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悪役令嬢、土下座してみた

お久しぶりです。久々に書こうと思ったらなぜかこんな作品が出来上がりました。某アニメの影響かな...

今回はコメディのつもりなんで気軽で読んでいただければよいかと。

「ドロシー!!今この場で貴様との婚約を破棄とする!!」


とある王立学院の年末パーティーで、一人の男子生徒がホールの中心で婚約破棄を宣言していた。

生徒の名はハーレー、王国の第二王子でもある。王族である彼は高き血を次世代に継がせる義務があり、昔から結婚相手が決まっていた。それは、先程名前が挙げられた、ドゥームヴァイル伯爵のご令嬢、ドロシーであった。そして、その結婚約束を今ハーレーが打ち破った。


「話は聞いておったぞ!貴様、我が友人、ヴィクトリア嬢に数々な嫌がらせをやらかしたではないか!?その理由も、自分よりヴィクトリア嬢の方がよく私と一緒にいるというとてつもなくしょもない!」

(しょもなくはないだろう。婚約者を差し置いて何“女友達”と堂々と遊んでんだ。ハーレンチ王子。てか自分で友人つって凹めねーのかよ、ヘタレー王子。せめて我が愛しい人とか言えばもっと面白くなったのに)


心の中で、会場の皆様の思いが一つになった。当然の如く、ハーレーとヴィクトリアの関係性の噂は学院中に知られていた。が、立場上、誰もが彼に注意することができなかった。今回もそうである。

ちなみに、そのハーレー王子が肩入れしているヴィクトリアというと、


「ハーレー君、そこまであたしのために……あたし、やっぱりいい友達に恵まれたのね」

(今日も天然小悪魔っぷりが絶好調だね〜ヴィッチ嬢)


そう言いながら、他の"男友達"に囲まれながら感服になっていた。その光景に、会場の皆様はもはやツッコむまい。ヴィクトリア嬢は、友達と言いながら、数人の男子生徒を侍らせていた。ただの男好きの女子なら普通にいやなやつと見られるが、ヴィクトリアのあれはまごうことなき無自覚である。その魅力は魔女(ウィッチ)のようにミステリアスで、雌犬(ビッチ)のようにわかりやすい。

故に、彼女の周りの男子はハーレー王子という高血族から下町出身の特等生までがいる。故に、皆様は彼女を憎悪なしで見ることができ、挙句の果てに「おおすげえ~。無差別社会がホントにできたぞ。全員アホだけど」とただただ呆れていた。


(さて、被害者とその番犬たちはようやく吠えたが、加害者はどう動く?)


そして、会場の皆様の集中はドロシーに向かった。が、


「お、お待ちくださいませ。殿下。娘は本当にあのお嬢さんに嫌がらせなどとしていたのでしょうか?」

「ドゥームヴァイル伯爵か。残念ながらまことであるぞ。目撃者もいるし、証拠もある」

「ほ、本当であるとしても、学生の間に起きたことゆえ、王家(ご家族)が決めたこの婚約を破棄しなくても…」


とドロシーの父であるドゥームヴァイル伯爵は娘、そして一族のためにハーレー王子の訴えに待ったを挙げた。王子もが通う王立学院、その年末パーティーにいくつかの高位貴族が参加してもおかしくはない。そして、今第二王子がいる学年で、国王陛下(その父親)が参加しているのもまた自然である。


(そういえば今日はいたな。こいつら外の人間が)


学院の外から来た彼らはこの事態を見てずっと狼狽えていた。いや、正確にはパーティーが始まってからハーレー王子がドロシーをエスコートしていなかったと知って、さらに複数の男子とともに一人の女子をエスコートするという前代未聞なことまでしていたから、ずっと頭から血が下がるようであった。ただ、彼らがそう感じていても、会場の皆様、すなわち学院の者たちは何事も起きていないように、それこそその問題になる事態が日常の一部のように、普通にパーティーを楽しんでいた。自分たちの頭がおかしくなったのか?そう思うほどに今まで何もできなかった。

娘が危機に遭っているのを見て、ドゥームヴァイル伯爵はやっとの思いで動くことができた。が、彼の意義を王子は残念な顔を浮かべ、そしてまた伯爵にとって悪い情報を言い放った。


「嫌がらせだけであれば、私も、不服ではあるが、ここまでは言わぬ。が、彼奴は、嫌がらせを超えた非道な行いを犯した。彼奴、ドロシーはヴィクトリア嬢を階段から落としたのだ!!」

「な、何ィィ…!?」

(これはまた古臭い反応表現だな、伯爵。にしても、なるほど。それでヴィッチ嬢は今日珍しく帽子を被ってるのか。大方、落ちたときに額が何かにぶつかって凸がでてるんだろうな……その帽子をさり気なく外せる方法はねえのかな)


結構悲劇な出来事だったとしても、会場の皆様の心は変わらぬご様子である。その反対に、伯爵はこの世の終わりの知らせを聞かされたかのように、舌が長く出てるんじゃないかと思わせるほど口が大きく開いていた。


「一歩間違えたら、ヴィクトリア嬢は命を落としたかもしれぬ!これは立派な殺人未満の犯罪行為であるぞ!伯爵!!」

「そ、そそそそ、証拠は!?目撃者は!?」

「目撃者は、いる。いや、彼もまた被害者である。ヴィクトリア嬢が階段から落とされたときに、幸か不幸か、彼は下の階段から上がっていたところでヴィクトリア嬢とぶつかっていた。お陰でヴィクトリア嬢の命が救われたのだがな。二人とも、額に酷い怪我を負っていた。彼の名はフランス教授。今も怪我の苦痛に襲われてパーティーにも参加できていなかったため不在。私は前に何度か教授から話しを伺った。伯爵も、後で教授のところに行ってもかまわぬ」

(いや、あのフリョー教授はたぶん単にサボっているだけだぞ。ヴィッチ嬢が今も健在で参加しているのにあのマッドマッチョが怪我で寝込んでいるわけねーじゃん)


フランス教授は学院の一般魔道の教師である。一般魔道とは人々の生活に役立つな魔道のことであり、フランス教授はそれを学生たちに教え、そしてまた新しい魔道を開発し研究する。フランス教授は失敗を恐れていない。頭に浮かんだ発想は時間も場所も関係なく誰彼かまわず巻き込んで実験を行う。即実行な人間である。そんな研究者のイメージを持つフランス教授だが、実は結構身体つきができていて大きい。まさに、マッドマッチョである。だから会場の皆様は王子の話をまったく信じていなかった。

だが、そんなことまったく知らなかった伯爵は信じるしかできなかった。


「で、では、少なくとも当事者の方から。お嬢さん。ヴィクトリア嬢といったかね。今の話は本当かい?」

「えと、あの、その、すみません。実はあたしそれに関してはまったく記憶がありません」

「記憶がない?どういうことだ?そんなはずが…」

「止せ、伯爵。本当だ。彼女に記憶はない。いわゆる記憶喪失。軽いものがな。あの事件のときの記憶だけ彼女の頭からさっぱり消えていた。きっと恐ろしい思いをしただろ。無理に思い出させないでほしい」

「ですが、でしたら、」

「言ったはずだ。私はもう一人の当事者、フランス教授から話を伺ったと。彼に聞けばいい。それより今は…」


そのやり取りを聞いて、一人の会場の皆様は、あ、と


「これ、ハーレンチ王子は本当のこと言ってるかもしれんな」

「どういうことだ?」

「俺、前にフリョー教授を超怒らせたことがあるんだけどさ、頭突き、されたんだよね~」

「何やらかしたの?あんた」

「ちょっとあいつが開発した魔道具のいい使い道に閃いたんでぬす―じゃなかった。借りたいと思ってな。まあ、それはどうでもいいけどさ」

「よくねーだろ。おい。今盗むって言おうとしたよな?」

「いいから。ったく。話が進めねーだろが」

「ホントね。あんた、少しは静かにしなさい」

「え、俺が悪いのこれ?」

「でさ。あいつの頭がよ、マジかてえんだよ。オリハルコンみてえ」

「硬いって言いたいのはわかるんだけどさ、オリハルコンはさすがに言いすぎじゃね。神の頭脳を持つといわれてもな、その硬さが神が創った金属と同等って笑えねーよ」

「ぶふぉー」

「おい、いきなりうまいモン言ってんじゃねーよ。せっかくのうまいワインが台無しだろが」

「うまかった今の?」

「つまり、教授の頭はあのびっ、ではなくてヴィッチ嬢の記憶が飛ぶまで硬いってわけね」

「マジか~。つまり、ドロシー嬢はホントに...?」

「その前に、俺はお前たちに言いたいことがある。学院内で外の貴族社会のしがらみから開放されて城下町と交流を得てとはいえ、おめえら言葉が乱れてすぎじゃね?ここが高貴な子息子女が集う王立学院てゆ設定は忘れないようにしような」


と、会場の皆様の視線は再びドロシーに集中させた。彼女がというと、実はずっと黙っていた。ハーレー王子がヴィクトリア嬢側にいるとパーティーの初めからみせらられたときも、王子に婚約破棄宣言されたときも、父に庇ってもらっていたときも。ドロシーはただ静かにことを見守っていた。そして、周りの視線が自分に集まった今、ドロシーはようやく口を開いた。


「あら、もうよろしくて?」

「ドロシー、お前!自分の立場がわかっているのか!?」

「ええ、お父様。それはもう、当事者なのですから」

「当事者だと…」

「実は、少々記憶の思い出に浸ってしまいまして」


そう、ドロシーは思い出していた。自分が何者か、今を生き抜くために何をなすべきなのかを。今までずっと、そして今もまだ思い出している。思い出しながら、彼女は動いた。


「今の状況、わたくしの発言が許されていると解釈してもよろしいでしょうか?殿下」

「ああ。私も鬼ではない。貴様の言い分も聞いてやろう」

「ご配慮、恐れ入ります。では」


ドロシーは一歩下がって、淑女の礼をしていきなりその場でぐるぐると身体を回した。何事?と全員が思った。そのとき、一周回った後、ドロシーは綺麗な流れで身体を低くして、跪いて、頭を床につけた。そして、叫んだ。


「もううううううっしわけありませんでしたあああああああああ!!!!」

「......へ?いや、ドロシー嬢。お前はいったい何をやってんの?」


そう言われて、ドロシーはまたも思い出した。あの事件から今までの一週間のことを。



一週間前

「あなた、本当に目障りね。もう消えてちょうだい」

「え…?」


ことの発端は、あの階段から落とした事件。我慢の限界のドロシーは一瞬の感情の勢いに身を任せてしまった。我にかえったときにはもう遅かった。自分の行いに呆然したドロシー。下の階段から身体が大きい男がタイミングよく、いやこの場合はタイミング悪く、落ちてきたヴィクトリア嬢と当たってしまった。二人の額は大きい音を立てるほどにぶつかった。その瞬間、ヴィクトリア嬢は気を失ってしまったが、大男は少し身体が揺れても、すぐにバランスを取り戻し、さらにヴィクトリア嬢をキャッチした。


「ふ、フランス教授…あの、大丈夫ですか?」


恐る恐る聞いてくるドロシーに、フランスは無視してヴィクトリア嬢の身体を丁寧に壁際に置いた。そして、


「お前か」

「ひぃぃっ…!」


鬼のような表情でドロシーに顔を向けた。そしてゆっくりと階段を上がり、無言で動けなかったドロシーの身体を担いでどこかに持っていった。気絶したヴィクトリア嬢は放置。


「え!?あの、ちょっと!?何をやっているのですか!?あなた!?わたくしがどこの令嬢なのかご存知なくて!?」

「知らん。興味ない。悪い子はお仕置きする。ただそれだけだ」

「お、お仕置き!?やだ!一体何を考えて、!?だ、誰か!!助けてくださいましいいいい!!!」


そしてドロシーは人生初めて、鬼教師から説教をくらった。お尻がぺんぺんされながら。


「うぅぅっ…ひっく、ひっく…もうお嫁になれませんんわ…」

「ったく。やかましいガキだな。泣くぐらいすんならはなっからやるんじゃねーよ」


場所は一般魔道教室。授業以外にフランスはこの場所を研究室としても使っている。放課後、誰もいないこの教室でフランスはドロシーを連れてきた。そして、今までどんな愚かな行いやっていたのかを丁寧に、わかりやすく、太い声で、はっきりと説教した。彼女のお尻をぺんぺんしながら。一時間もかけて。


「クソ。なんでオレがこんなことやんなきゃなんねんだー?そもそもあいつらが野次馬気取ってねーであの連中の誰か一人に常識をぶん叩き込んだら済む話をよぉ…」

「わたくし…一体どうすれば…うぅぅ…」

「あー。めんどくせーなー。くそったれがー。おい」

「ひっ、は、はい!」

「どうすればとかそんなことよりをよー、お前はどうしてーんだ?」

「……過去に戻って何もかもやり直したい、です」

「あぁ“、アホかてめえ。そんな都合のいいこと起こるわけねーだろが。人生なめんなコラ。てめえのケツはてめえで拭け。てめえがやっていたことはてめえでけじめをつけ。で、もう一度聞くが、お前はどうしてーんだよ?」

「…謝罪したい、です」

「誰に?」

「ヴィクトリア嬢に、ハーレー殿下に、学院の皆様に、そしてお父様に」

「で、謝罪した後はどうする?」

「後は…許しをもらえれば、と思いますが、何かをやりたいです。償うために。でも、どうすればいいかわからないんです。わたくし、本当に、たくさんのことを、わかっていませんから」

「それだけわかれば十分だ。ならばお前に教えてやろう。それらを叶える術を」

「そんなこと、あるんですか?」

「ああ。通じるかどうかはお前次第だがな」

「その術は一体…?」

「土下座、だ」


そしてドロシーはフランスの下に一週間、土下座を完璧にこなせるように訓練を行った。



現在

ドロシーは思い出した。フランスから教えてもらった土下座の心得を。


心得その一、誰もが目をつけるほど美しいフォームで行うこと。

「オラオラ!どした!!そんな乱れたフォームでてめえの誠意が伝われると思ってのか!?淑女作法の授業で何習ってんだてめえ!?」

「少なくともこんな額を床にぶつかることは習っていません!!」

「言い返す暇があんならさっさと位置につけ!!最初からだ!!」

「はひいい!!!」


ドロシーは完璧な動きで、完璧な流れで、完璧な土下座のフォームをこなした。会場にいる人が目を疑いながらも離せないぐらいに。


「ええっと、謝罪しているってことは…ドロシー嬢は本当にヴィクトリア嬢に嫌がらせをして、階段からも落としたことを認めるってことですよね?」


呆然としたハーレー王子たちの変わりに、会場の皆様の一人が話を進めるためにドロシーに聞いてきた。

ドロシーはまたしても思い出した。


心得その二、全ての言葉を肯定すること。

「いいか!?跪いて頭が床についてるときにゃお前は令嬢でも淑女でもねー!ただのクソだ!!クソに相手の言葉を否定する権利はねえ!!ただのクソだからな!!言い返す口ももってねーわ!!」

「すみません!口がないと謝罪などできますか!?」

「そりゃお前はクソでも人間だからだろが!!!クソな人間らしく、言い訳をぺらぺらと、相手の機嫌をとってみやがれ!!!」

「はひいい!!」


ドロシーは認めた。自分の罪を。自分がどれだけ落ちてきた人間だということを。そして相手が小悪魔でも、魔女でも、雌犬でも、それは決して自分よりは立場が上の人間だ。


「はい!!!このわたくしが!わたくしめが!!純粋たる無垢なヴィクトリア嬢に数々の嫌がらせを!階段から落としたことを!酷いことをたくさんやってきました!!!国王陛下が決めたことだけだというのに!自分が愛される婚約者面してまして!みっともない嫉妬に身を任せてしまして!ヴィクトリア嬢だけではなく!ハーレー殿下にも!そのご友人方々も!学院の皆様にも!ご迷惑をおかけして!ほんんんとうに!すみませんでしたああああ!!!」

「あ、うん。君が後悔しているのは十分伝わってきたよ。いろいろをね。ね、ヴィ―ックトリア嬢」

「え、あ、は、はい。落とされたとは覚えていないんですけど、ドロシーさんは心を変えて誤っていることにあたしはうれしいよ。ね、ハーレー君?」

「あ、ああ。そうだな。ヴィクトリアがそういうのなら。だが!!貴様がそう認めた以上、私との婚約はやはり破棄してもらう!!貴様みたいな悪女に王家には相応しくない!!」


ドロシーは思い出した

心得その三、怒鳴れたときには相手以上の大声で返事すること。

「声がちっちぇーんだよてめえ!!本気で謝りてーのか!?ああ!!??」

「……あなたの声が部屋に響いて声出せないんですよ。ハゲ」

「だから聞こえねーつってんだろ!!もっと腹から声出せ!!!!」

「は、はひいいいい!!!!」


ドロシーは声を出した。女子からだと思えないほどに、会場全体に響く声で彼女は返事した。


「はい!!仰る通りです!!!わたくしめなどの意地悪女は、高貴たるハーレー王子には相応しくありません!!!今まで身ほど知らずなことをしてしまいましてすいません!!!!お父様!!!国王陛下!!!お二方が決めたことに反することに申し訳ありません!!!ですがどうか、わたくしたちの!!!いいえ、ハーレー殿下の決断をお聞きしていただく!!!!この件の全ての責任はわたくしめ自身にありますゆえ!!」

「え、あ、う、ち、父上!!聞いていた通りです!!」

(お前、この婚約は国家が決めたことにマジで忘れてんだろ。ヘタレー王子)


今まで話すタイミングを見失い、ことの流れを見るしかできなかった国王はようやく出番かといわんばかりに顔と声をしっかりきめていた。


「うむ。お互いがそうきめたであれば我も言うことはあるまい。どうだかね、?ドゥームヴァイル伯爵。ここは子供たちの自立の気持ちに免じてということで。もちろん、貴公の一族には損をさせません」

「ええっと、陛下がそうきめたのであれば。しかし、どうしたものか。これで王子殿下やそのお友達へのけじめがつけたとしても、親としては…」

「それに関しては!!!」

「うわ!!びっくりした!君本当にあのドロシー!!?パパが知っているドロシーは兵士みたいな声出さなかったよ!!」


ドロシーは思い出した。

心得その四、最後に自分がやりたいことを告げる。

「前にも言ったが、クソでもお前はクソな人間だ。そして、前にお前も言った。償いたいと。その願いをあいつらに聞かせてやるんだ」

「そのためにどうすればいいか、まだわかりませんですけど…それに、聞いてくれるのかしら?」

「少しは考えろボケ。それに安心しろ。知り合いから聞いた話だと、この土下座で女の下着を見せてくれって頼めば見せてくれるらしい」

「最低ですね」

「勘違いすんな。オレは女の下着を見るために土下座を使ったことねえ。ちゃんと口説いてたらあっちが自分で見せてくれるしな」

「どっちも最低ですね」

「まあ、お前がしくじってもオレが何とかする。思うがままにやりゃいいんだよ。若者」

「...!はい!!!」


ドロシーは乞う。自分の願いを。


「わたくしめは…知らなさすぎです。何もかも。自分の立場や、自分の行動の影響。自分がやらかしたことでここまで大事になるとは思っていませんでした。ですが、知らなかったからと言って、何もしないのもいけないと思います。ですから、時間がほしいです。償う方法を考るための時間を。この学院であれば、きっと見つけると思います。どうか!!!」

「年末パーティーの後は卒業するのみ。それを、君は引き伸ばしたいと言うのかね?」

「はは!!!」

「己の未熟さに気づき、もっと学ぶために次の年に学院に留まりたい、か。よかろう。その熱心、認めてあげよう。ドロシー・ドゥームヴァイル!今年の悪行の基づいて、君がまだ学院を卒業するのに学が足りないと判断し、来年も同じ学院にて`再び授業を受けるように命じる!!名づけて、留年処分とする!!!」

「ドロシー・ドゥームヴァイル!留年処分、確かに承りました!!!」


こうしてドロシーの婚約破棄の事件が幕を下ろされた。その結末を見ていた会場の皆様はやはり思いが一つであった。


(そ、その手があったかあああああああ!!!!!!!)


このときは国王たちはまだ知らない。留年処分ができたことによって、不良の数が増えることに。その不良たちの思いはやはりただ一つ。貴族社会にかかわらずいつまでも学生になりたいと。



余談だが、ドロシーはことの結末をフランスに報告しに行った。それを聞いたフランスは、


「お前、やっぱアホだな」

「何で!?」

「まあいいや。オレ、この後のことは何も知らねーからな」

「この後…そういえば、教授はわたくしがしくったときどうするおつもりですか?」

「はあ?そりゃあお前、あれだろ。しくじったらお前牢屋行きだろ。だったら強行突破しかねーじゃん」

「…教授は研究者のくせに、なんと言いますか、脳筋ですね」

「へ、ガキは知らねーかもしれねーが、研究者に大事なのは行動力なんだよ。頭だけで考えて何も実験や実行をしなけりゃしょせんただの空想論だ」


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