】【意思疎通】【暴食】を組み合わせた。
ミミックたちの周囲に真っ黒い渦がいくつも現れる。
黒い渦に警戒して動きを止めたミミックたちだったが、回避不可能な吸引力がミミックたちに襲いかかった。
吸い込まれる力に必死に耐えるミミックたち。
しかし、その強力な吸引力に抗えるミミックは少ない。
ブラックホールに吸い込まれたミミックは、異次元空間を経て僕の口の中へ引き込まれた。
もちろん、今回のバトルではミミックは食べない。
僕の口に引き込まれた時点で、そのミミックの退場が決定した。
辺りは悲鳴に包まれる。
しかし、僕は一切手を緩めるつもりは無かった。
僕の攻撃に動きを止めて耐え続けているミミックに向かって、タケルやうさぴょんが追撃を始める。
彼らの岩石攻撃や、魔法攻撃がミミックたちに更なる試練を与えたのだ。
僕の全体攻撃は味方がいることで何倍も活かされる。
この闘いの中で、僕の戦術は成長しているのだ。
さらに攻撃の手を止めない僕は、【宝箱使役Lv5】で使役ミミック50体を戦場に投入した。
卑怯?あくまでこれもスキルの1つだ。
ルールに沿った攻撃なのだ。
戦場は地獄絵図となった。
一瞬でも気を抜けば吸い込まれてしまう僕の吸引攻撃に、うさぴょんの岩石の集中砲火。
威力はそれほどではないものの、相手の急所を突くタケルの絶妙な飛び道具や攻撃魔法。
さらに、使役ミミックたちが動きのとれない相手ミミックに襲いかかるのだ。
もはや殲滅は時間の問題のように見えるが、審判のジークフリートは一向に動く気配すら見せない。
(仕方ないですねぇ)
相手ミミックの誰かがボソリとつぶやいた。
その瞬間、無数にあったブラックホールが全てかき消されてしまったのだ。
何が起こったか分からない。誰がスキル効果を消したかも不明だ。
ただ、無数のブラックホールが全て消されたのだ。
一気に形成が逆転するだろう。
箱助の号令に、パカパカと箱を大きく開閉し応えるミミックたち!
その後ろでナースが回復魔法で、ミミックたちを回復させ、アミナが防御魔法を全員にかけていた。
うさぴょんの岩石攻撃をくぐり抜け、真っ先に向かってきたのがゴールド宝箱の箱助だ。
なんと相手チームのリーダーが先頭で突っ込んできた。
僕たちの攻撃で半数以上のミミックが脱落した。
現在残っているミミックは40体ほどだ。
もう少し削りたかったが、まずまずの戦果だろう。
ミミックたちは箱助を最前衛とした前方凸の三角の陣形「魚鱗」をいつの間にか形成している。
あのわずかの間に陣形を整えるとは、箱助の統率力も驚異的だ。
どうやら彼らは接近戦を狙っているようだ。
接近戦だと、圧倒的に数が多い方が有利。
近接することで、僕たちとの実力差を軽減することが目的だろう。
雪崩のように箱同士が連なりながら、ミミックたちは僕らに突っ込んできた。
僕は使役ミミックたちを呼び寄せ、僕らの前に体を張った箱のバリケードを組織させる。
50匹の使役ミミックたちのバリケード。
壊せるものなら壊してみろ!
しかし、バリケードに何の脅威も感じない箱助たち。
止まるどころかむしろスピードを上げて突っ込んできた。
グワッシャーン!
まるでストライクを取られたボウリングのピンのように、使役ミミックごと僕らは散り散りに吹き飛ばされた。
なんだこの化け物は!?
スキルを使ったわけではない、ただの体当たりでミミック50体をも弾き飛ばしたのだ。
この特攻力・攻撃力は驚異的だ。
僕は改めて箱助の強さを肌で感じていた。
散り散りになった僕たちは、それぞれ10数体ものミミックに囲まれてしまった。
「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!
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