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第100話 7階層攻略の鍵

ミミックの使役は驚くほど簡単だった。

僕がミミックの傍に寄るだけで、ミミックたちは反応し始める。

そこへ【使役】と唱えるだけで、ミミックは僕に従うようになるのだ。

使役するよりも先に、ミミックキングの恒常スキルである【チャーム】が働くので、ほぼ失敗することはない。


間接的に使役するには魔眼スキル【千里眼】を使用する。

【千里眼】でミミックを探し、見つけたミミックに【千里眼】でミミックを見ながら【使役】と唱える。

ただ、直接ミミックに相対していないので、【チャーム】を使用できず使役の精度はやや落ちる。しかし、離れた位置からでも使役が出来るので使い勝手は圧倒的にこちらの方が良い。


使役には大きく三パターンある。

従属:簡単な命令なら従う

敬服:ほとんどの命令に従う

心酔:どんな命令も拒否しない


使用者のスキル・能力レベルと、使役される側の能力差によって初期の使役のステータスが変化するのだ。

また、使役後の行動によってもステータスが変化するので注意しなくてはならない。


現時点で使役したミミックは20体。

ほとんどのミミックの使役ステータスは従属〜敬服だ。

敬服以上のステータスのミミックは、僕が指定した相手の指示にも従うことも出来る。

しかし、従属レベルのミミックは僕の命令以外には従わない。


命令の方法は【相互理解】を使用する。

【相互理解】で命令したいミミックを選択し、その内容を伝えるのだ。

個人に対しても集団に対しても直接命令を送ることが出来るので、非常に便利なスキルである。

僕は使役したミミック全てに一旦、最北西端に集まるように命令をした。

僕は約束の時間までミミックを使役し続け、使役されたミミックを増やし続けたのだ。



・・・・・・・・・・・


約束の時間になると、最北西端には100匹を超えるミミックが集まった。

きらびやかな装飾を施された宝箱もあれば、傷つき今にも朽ち果てそうなミミックもいる。

その後ろには僕が使役した50匹ものミミックが並んだ。

一つの部屋にここまで宝箱が並ぶのは壮観だ。

この光景を見ると、ここがダンジョンだということを忘れさせてくれる。


僕は北側に位置し、タケルは僕の隣にいる。

プレイヤーミミック・通常のミミック併せて150ほどいる中で、真紫の宝箱はタケルしかいない。

そもそもどこでその宝箱を手に入れたのだろうか。


キングミミックの恒常スキル【チャーム】は、すでに多くのミミックに浸透しているようだ。

これだけのミミックが集まっても騒ぐことなく、僕が話すのを静かに待っている。

密かに期待していた他のミミックを襲おうとしていた馬鹿なミミックは、あれ以来見られない。

少なくともここに集まったミミックは、現状を変えようと真剣に考えている者たちだろう。


僕は彼らに向かって静かに話しかけた。


(僕の呼びかけに大勢集まってくれてありがとう!

この計画を立ち上げた【暴食のミミック】こと光だ。

となりが、僕の仲間のタケルだ。)

(へへっ、よろしくな!)


僕が挨拶をすると一瞬ざわついたが、すぐに落ち着きを取り戻した。


(今回集まってもらったのは、7階層の攻略についてだ。

みんなも知っての通り、7階層までは比較的攻略しやすい難易度の低い階層だった。

しかしこの7階層の攻略条件が「レアアイテムの宝玉の取得」「扉の鍵の取得」と難易度が急に跳ね上がった。

更に8階層へ行く階段へ向かう扉は、全部で八か所。

しかもその全てが他種族によって確保されている。

階段を抜けるには、他種族の群れとの激突が必至となるんだ。


例えミミックが他の種族よりも優遇されてようと、何十・何百体の敵に一体で立ち向かうのは常識的に無理だ。

群れを持たないミミックが、次のステージに行けないのにはこういった理由がある。

そのため、ミミックは先に進めず7階層内に留まることしかできないのだ。


僕はその状況を変えたい。

そのためにはミミック同士が協力していくしかない!)


ミミックたちは僕の演説を静かに聞いている。

話を聞きながら頷いているミミックもいる。


(協力するのは良いですが、まず作戦の全貌と現在までの進捗状況を教えて欲しい)

話を切り出したのは、一番に現れたジークフリートだ。

彼の発言に全員が彼の方を振り返った後、その視線を僕に戻した。


(質問をありがとう、ジークフリート。

僕たちが考えた作戦について説明をしよう。


まず、この最北西端エリア・8階層への扉を死守する。

ここを奪われてしまうと、8階層に行くために敵の集団と戦う必要が生じる。

僕らが確保すると、ミミックたちは必要な時に、8階層へと行くことが出来るだろう。)


(死守することが大事なのは分かりました。ただ、その扉を抜けるには鍵と宝玉が必要ですよね?

そればどうするんですか?)


ジークフリートの質問はとても的を得ている。

確かに扉だけ死守していても仕方がないだろう。


(僕は北西端の扉の宝玉【獣神の宝玉】を所持している)


(おおぉぉぉ!)

ミミックたちから歓声が上がる。

これが僕のプレイヤーミミックたちを仲間に誘う切り札だ。

すでに8階層へは王手がかかっているのだ。


(ただ、僕は僕は獣神の扉の鍵を所持していない。

次に僕たちがすべきことは鍵を手に入れることなんだ。)


(私、その鍵のありかを知ってるかもしれない)

次に発言したのは、2番目に訪れたうさぴょんだ。

どうやら彼女は女性プレイヤーのようだ。


(西側の中立地帯で、兵士たちが話しているのを聞いたわ。傷ついた少女と老人がその時に、運ばれてきてたわね。」


まさかリリア?老人と言うと獣人の族長か?

生きていたのか!?


(瀕死の重傷そうだったから、急いで治療しないとって言ってたわ。そういや名前を言ってたわね。リリ…なんとかって。)


間違いなくリリアだ。彼女は生きていたのだ。

彼女は獣神の扉の鍵を持っている。

訳を話すと貸してくれるかもしれない。


(彼女は僕の元パーティメンバーだ。鍵も僕たちに渡してくれるかも知れない)


(おおおおおおおおぉぉぉぉ!)


一際大きな歓声が起こった。

まさか、この状況で仲間になるのを拒否するミミックはいないだろう。


(うん、君のプラン自体は問題ないと思います。8階層にも行けそうです。)

ジークフリートは僕の方を向き直り、そう答えた。


(ただ、このミミック同盟の盟主は君がするのですか?)

ジークフリートの発言に、ミミックたちは静まり返った。


(僕たちはおそらく同盟に加盟すると思います。プラン自体も文句はないです。

後は君が盟主たる力を見せてほしい。

いくら策だけ練れても、策を使うものが弱ければ話にならない。

僕らを納得させられるだけの強さを証明してくれ。)


確かにジークフリートの言うことは最もだ。

確かにみこしを担ぐものが弱ければどうしようもない。


(では、どうしたらいい?誰かと戦って見せればいいのか?

それとも君が戦うのか?)


(君が、いやタケル君も併せて君たちが戦う相手は僕ら全員です。

君はこの地の獣人たちを滅ぼしたそうですね?

それを僕らに戦って証明して欲しい。)


彼ら全員!?

そんなことをすれば、せっかく集まってくれたミミックたちを倒してしまうことになる。

死者も出るかも知れない。


(ただ、あくまで君の強さの証明なので、お互いの命のやり取りは禁止にしましょう。

誰も殺さず、僕らを全員制圧してほしい。

それが出来るなら僕らは心置きなく、君の為に働くでしょう。)


(おおおおぉぉ!)

ジークフリートの話を聞いて、再度ミミックたちが盛り上がる。


どうやら戦いは避けられそうもなさそうだ。


「朝起きるとミミックになっていた~捕食するためには戦略が必要なんです~」を読んでいただきありがとうございます!


どんな評価でも構いません。少しでも気になると思っていただければどんな評価でも結構ですので★にチェックをお願いします。


もちろん厳しいご意見も随時受け付けております!


皆さまの応援が力となりますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします!

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